延々と続く白い砂浜を、小さな白い花束を片手に一人の青年が歩いている。押し寄せては引いていく渚の境界線が奏でるさざ波の歌声は、未だ見ぬ淡い春の兆しを呼び込むように世界に揺らめいている。
ふと立ち止まる。
海界から流れる潮風がそっと青年の頬を撫でた。それは冬解けの最中にある今には似合わない温もりをほんの少しだけ孕んでいた。
海はすべての命の源なんだよ、と「あの子」が言っていた。あの人がくれた海洋図鑑のトピックスにもそう書いてあったんだけどと、微笑みを浮かべて。「あの子」の幸せそうな顔を思い描くたび、青年は「あの子」の義兄に対してモヤに似た感情を抱いた。
らしくない、と自分に呆れる。その感情が伝わったのか、花束を持つ手に無意識に力が入り、花束は小さく呻くようにぐしゃりと音を立て歪んだ。
水平線に見える眠りゆく夕日の光に、青年は思わずその双眸を細める。
「……そっちの世界は、さぞ美しいんだろうな……」
誰が聞いているわけでもないのに青年はなんとなくそんな言葉を呟いた。手元の手向けの花に視線を移せば、花は、どうだろうねと笑うように微かに震えた。
まだ肌寒さの残る春の風がほんの少しの隙を見つけて吹きすさぶ。あまりの勢いに、青年の持っていた手向けの花束から花吹雪が舞い散った。
ふと立ち止まる。
海界から流れる潮風がそっと青年の頬を撫でた。それは冬解けの最中にある今には似合わない温もりをほんの少しだけ孕んでいた。
海はすべての命の源なんだよ、と「あの子」が言っていた。あの人がくれた海洋図鑑のトピックスにもそう書いてあったんだけどと、微笑みを浮かべて。「あの子」の幸せそうな顔を思い描くたび、青年は「あの子」の義兄に対してモヤに似た感情を抱いた。
らしくない、と自分に呆れる。その感情が伝わったのか、花束を持つ手に無意識に力が入り、花束は小さく呻くようにぐしゃりと音を立て歪んだ。
水平線に見える眠りゆく夕日の光に、青年は思わずその双眸を細める。
「……そっちの世界は、さぞ美しいんだろうな……」
誰が聞いているわけでもないのに青年はなんとなくそんな言葉を呟いた。手元の手向けの花に視線を移せば、花は、どうだろうねと笑うように微かに震えた。
まだ肌寒さの残る春の風がほんの少しの隙を見つけて吹きすさぶ。あまりの勢いに、青年の持っていた手向けの花束から花吹雪が舞い散った。

