【悲報】異世界転生した救急救命士のチート能力、女性専用車両並みに男性お断りだった件

 副作用の治療方法としての魔力の吸い出しは、やはり心臓の位置に手を添えてから魔法を唱える事で良かった。

 ただひとつ【肌に直接手を密着させる事】という条件が追加されていなければ。

「すまない、やっぱり嫌だよね。仕方ないから食べ物を大量に買ってくるよ。出来るだけ美味しそうなものを選んでくるからそれで勘弁して欲しい」

 俺がそう言って部屋を出ようとするとリリスが引き止めた。

「それって私に『太れ』って事よね? 冗談じゃないわよ!」

「でも、直接触られるのは嫌なんだろう? だったら食べて魔力を燃やすしか方法がないんだけど……」

「ゔっ……。うーん」

 リリスは頭を抱えて「あー」「うー」と言いながら部屋の中をせわしなく歩いていたが、最後に俺の顔を見てから呟くように言った。

「……仕方ないか。いいわよ治療をお願いするわ。で、何? 上半身裸になればいいの? かなり恥ずかしいけど」

 やると決めたら躊躇(ちゅうちょ)なく行動に移す思い切りの良いリリスだったが、いきなり目の前で脱がれたら俺の心臓が保たない。

「い、いや。待ってくれ。無理に脱がなくてもいいんだ。右手だけ服の裾から入れさせて貰って心臓の位置に手を添えさせて貰えれば大丈夫だから!!」

 俺は慌ててやり方を説明する。

「そ、それなら少しは恥ずかしさは軽減出来るかな……」

「じゃあ俺が先にベッドに座るから寄りかかるように身体を預けて貰えるかな。うん、そうそう」

 リリスが言われたとおりに俺に寄りかかる。彼女の華奢な身体つきに背中から体温が俺の胸に感じられて鼓動が早くなるのが分かる。

「それでは、失礼して服の裾から手を入れさせてもらうよ。出来るだけ余計なところは触らないようにするつもりだけど見えないから触れたらすまない」

 俺はそう言うとリリスの服の裾を少し捲って右手をそっと入れた。出来るだけ触らないようにとは思うが、後ろから服の中が見えない状態で位置を合わせるのは無理がある。この辺かと手を動かすとお腹に当たり、リリスがビクッと肩を揺らす。

「すみません。もう少し上のようですね」

 慌てて俺は正確な位置を探るために再度手を上に伸ばす。

 ――ふよっ。

 何かとてつもなく柔らかい何かに手が触れた。

「ちょっ……」

 リリスが何か言おうとするが、俺は魔力溜まりの位置を見つけて「ここです」と先に宣言した。

「――ゔぅ」

 後ろからなので顔は見えないが耳まで真っ赤にしたリリスが小刻みに震えているのが分かる。

「治療を開始しますので、このまま暫く俺に身体を預けたままでお願いしますね」

 リリスの胸に手を置いたまま、その柔らかさを、出来るだけ意識しないように無心になっていた。

「ねえ。まだ時間がかかるのだったら少し話をしない? 少しでも気が紛れると思うから……」

 リリスも黙ったままだと気が手に集中しすぎて恥ずかしかったからか会話をしようと言ってきた。

「いいですけど、何か聞きたいことでもありましたか?」

「そうですね。とりあえずナオキさんの歳を聞きたいです。見た目は筋肉質の締まった身体つきですし、まだ若そうですからちょっと気になります」

「歳ですか?」

 大学を出てから救急救命士の養成学校に行ったから。

「多分、二十五歳だと思います」

「多分……って、自分の歳も数えられないの?」

「あはは、俺はちょっと特殊な事情があるから……」

 流石に『一度死んでます』とは言えないので笑って誤魔化した。

「そう言う君は何歳なんだよ。ギルドの受付をしていたし、結構大人びてるから二十二~二十三くらいじゃないか?」

 女性の年齢を聞く時には若く見積もれと誰かが言っていた気もするが、俺はそんな事は忘れて自分の予想をそのまま言った。

「……女性に年齢を聞くのはマナー違反だと思うけど、私ってそんなに歳がいっているように見えるのね。かなりショックだわ」

 リリスは俺の予想にかなり不満がある様子で愚痴を言いながら教えてくれた。

「私、まだ十八なんですけど」

「じゅっ……じゅうはちぃ!?」

 リリスの年齢に驚いた俺は思考が停止していた。

「まあ、私もナオキさんの事は二十歳くらいかなぁと思っていたからね。本当、人の年齢当てはしない方に限るわね。あはは」

 そんな会話をしているうちにリリスの治療が終わりを迎えた。

「おっ! どうやらうまく魔力調整が終わったみたいだな」

 俺の言葉にリリスは「はぁ、やっと終わったのね」と伸びをした。だが、それがいけなかった。ぐっと伸びをしたリリスのお尻が座っていたベッドからずり落ちてしまったのだ。

「おっと!?」

 バランスを崩したリリスをちょうど後ろから手を回していた俺は慌てて抱き寄せたのだが、もとより胸に半分かかっていた手が彼女の身体が下がった事により、あろうことか完全に胸を掴む形になってしまった。

 ふかっ!ふにゅっ!

 ふたつの柔らかい丘の感触をまともに受けた俺は凄まじい動揺から頭が真っ白になりそのままリリスを抱きしめる形で後ろ向きにベッドに倒れ込んでそのまま気を失った。

「ちょっ ちょっとぉ」

 記憶の彼方にリリスの非難めいた声が聞こえた気がしたが、俺の目が覚めることは無かった。