イケメン双子と熱愛疑惑があるぼくですが、本命は別にいます。

◇◇


 新学期初日はあっという間に終わった。
 友達とまではいかないけど話せそうな奴も見つけたし、これから問題なくやれると思う。
 そんな夜。
 風呂から上がった俺はベッドに寝転がり、スマホをいじっている。
 夕方にアップしたイラストの反応はかなり良かった。きっと今回もランキングに入れるはず。

 ──でも。
 ──ヒナタからまだ来てない。

 いつもなら投稿してから十分後には長文の感想が届くのに、今日あるのはヒナタのアカウントから“いいね!”がついたという情報のみ。

 ──さすがに嫌われた?

『好きとか付き合ってるとか、男同士でそうなるってあんまないのに』

 放課後の理科準備室で、変な噂が立つのが怖くて生徒会(匠海)を頼れないと悩むヒナタに俺はそう返した。
 
 ──だって本当のことだろ。
 ──……ヒナタの事情を知ってて、わざわざ言うことじゃなかっただろうけど。

 ヒナタには好きな奴がいるらしい。
 朝、財布を届けに行った時に聞いた会話から考えると……たぶん相手は陸斗(りくと)匠海(たくみ)のどっちか。
 兄貴たちがヒナタに友達以上の感情があるかは謎だ。

 ──ヒナタが男を好きになれるなら。

「俺にすれば良いじゃんか……」

 一人なのを良いことに声に出してみる。
 理科準備室で言ったことは、俺自身に(つね)に言い聞かせてることだ。
 ……小学生の頃からヒナタが好きで、高校まで同じところを選んだ俺に。

 ──分かってる。
 ──ヒナタが男もいけると分かったところで、俺はあの二人には(かな)わない。

 どこに行っても人気者になれる陸斗に、優秀で人望もある匠海。
 勉強も運動も、あと一歩が(およ)ばない。
 俺が勝てるものがあるとすればイラストの腕くらい。
 だから話したこともない生徒に『華がない』なんて陰口を叩かれる。

 ──どれほど双子が目立っても、ヒナタだけは俺を忘れなかった。
 
  たったの一歳差で子供扱いされるのは腹立つけど、どうせ両想いにはなれないんだから開き直って弟ポジションを守った方が絶対良い。
 ……そう、何年も前から結論は出てるのに。

【新しいイラスト見たよ】
 
 ポコン、とスマホがヒナタからのメッセージを知らせた。
 “こんばんは”のスタンプのあとに、短い報告が続く。

 ──怒ってるわけじゃない?
 ──ああでも、いつものスタンプと違うし……文面のテンションも低い気がする。

 俺はヒナタの好きな奴が男だって知らない(てい)でいるから、謝るのも不自然だ。
 とりあえずいつも通り“thank you”のスタンプを送ろうとしたところで、向こうから追加のメッセージがきた。

【二枚目の空の色がすごく好き。三枚目は映画のワンシーンを切り取ったみたいでずっと見てられると思った。五枚目のが前に上げてたのとつながってる感じがして、例えば】──……。

 今度はめいっぱいスクロールしないと終わりが見えない文量。一旦メモアプリか何かに下書きしてからこっちにコピペするヒナタを想像して、口角が緩む。
 
「……感想長過ぎ」

 兄貴たちが聞いたら『素直じゃない』って呆れそうだ。
 じっくり読む前に、見えてる範囲をスクショしておく。

 
『嫌なことがあっても、空我のイラスト見ると元気が出るんだ』
 
 
 二年の教室でヒナタが陸斗か匠海に(こく)る流れになっていて、内心穏やかじゃなかった時に食らった言葉と笑顔。
 思い出すだけで耳が熱くなるうちは、きっと諦められない。