銀杏並木の毒舌な隣人たち(祝祭の檻編)

 その日、休日の麻美子は、東京・丸の内へと向かっていた。

 大手町にある披露宴会場で、会社の後輩の結婚式に出席するため、慣れないフォーマルドレスに身を包んで電車に揺られていたのだ。

 午前中の大手町駅に降り立ち、一人で会場へと歩みを進める。

 オフィス街の片隅、回収前のゴミ捨て場には、二羽のカラスが我が物顔でゴミ袋を漁っていた。

 麻美子が近づいても、逃げようともしない。
 思わず足を止め、息を殺すようにして見つめてしまう。

 重苦しい沈黙の後、やっと一羽のカラスが、少し警戒したように鉄柵の上に登ると、黒いまん丸な目玉でじっと麻美子を見つめてきた。

 その瞬間、彼女の胸に、妙に嫌な予感がよぎった。

 一回二回と、目をぱちくりすると、明後日の方向を見て、もう一度麻美子を真っ直ぐに見つめ直した。

「残念、残念。麻美子、後輩に先を越されて悲しんでいるんだね。あーあ、残念」

(あっ、やっぱりね。そう来たか)

 直球すぎる言葉の(つぶて)を食らい、麻美子は思わず肩を落とした。

 反撃しようと身構えたが、漫才のコンビように、つがいの片方も間髪入れずに応戦してくる。

「おまけに、その服はなんなのさ? 花嫁に気を使って『白は着られない』『黒は地味』なんて形式にとらわれて、本当に着たい色も選べないのかい?」

「それにその飾り。僕たちが集めたガラスの破片より、随分と貧相だね。主役を立てるために、自分を『安物』に擬態させるなんて、涙ぐましい努力じゃないか」