きみと生きられる幸せ

「ただいま」

 その言葉を聞くときを、いつも待っていた。

 終わりのない、この日々の中で。

 それだけをずっと、待ち続けていた。



 いつもきみが向けてくれる笑顔は、わたしにとって宝物だった。

 いつもきみが言ってくれる言葉は、わたしにとってお守りだった。

 震えることしかできない夜でも、きみは強く在り続けてくれた。

 だいじょうぶだよと笑って、怖がってるそぶりひとつすら見せなかった。

 きみと一緒に居られるならわたしは、何もなくても幸せだった。



 学校からの帰り道。一緒に帰って、くだらない話で笑いあう。

 たまに些細なことでけんかして、でもすぐに泣いて仲直りする。

 いつも笑うのはわたしのほうで、いつも泣くのはわたしのほう。

 でもきみはすごく幸せそうで、だからわたしも安心していた。



 きみがいつかいってしまうことは知っていた。

 きみは強いからそうなれることを知っていた。

 きみがそれをずっと望んでいたことを知っていた。

 だから、わたしは止めなかった。

 きみなら帰ってきてくれる。そう、信じていたから。

「いってらっしゃい」

 恥ずかしそうなきみの笑顔は、わたしにとってかけがえのないものだった。