それからは斡旋ギルドからちょくちょく荷物の配送依頼が舞い込んできていた。
どんなに大きくて重い荷物も簡単に運んでくれると斡旋ギルドで口コミが広がっていったからだった。
「はい、今回の報酬はこれだけですよ」
すっかり俺の専属扱いになったリリスから依頼報酬を受け取ると毎日の日課となったあの言葉を伝える。
「それで本職の治癒依頼は入ってないですか?」
リリスはその言葉に笑顔で毎日同じセリフを言っていた。
「あはは。今日《《も》》残念ながらありませんね」
こちらの方は相変わらずのようだ。
「なんで依頼が来ないんですかね?」
「治療方法が悪いからじゃないですか?」
リリスは悪びれずに思ったままを口にする。つまり、そういう事だった。
大きな怪我や病気でない限り、薬で対応出来る事の多いこの町では治癒魔法士としての仕事は壊滅的に無く、副業であるはずの荷物運搬依頼ばかりをこなす日々。
確かにお金は多少なりとも貯まってきたし、前に高くて手が出ないと思っていた領都への馬車代金も払えるくらいには余裕ができていた。
でも、このままここで荷物運搬の仕事をしていても、人を助ける為にもらった能力を使わないまま時間が過ぎるだけなのは何だか違う気がする。
「やっぱり領都に行ってみるしかないのか……」
荷物運搬の依頼を着実にこなしている中で、この町の人達ともそれなりに知り合いが出来て居心地も良くなってきていた。
最近ではあれだけ広まっていた悪評もすっかり鳴りを潜めてギルド内でも皆が気軽に話しかけてくれるようになっていた。
「まったく、羨ましいねぇ。その能力だけで一財産くらい簡単に稼げそうじゃないか。今度頼みたい依頼があるから安く受けてくれよ」
「そうしたいですけど、ギルドにもお世話になってるのでギルドに依頼を出して貰えると助かります」
そんな他愛もない会話をしていると受付からリリスが僕を呼んだ。
「ナオキさん! 緊急の指名依頼が届いたのですが、今からお時間は取れますか?」
緊急の指名依頼? そんなものはギルドに所属してから初めての事じゃないか?
「ええ、大丈夫ですよ」
俺が答えると、リリスは俺に応接室へ向かうように伝えると誰かを呼びに奥へ走って行った。
俺は言われた通りに第一応接室の前で待っていると、リリスが奥の通路からギルマスと共にやって来た。
「お待たせしました。では中へどうぞ」
リリスはドアを開けて先に俺を部屋に入れるように促す。その後をついてリリスとギルマスのラーズが入り、向かいのソファに腰を下ろすとラーズが数枚の依頼書をテーブルに置いた。
「領主のアーロンド伯爵からの依頼書だ。簡単に説明すると少し前に伯爵夫人が倒れられた。伯爵家の息のかかった薬師や治療医師が診察をしたが、どうにもならないと匙を投げたそうだ」
「なにかの病気ですか?」
「いや、詳細は書かれていないが、まずは領都の領主邸に来るようにとの事だ」
「いつ出発すればいいですか?」
「明日の朝に馬車を準備すると書いてある。領主様からの依頼だから断ることは難しいだろう。すまないが行ってくれるか?」
まあ、ちょうど領都には行ってみたいと思っていた所だから馬車代金がかからずに行けると思えばある意味ラッキーだとも言えるだろう。
「わかりました。明日の朝ですね」
俺がそう言って席を立とうとすると突然リリスがとんでもないことを言い出した。
「――私も一緒に行っても良いですか?」
リリスはギルマスにその意図を説明する。
「彼の能力を一番理解しているのは私ですし、何も知らない無垢な彼が領都で騙されないか心配なんです。それに、どうせなら領都のギルドで研修を受けるタイミングを少しだけずらせば無駄が省けますよ」
「そういえば今回はリリス君が研修を受ける番だったな」
「ですです。この案、どうですか?」
「まあ、リリスの言うことも一理あるとは思うが、君がいない間のギルド運営に支障は出ないだろうね?」
「うっ それは……少しだけ心配かもしれないけど私がいなくても回せるギルド運営の練習だと思って……駄目ですか?」
「領都まで行って彼が依頼をこなして完了処理をして帰ってくる……大体二十日ほどかかるな」
「あはは、やっぱり駄目ですよね? ナオキさんが領主様に失礼を働かないかが凄く心配ですけど、やっぱり二十日間も仕事を空けるのはまずいですもんね。すみません。諦めます」
リリスは残念そうな表情を隠そうともせずにお辞儀をして先に部屋を出て行こうとするがそれをラーズが静止する。
「まあ待て、リリス。俺は駄目だとは言ってないぞ」
「えっ!?」
リリスがドアの前で振り返る。
「やれやれ、ナオキはうちのギルド所属のメンバーだし、特に今回は領主様からの直接依頼だ。もちろん領主様に粗相があってはならないが、彼は迷い人でもある。この世界の常識に疎い可能性は否定出来ないからな」
ギルマスのラーズは依頼書の他にもう一枚の書類にサインをするとリリスに手渡した。
「往復二十日の旅になるが行ってくるといい。もちろんちゃんと研修も受けてくることを忘れるなよ」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
リリスはラーズの言葉に跳び上がって喜んだが、当の本人は説明担当を付けないと領主様に失礼な事をする人物だと認識されていたことに軽いショックを受けていたのだった。
俺ってそんなに常識がないように見えるのかな?
どんなに大きくて重い荷物も簡単に運んでくれると斡旋ギルドで口コミが広がっていったからだった。
「はい、今回の報酬はこれだけですよ」
すっかり俺の専属扱いになったリリスから依頼報酬を受け取ると毎日の日課となったあの言葉を伝える。
「それで本職の治癒依頼は入ってないですか?」
リリスはその言葉に笑顔で毎日同じセリフを言っていた。
「あはは。今日《《も》》残念ながらありませんね」
こちらの方は相変わらずのようだ。
「なんで依頼が来ないんですかね?」
「治療方法が悪いからじゃないですか?」
リリスは悪びれずに思ったままを口にする。つまり、そういう事だった。
大きな怪我や病気でない限り、薬で対応出来る事の多いこの町では治癒魔法士としての仕事は壊滅的に無く、副業であるはずの荷物運搬依頼ばかりをこなす日々。
確かにお金は多少なりとも貯まってきたし、前に高くて手が出ないと思っていた領都への馬車代金も払えるくらいには余裕ができていた。
でも、このままここで荷物運搬の仕事をしていても、人を助ける為にもらった能力を使わないまま時間が過ぎるだけなのは何だか違う気がする。
「やっぱり領都に行ってみるしかないのか……」
荷物運搬の依頼を着実にこなしている中で、この町の人達ともそれなりに知り合いが出来て居心地も良くなってきていた。
最近ではあれだけ広まっていた悪評もすっかり鳴りを潜めてギルド内でも皆が気軽に話しかけてくれるようになっていた。
「まったく、羨ましいねぇ。その能力だけで一財産くらい簡単に稼げそうじゃないか。今度頼みたい依頼があるから安く受けてくれよ」
「そうしたいですけど、ギルドにもお世話になってるのでギルドに依頼を出して貰えると助かります」
そんな他愛もない会話をしていると受付からリリスが僕を呼んだ。
「ナオキさん! 緊急の指名依頼が届いたのですが、今からお時間は取れますか?」
緊急の指名依頼? そんなものはギルドに所属してから初めての事じゃないか?
「ええ、大丈夫ですよ」
俺が答えると、リリスは俺に応接室へ向かうように伝えると誰かを呼びに奥へ走って行った。
俺は言われた通りに第一応接室の前で待っていると、リリスが奥の通路からギルマスと共にやって来た。
「お待たせしました。では中へどうぞ」
リリスはドアを開けて先に俺を部屋に入れるように促す。その後をついてリリスとギルマスのラーズが入り、向かいのソファに腰を下ろすとラーズが数枚の依頼書をテーブルに置いた。
「領主のアーロンド伯爵からの依頼書だ。簡単に説明すると少し前に伯爵夫人が倒れられた。伯爵家の息のかかった薬師や治療医師が診察をしたが、どうにもならないと匙を投げたそうだ」
「なにかの病気ですか?」
「いや、詳細は書かれていないが、まずは領都の領主邸に来るようにとの事だ」
「いつ出発すればいいですか?」
「明日の朝に馬車を準備すると書いてある。領主様からの依頼だから断ることは難しいだろう。すまないが行ってくれるか?」
まあ、ちょうど領都には行ってみたいと思っていた所だから馬車代金がかからずに行けると思えばある意味ラッキーだとも言えるだろう。
「わかりました。明日の朝ですね」
俺がそう言って席を立とうとすると突然リリスがとんでもないことを言い出した。
「――私も一緒に行っても良いですか?」
リリスはギルマスにその意図を説明する。
「彼の能力を一番理解しているのは私ですし、何も知らない無垢な彼が領都で騙されないか心配なんです。それに、どうせなら領都のギルドで研修を受けるタイミングを少しだけずらせば無駄が省けますよ」
「そういえば今回はリリス君が研修を受ける番だったな」
「ですです。この案、どうですか?」
「まあ、リリスの言うことも一理あるとは思うが、君がいない間のギルド運営に支障は出ないだろうね?」
「うっ それは……少しだけ心配かもしれないけど私がいなくても回せるギルド運営の練習だと思って……駄目ですか?」
「領都まで行って彼が依頼をこなして完了処理をして帰ってくる……大体二十日ほどかかるな」
「あはは、やっぱり駄目ですよね? ナオキさんが領主様に失礼を働かないかが凄く心配ですけど、やっぱり二十日間も仕事を空けるのはまずいですもんね。すみません。諦めます」
リリスは残念そうな表情を隠そうともせずにお辞儀をして先に部屋を出て行こうとするがそれをラーズが静止する。
「まあ待て、リリス。俺は駄目だとは言ってないぞ」
「えっ!?」
リリスがドアの前で振り返る。
「やれやれ、ナオキはうちのギルド所属のメンバーだし、特に今回は領主様からの直接依頼だ。もちろん領主様に粗相があってはならないが、彼は迷い人でもある。この世界の常識に疎い可能性は否定出来ないからな」
ギルマスのラーズは依頼書の他にもう一枚の書類にサインをするとリリスに手渡した。
「往復二十日の旅になるが行ってくるといい。もちろんちゃんと研修も受けてくることを忘れるなよ」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
リリスはラーズの言葉に跳び上がって喜んだが、当の本人は説明担当を付けないと領主様に失礼な事をする人物だと認識されていたことに軽いショックを受けていたのだった。
俺ってそんなに常識がないように見えるのかな?

