――コンコン。
「どうぞ、開いてるよ」
ノックの返事にかちゃりとドアノブが回る音がして扉がそーっと開く。その後からリリスの頭が静かに覗いてきた。
「おはようございます」
かなり緊張して遠慮がちに入ってくるリリスに俺はいつもと変わらない声掛けをした。
「おはよう。体調の方は大丈夫かい?」
その声にビクッと反応しながらも出来るだけ平静を装いながらリリスが答えた。
「えっと少し、いやちょっと、いやいや、かなり頭が痛いです」
なんか変な言い回しだけど結局のところ二日酔い状態で頭が痛いのだろう。
「仕方のない奴だなぁ。治してあげるからこっちに来て椅子に座りなさい。そしてこっちを向いて頭を出して……」
「はい、すみません。宜しくお願いします」
リリスはそう言って素直に俺の前の椅子に座り、裾を掴んでいきなり服をまくり上げた。
「!? ちょっ!!」
そこには奇麗なふたつの山が出現していた。
いきなりの彼女の行動にまだ酔っているのか? と思いながら俺は彼女の手を掴んで服を下げさせると冷静に「頭痛なんだから頭を見せてくれたらいいよ」と顔を赤くしながら言った。
「では、治療をするよ」
俺の心臓はドキドキしたままだったが大きく深呼吸をして頭に手を当てながらいつもの魔法を唱えた。
いつものように魔力の流入をしているとリリスは自分の手を自分の胸に重ねて小さな声で何かを呟いていた。
「これでもう大丈夫だろう。気分の方はどうだい?」
治療の終わった俺は彼女から手を離して体調の変化を確認する。
「もう大丈夫です。ご心配をかけてすみませんでした」
リリスがそう礼を言う。
「それで、あの、昨日の事は……」
「ああ、それならメモに書いたとおり俺は何も見なかったし、何も覚えていないから気にしなくて良いよ。でも、これからはあんなアルコール度数の高いお酒は控えてね」
俺は気を遣ってそう云う事にしようと思っていたのだが彼女の方はそう簡単な事では無かったらしい。
「えっと、そのお気遣いは嬉しいのですが……。やはり、何をやらかしたのかを聞いておかないと自分の気持ちと言うか反省も出来ませんし、ずっとモヤモヤしたままになると思うんです。ですから……」
リリスは聞きたくないけど聞かなければ前に進めないとばかりに話して欲しいとお願いしてきた。
「うーん。でも、俺は何も見てないし何も覚えてないんだから話す事は何も無いんだよな」
俺はもう一度恍けてみたが、その設定はもういいですからと一蹴されてしまう。
「分かったよ。なら一所懸命に思い出してみるけど、何が出て来ても後悔するんじゃないぞ」
「わっ、分かってますよ」
リリスの了解を得たので俺は仕方なく自己封印していた記憶から昨日の出来事を思い出していったのだった。
◆
「そうだな。まず、何処まで覚えている?」
「えっと、仕事が終わって……お酒を買いに行って……最後の一本だったのを買えて……家に戻って……ナオキがオツマミを作ってくれて……夕飯を作ってくれるって言ってくれて……待ってる間に少しだけお酒の味見をして……後はよく憶えてない……けど何か楽しかったような気がするのと食事が美味しかったような記憶がなんとなくあるわ」
「ふむ。となるとほとんど初めから記憶が無かったと言うことか……。さて、どこまで話したら良いものかな」
俺は腕組みをして少し考えるが、仕方ないから一通り話そうと言って順を追いながら話し始めた。
「まず、君は俺が料理を持って行った時には既にお酒の瓶のほとんどを呑んでいた。だが、君は少しばかり陽気になっているだけで見た目普通に話もしたし、食事もしっかり食べてたんだ。だけど君は俺がまだ食べてる最中に色々と話しかけてきたんだ」
俺の話を聞いていたリリスの顔色が段々と青くなるのが分かると念のために彼女に聞いた。
「続けていいかい?」
「お、お願いします」
「で、その内容というのが君の前職のギルドの同僚の話から始まって理想の彼氏の話になり、最後には暑くなったから脱ぐと言い出して服を脱ぎ出し、俺が制止すると今度は怒り出して俺をパシパシと叩き出したので仕方なく酔いを冷まそうと治癒魔法をかけようとしたら……」
「したら?」
「えっちと言われて、その言葉に俺が怯んだ隙にほとんど裸のまま俺に抱きついてきて「ナオキっていい身体してるね」って俺の服まで脱がそうとしてきたので、これはマズイと思いお姫様抱っこで君の部屋に運んでベッドに寝かせて服とメモを置いて来たんだ」
「!? その話、盛ってません?」
「盛ってません。全て真実です。あと、理想の結婚像とか相手に求める理想とか……結構考えられているのですね」
そこまで話した俺は固まっている彼女の肩をポンポンと叩いて再起動させた。
「#%$¥¢⁉」
やらかし過ぎてもはや何を言ってるのか分からないリリスを落ち着かせる為に俺はそっともう一度治癒魔法をかけてあげた。
「――もう、お嫁に行けない……」
再起動したリリスの最初の言葉がそれだった。
「どうぞ、開いてるよ」
ノックの返事にかちゃりとドアノブが回る音がして扉がそーっと開く。その後からリリスの頭が静かに覗いてきた。
「おはようございます」
かなり緊張して遠慮がちに入ってくるリリスに俺はいつもと変わらない声掛けをした。
「おはよう。体調の方は大丈夫かい?」
その声にビクッと反応しながらも出来るだけ平静を装いながらリリスが答えた。
「えっと少し、いやちょっと、いやいや、かなり頭が痛いです」
なんか変な言い回しだけど結局のところ二日酔い状態で頭が痛いのだろう。
「仕方のない奴だなぁ。治してあげるからこっちに来て椅子に座りなさい。そしてこっちを向いて頭を出して……」
「はい、すみません。宜しくお願いします」
リリスはそう言って素直に俺の前の椅子に座り、裾を掴んでいきなり服をまくり上げた。
「!? ちょっ!!」
そこには奇麗なふたつの山が出現していた。
いきなりの彼女の行動にまだ酔っているのか? と思いながら俺は彼女の手を掴んで服を下げさせると冷静に「頭痛なんだから頭を見せてくれたらいいよ」と顔を赤くしながら言った。
「では、治療をするよ」
俺の心臓はドキドキしたままだったが大きく深呼吸をして頭に手を当てながらいつもの魔法を唱えた。
いつものように魔力の流入をしているとリリスは自分の手を自分の胸に重ねて小さな声で何かを呟いていた。
「これでもう大丈夫だろう。気分の方はどうだい?」
治療の終わった俺は彼女から手を離して体調の変化を確認する。
「もう大丈夫です。ご心配をかけてすみませんでした」
リリスがそう礼を言う。
「それで、あの、昨日の事は……」
「ああ、それならメモに書いたとおり俺は何も見なかったし、何も覚えていないから気にしなくて良いよ。でも、これからはあんなアルコール度数の高いお酒は控えてね」
俺は気を遣ってそう云う事にしようと思っていたのだが彼女の方はそう簡単な事では無かったらしい。
「えっと、そのお気遣いは嬉しいのですが……。やはり、何をやらかしたのかを聞いておかないと自分の気持ちと言うか反省も出来ませんし、ずっとモヤモヤしたままになると思うんです。ですから……」
リリスは聞きたくないけど聞かなければ前に進めないとばかりに話して欲しいとお願いしてきた。
「うーん。でも、俺は何も見てないし何も覚えてないんだから話す事は何も無いんだよな」
俺はもう一度恍けてみたが、その設定はもういいですからと一蹴されてしまう。
「分かったよ。なら一所懸命に思い出してみるけど、何が出て来ても後悔するんじゃないぞ」
「わっ、分かってますよ」
リリスの了解を得たので俺は仕方なく自己封印していた記憶から昨日の出来事を思い出していったのだった。
◆
「そうだな。まず、何処まで覚えている?」
「えっと、仕事が終わって……お酒を買いに行って……最後の一本だったのを買えて……家に戻って……ナオキがオツマミを作ってくれて……夕飯を作ってくれるって言ってくれて……待ってる間に少しだけお酒の味見をして……後はよく憶えてない……けど何か楽しかったような気がするのと食事が美味しかったような記憶がなんとなくあるわ」
「ふむ。となるとほとんど初めから記憶が無かったと言うことか……。さて、どこまで話したら良いものかな」
俺は腕組みをして少し考えるが、仕方ないから一通り話そうと言って順を追いながら話し始めた。
「まず、君は俺が料理を持って行った時には既にお酒の瓶のほとんどを呑んでいた。だが、君は少しばかり陽気になっているだけで見た目普通に話もしたし、食事もしっかり食べてたんだ。だけど君は俺がまだ食べてる最中に色々と話しかけてきたんだ」
俺の話を聞いていたリリスの顔色が段々と青くなるのが分かると念のために彼女に聞いた。
「続けていいかい?」
「お、お願いします」
「で、その内容というのが君の前職のギルドの同僚の話から始まって理想の彼氏の話になり、最後には暑くなったから脱ぐと言い出して服を脱ぎ出し、俺が制止すると今度は怒り出して俺をパシパシと叩き出したので仕方なく酔いを冷まそうと治癒魔法をかけようとしたら……」
「したら?」
「えっちと言われて、その言葉に俺が怯んだ隙にほとんど裸のまま俺に抱きついてきて「ナオキっていい身体してるね」って俺の服まで脱がそうとしてきたので、これはマズイと思いお姫様抱っこで君の部屋に運んでベッドに寝かせて服とメモを置いて来たんだ」
「!? その話、盛ってません?」
「盛ってません。全て真実です。あと、理想の結婚像とか相手に求める理想とか……結構考えられているのですね」
そこまで話した俺は固まっている彼女の肩をポンポンと叩いて再起動させた。
「#%$¥¢⁉」
やらかし過ぎてもはや何を言ってるのか分からないリリスを落ち着かせる為に俺はそっともう一度治癒魔法をかけてあげた。
「――もう、お嫁に行けない……」
再起動したリリスの最初の言葉がそれだった。


