銀杏並木の毒舌な隣人たち(祝祭の檻編)

「そうよね。私には、私のペースがあるのよね」

『ええ、そうよ』

 鏡の中の自分と、お互いを(たた)え合うように、そっと手のひらを合わせる。

『――さあ、完璧な顔で笑いなさい。今日は高いメシを食って、誰よりも自由に、この「一人の時間」を謳歌してやるのよ』

 披露宴会場の席に着き、乾杯の挨拶を聴きながら、麻美子は気品ある微笑みを浮かべていた。

 会場の大きなガラス窓からは、皮肉ながらも銀杏並木が広がっている。

(カラスも金魚も、どいつもこいつも、勝手なことばかり言って……)

 麻美子は心の中で苦笑いしながら、自分のドレスの裾を少しだけ誇らしく整えた。

(勝手に幸せになりなさいよ。私は、この「完璧な皮」を着こなして、あんたたちが羨むくらいの「完璧な孤独」を愛してやるわ!)

 スピーチが終わり、会場の参列者たちが一斉に立ち上がってグラスを高く掲げた。その中でまっすぐに背筋を伸ばす自分の姿が、麻美子にはひどく誇らしく思えた。。

「乾杯!」

 会場に響き渡ったこの日一番の祝福の声を、麻美子はまるで、自分自身へのエールのように受け止めていた。

 終わり