僕らは正しい答えを見逃したようです。第一巻

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 4月1日金曜、午前、パンドラ高校近くのアパート。

 今朝は、まだ誰も起きていないうちに荷物を引いて家を出て、電車でパンドラ高校の向かいにある日吉駅までやって来た。
 アパートの前まで着くと、近くのベンチに腰を下ろし、両親と姉ちゃんが来るのを待った。

「いい人だったな。」
 大家さんとの話が一通り終わったあと、父がそう言った。

「でしょ~?前にも言ったじゃん。急に二人部屋にしたいって言っても、全然文句言わなかったんだから~」
 姉さんが得意げに返す。はいはい、今の嫌味は聞かなかったことにしておく。

「部屋の日当たりも間取りも気に入ったわ。悠月も本当に大きくなったのね。」
 母のその一言で、姉さんは急に目を赤くした。

「な、なんで急にそんなこと言うのよ……ヨルが家を出るって言わなかったら……私だって、まだ……迷ってたのに……うわああぁ……」

 化粧を崩しながら、姉さんは母の肩にもたれて泣き出した。
 ああ、無理やり引っ越させたみたいになってたのか。それは知らなかった。悪かったな。

「いい子ね、いつでも帰ってきていいのよ。」

 母がそう言っても、姉さんはしばらく泣きやまなかった。
 その間に父は無言で僕の横を通り過ぎ、車のほうへ向かっていった。最後まで、一度もこちらを見なかった。

 上出来だ。これが僕とお前たちにふさわしい、赤の他人みたいな結末だ。
 お前たちへの恨みは消えないし、こんな別れ際だからって、態度を変える気もない。家賃を自分の貯金で払うなら、お前たちも何も言えない。

 姉さんが落ち着いてから、母もエンジンのかかった車に乗り込んだ。出る直前、母は窓を下ろした。

「姉ちゃん、あとは頼んだわね。」
「わかったよ。この自意識過剰なガキは、ちゃんと私が面倒見るから~気をつけてね。」

 そう言って姉さんは、ただ黙って立っているだけで、「気をつけて」の一言すら言う気のない僕を、からかうような目で見た。
 父の車が遠ざかっていくのを見送りながら、僕と姉さんの、支え合うような暮らしが始まった。

 今の僕には、何が必要で、何を望んでいて、何を取り戻したいのかもまだわからない。できるのは、この国が未成年に用意した教育を、おとなしく受け入れることくらいだ。たぶん、彼女が言ったように、新しい場所で新しいつながりを作れば、何か答えが見つかるのかもしれない。
 どうせ僕らは、強い社会性を持ちながら、一人では生きられない可笑な生き物だ。
 こうして、僕の高校生活は幕を開けた。