銀杏並木の毒舌な隣人たち(祝祭の檻編)

 毒舌を吐く動物たちには、もう慣れっこになっているつもりだった。
 しかし、息つく暇もない二羽の言葉の応酬に、麻美子は気力負けしてたじろいでしまう。

「うるさいわね! ゴミを漁っているあなたたちに、私の人生を残念がられる筋合いはないわ!」

(おっといけない。本気でムキになっちゃったわ)

 麻美子はハッとして慌てて周囲を意識したが、幸いにも人通りがないことに気づいて胸をなでおろした。

 そして、乱れた呼吸を隠すように、着飾ったドレスの首元をすっと直して背筋を伸ばした。

 そんな彼女の強がりを見透かしたように、カラスは鉄柵の上を「カッツン、カッツン」と鋭い爪音を鳴らして移動する。

 首を傾げ、鋭い(くちばし)を動かすたびに、麻美子の財布の痛いところを正確に抉ってきた。

「そのドレス、買ったんでしょ。でも、もう着る機会なんてないわね」

「見栄を張って、最初の予算より奮発しちゃったんでしょ」

「バカだなあ麻美子は。そんなのレンタルで十分だったのに」

「変なところで自分にご褒美をあげて、どうすんのよ」

「残念だったね、麻美子。あちらの彼女は僕たちと同じさ。一生を誓い合ったパートナーと、空を突くような高層マンション……電信柱の特等席を手に入れたんだ」

「二人で稼ぐサラリーは、さぞ高額よね。自由なんて安い言葉で自分を慰めていないで、あなたも早く『所有』される側になればいいのに」

(なんなのよ、この夫婦は……!)