そろそろ幼馴染みバナレの時間です。


 家に帰ると問答無用でお風呂になった。
 全身ずぶ濡れだった僕は湯船にじっくり浸からないと出てきてはダメだと言われた。
 大人しくあっくんの言う通りにしてお風呂から上がると、僕の着替えが脱衣所に置かれた洗濯機の上に置いてあった。

 リビングはすっかり綺麗になっていた。
 あっくんがいない間何もやる気が起きずダラダラしていた痕跡は今は跡形もない。
 僕は手を洗っているあっくんのそばに行くと、その背にぎゅっと抱きついた。
 あっくんは腰に回った僕の手を上からポンポンと叩いた。

 ソファーに並んで腰を下ろす。
 あっくんから肩時も離れたくなくてピッタリと身体を寄せて座った僕にあっくんはやっぱり何も言わなかった。
 それでも纏う空気が優しい感じがしたから僕は安心してくっついていた。

「悠……ごめんな。」

 あっくんが僕の髪を撫でながら呟く。

「俺、お前に酷いことをしたと思う。お前の意思なんて無視してキスして。」

 きゅっとあっくんの身体に回していた腕に力が入った。

「大学に入って、二人で暮らし始めて最初は浮かれてたんだ。お前と二人でこれから楽しくやっていこうって思ってた。だけどさ、日に日に苦しくなっていって、優しくできなくなったんだ。」

 心当たりのあった僕は小さな声でどうしてか問いかけた。

「だってそうだろ。悠がそばにいるんだ。俺のこと全面的に信頼して無防備に笑いかけてくる。襲わない自信がなかった。」

 苦しそうな声で答えるあっくんの言葉に耳を疑った。

「俺だって男なんだよ。ずっとずっと好きで守り通してきたやつが無防備にくっついてきたら我慢なんて出来なくなるだろ。本人はその自覚ないのに。」

 そう言われて確かに僕があっくんを好きだと気づいたのはもっと最近のことだったな、と思った。

「その上そいつは昔変な塾講に襲われてトラウマになったかもしれないって思ったら俺の気持ちをぶつけるわけにはいかなかった。でも離れたくはなかったし、ジレンマでいっぱいだったんだよ。」

 あっくんは僕の両腕に手を当てて支え、身体を起こして向き合った。
 真剣な眼差しにドキドキと胸が高鳴る。

「悠、好きだ。お前のことがずっと好きだった。俺と付きあって欲しい。」

 いつも自信満々なあっくんが少しだけ不安の色を覗かせて僕を見ていることにぞくぞくとした興奮が湧き上がる。
 僕の返事を待つあっくんがすごく可愛く見えた。

 僕は勢いよくあっくんに飛びついた。返事よりも先に抱きつきたくてしょうがなかった。

「お、おいっ。」
「好きっ。僕もあっくんが大好きっ。」

 そう言うとあっくんの身体から力が抜けた。

「緊張してた?」
「当たり前だろ。俺はお前のことになると途端に自信がなくなるんだよ。」

 そう言いながらもぎゅっと僕のことを抱きしめてくれるその腕は力強かった。
 
「ずっと、ずっと一緒にいてね。僕の一番でいてね。」
「ああ、ずっと一緒にいるよ。」

 優しい声が何度も何度も僕を好きだと言ってくれた。それは胸の奥底からぷくぷくと浮かんでくる泡みたいに楽しくてそして幸せな気持ちになった。

「大好き、あっくん。」

 一生幼馴染み離れは出来そうにないけれど、それが幼馴染み兼恋人なら一生離れなくてもいいかな、と僕は優しいキスを受けながらそんな風に思っていた。



おわり。