「事の発端はギルドに届いた一通の依頼書からでした。その依頼書はギルドマスター宛でその内容を読んだギルマスは執務室へ私を呼んで直接指示をしてきました」
「そう……。ならば今回の発端はギルマス経由と言う事なのね」
リリスはユリナの話から大体の予測は立てていたらしく特に驚く事はなかった。
「それで? 実際の依頼人と患者の概要はどうなってるのかしら」
「はい。依頼人はアーリー様で患者は娘のナナリー様になります」
依頼人の名前を聞いたリリスが明らかに難しい顔になり、何かを考え込んでいた。
「知ってる名前なのか?」
俺が彼女に問うと「まあね」と返された。
「依頼人の名前を様づけするからにはもしかして貴族籍の人なのかい?」
「いいえ。彼女は貴族ではないわ。ギルド職員は皆、依頼人を呼ぶ時は基本的には『様』づけして呼ぶものなのよ。だから貴族様でも平民でもあまり関係ないの」
「そうなのか……。だがユリナさんの話を聞いていると権力を持っている人からの依頼に聞こえるんだが……」
「まあ、普通に考えればそうよね……ってこの依頼は受けないと仕方ないでしょうね。いいわ、ユリナさん。依頼書を貸して頂戴、この依頼引き受けるから」
リリスがため息をつきながらユリナに依頼書を見せるように伝える。
「ありがとうございます。本当に助かります」
ユリナがお礼を言う。
「それで、依頼人はどんな人物なんだ? 名前を聞いて引き受けるなんて訳ありなんだろ?」
リリスが詳細の書かれている書類を確認しながら「まあ、そうね」と言い、その場でひとりだけ理解してない俺に説明してくれた。
「アーリー様はこの領都から三日程離れた所にあるバグーダの斡旋ギルドのギルドマスターよ。そして、ここの斡旋ギルドのギルマスの妹でもあるの」
「なるほど。ギルマスの身内だから強制的に引き受けざるを得ない方法で契約に来た訳か。で、治療をして欲しい娘の事はなんて言って来てるんだ?」
いくらギルマスでも権限を盾にして仕事を押し付けるやり方は正直褒められたやり方ではないが、リリスが仕方なくでも納得しているなら黙って受けるつもりだ。
「えっとね。どうも怪我や病気では無いようね」
「どういう事だよ?」
「この依頼書によるとナナリーの首筋から胸元にかけて生まれつき大きなアザがあるそうなの。そのアザのせいでいつもハイネックの服を着ていたそうだけど、彼女も年頃になりパーティにも呼ばれるようになったがアザが気になってドレスを着ることが出来ないそうなの」
「ああ、なるほどな。それは確かに可哀想だと思うよ。分かった、生まれつきのアザの除去が俺の魔法で出来るかはやってみないと分からないけど、試してみる価値はあるだろう」
俺はそう言って少し冷めた紅茶を飲みながら聞いた。
「それで治療は何処でするんだ? そのバグーダの街まで出張治療でもするのか?」
「いえ、それには及びませんわ」
俺の問いにユリナが横から声をあげた。
「予定ではおふたりとも明日のお昼頃にはサナールへ到着される事になっています。ですので、明日の夕刻にはこちらに来られる事になります」
「おいおい。俺が引き受けるかも分からない状態で三日もかかる街から先行してくるなんて……」
と言いかけて「ああ、だから裏技で強制依頼を仕掛けてきたのか」と納得した。
「やっぱりそうだったのね。まあ、ギルマスのあせり具合からするとそんな事だろうとは思っていたわよ。カルカルのギルマスもたまにだけど似たような案件の時、傭兵や薬師に無理を言ってたからね」
リリスがさらりとギルマスの悪事? を暴露した。
「どこのギルマスもやってるのかよ……」
「まあ、確かに厳密に言えばルール違反だけど、ギルドとしても依頼を受ける側にもメリットがあるようにしてるからギブアンドテイクって所もあるのよ」
リリスはそう言いながら依頼書の一部を指差しながら説明してくれた。
「ほら、ここ。報酬の欄にある項目で金銭的報酬の他に『一年間、斡旋ギルドへの優先依頼の権利を有する』とあるでしょ」
「ああ、どういう意味なんだ?」
「これはね。サナール斡旋ギルドへの依頼がある時にギルドに対して無理が利くと言う事なの。具体的にいうと何かギルドに頼みたい事があったら緊急依頼として処理されるんだけど、その際の追加料金の免除と信頼性の高い人材の紹介を約束してくれるものなのよ」
「それって、結構凄い事なのか?」
「ええ、かなり奮発した条件ね」
「なるほど。だから一年間の区切りがあるのか……」
俺が納得していると依頼書の続きを読んでいたリリスが急に声をあげた。
「なっ 何よこの娘! こんなのどうやって治療しろって言うのよ!」
あまりの剣幕に驚いた俺は彼女に落ち着くように言い、何事かと尋ねた。
「この患者の女の子は『極度の男嫌い』で特に身体を触られるのを嫌悪しているそうなの。ナオキの治癒魔法は患者に触れてないと発動出来ないんだから、どうやっても不可能な話じゃないの!」
憤るリリスをなだめながら俺も『どうするべきか』と考え込んでいた。
「そう……。ならば今回の発端はギルマス経由と言う事なのね」
リリスはユリナの話から大体の予測は立てていたらしく特に驚く事はなかった。
「それで? 実際の依頼人と患者の概要はどうなってるのかしら」
「はい。依頼人はアーリー様で患者は娘のナナリー様になります」
依頼人の名前を聞いたリリスが明らかに難しい顔になり、何かを考え込んでいた。
「知ってる名前なのか?」
俺が彼女に問うと「まあね」と返された。
「依頼人の名前を様づけするからにはもしかして貴族籍の人なのかい?」
「いいえ。彼女は貴族ではないわ。ギルド職員は皆、依頼人を呼ぶ時は基本的には『様』づけして呼ぶものなのよ。だから貴族様でも平民でもあまり関係ないの」
「そうなのか……。だがユリナさんの話を聞いていると権力を持っている人からの依頼に聞こえるんだが……」
「まあ、普通に考えればそうよね……ってこの依頼は受けないと仕方ないでしょうね。いいわ、ユリナさん。依頼書を貸して頂戴、この依頼引き受けるから」
リリスがため息をつきながらユリナに依頼書を見せるように伝える。
「ありがとうございます。本当に助かります」
ユリナがお礼を言う。
「それで、依頼人はどんな人物なんだ? 名前を聞いて引き受けるなんて訳ありなんだろ?」
リリスが詳細の書かれている書類を確認しながら「まあ、そうね」と言い、その場でひとりだけ理解してない俺に説明してくれた。
「アーリー様はこの領都から三日程離れた所にあるバグーダの斡旋ギルドのギルドマスターよ。そして、ここの斡旋ギルドのギルマスの妹でもあるの」
「なるほど。ギルマスの身内だから強制的に引き受けざるを得ない方法で契約に来た訳か。で、治療をして欲しい娘の事はなんて言って来てるんだ?」
いくらギルマスでも権限を盾にして仕事を押し付けるやり方は正直褒められたやり方ではないが、リリスが仕方なくでも納得しているなら黙って受けるつもりだ。
「えっとね。どうも怪我や病気では無いようね」
「どういう事だよ?」
「この依頼書によるとナナリーの首筋から胸元にかけて生まれつき大きなアザがあるそうなの。そのアザのせいでいつもハイネックの服を着ていたそうだけど、彼女も年頃になりパーティにも呼ばれるようになったがアザが気になってドレスを着ることが出来ないそうなの」
「ああ、なるほどな。それは確かに可哀想だと思うよ。分かった、生まれつきのアザの除去が俺の魔法で出来るかはやってみないと分からないけど、試してみる価値はあるだろう」
俺はそう言って少し冷めた紅茶を飲みながら聞いた。
「それで治療は何処でするんだ? そのバグーダの街まで出張治療でもするのか?」
「いえ、それには及びませんわ」
俺の問いにユリナが横から声をあげた。
「予定ではおふたりとも明日のお昼頃にはサナールへ到着される事になっています。ですので、明日の夕刻にはこちらに来られる事になります」
「おいおい。俺が引き受けるかも分からない状態で三日もかかる街から先行してくるなんて……」
と言いかけて「ああ、だから裏技で強制依頼を仕掛けてきたのか」と納得した。
「やっぱりそうだったのね。まあ、ギルマスのあせり具合からするとそんな事だろうとは思っていたわよ。カルカルのギルマスもたまにだけど似たような案件の時、傭兵や薬師に無理を言ってたからね」
リリスがさらりとギルマスの悪事? を暴露した。
「どこのギルマスもやってるのかよ……」
「まあ、確かに厳密に言えばルール違反だけど、ギルドとしても依頼を受ける側にもメリットがあるようにしてるからギブアンドテイクって所もあるのよ」
リリスはそう言いながら依頼書の一部を指差しながら説明してくれた。
「ほら、ここ。報酬の欄にある項目で金銭的報酬の他に『一年間、斡旋ギルドへの優先依頼の権利を有する』とあるでしょ」
「ああ、どういう意味なんだ?」
「これはね。サナール斡旋ギルドへの依頼がある時にギルドに対して無理が利くと言う事なの。具体的にいうと何かギルドに頼みたい事があったら緊急依頼として処理されるんだけど、その際の追加料金の免除と信頼性の高い人材の紹介を約束してくれるものなのよ」
「それって、結構凄い事なのか?」
「ええ、かなり奮発した条件ね」
「なるほど。だから一年間の区切りがあるのか……」
俺が納得していると依頼書の続きを読んでいたリリスが急に声をあげた。
「なっ 何よこの娘! こんなのどうやって治療しろって言うのよ!」
あまりの剣幕に驚いた俺は彼女に落ち着くように言い、何事かと尋ねた。
「この患者の女の子は『極度の男嫌い』で特に身体を触られるのを嫌悪しているそうなの。ナオキの治癒魔法は患者に触れてないと発動出来ないんだから、どうやっても不可能な話じゃないの!」
憤るリリスをなだめながら俺も『どうするべきか』と考え込んでいた。



