さて、次は寮長イベントだが。
本音を言うと、入室カード(寮の鍵も兼用)があるんで、避けられるのなら避けたい。寮長が可愛い子(男)を連れ込んでいちゃついてるとか、本気で見たくない。
(だけど、部屋割があるからな)
流石に、何も知らない転入生同士で同じ部屋にはならないだろう。白月学園の寮は、生徒会と風紀委員、そして寮長以外は二人部屋らしいんで、どうしても入れ替えが必要だ。
「うわ、こっちもデカいな!」
「……ホテルだな」
門や学校同様、いかにも高級な建物に俺達はそれぞれ感想を口にした。うん、まあ、ここまではいいよ。想定内だから。
(転入生来るって知ってるよな、頼むから自重しててくれよ、本っ当頼むから生徒連れ込んで妙なことしてんなよ)
大切なことなんで二回(声に出さずに)言って、俺達は入口近くの寮長室へと向かった。
そして、その部屋のドアをノックしたが――俺の祈りは通じなかったらしく、誰も出てはくれなかった。
(チッ、もげろ)
何が、かは省略で。考えるだけでもウンザリするからな。
「おーい、誰かいないのかー?」
そんな俺の苛立ちを知ってか知らずか、真白がおもむろにノックをした。しかも思いっきり、ガンガン連打で。いいぞ、もっとやれ。
「すまんな、取り込んでたわ」
……そう言って、部屋から出て来た男は上半身裸だった。
そこまでは王道通りだったが、明るい色の髪は濡れていて。
その腕には、同じく濡れた三毛猫と黒猫が抱かれていた――うん、確かに可愛いけど。
(をいをい、新しいな)
取り合えず、さっきの舌打ちと呪いは反省しておこう、うん。
どうやら、猫達の入浴タイムだったらしい。しかも更にもう一匹、ぶち模様の猫も出てきて、寮長らしき人物の足にくっついた。
「……猫? 飼ってんの……ですか?」
「俺だけやなく、野良を寮全体で面倒見てる感じや……って自分、敬語ヘッタやな! 無理せんでえぇよ」
俺とは違い、声に出して尋ねる真白に笑って答える。一瞬、ミラクル再びかと思ったけど、笑顔に変化がないんで断定出来ない。
(変態みたいに、作ってる感じはないけど……実は腐男子? 年上だけど爽やか君? それとも、オカンキャラ?)
王道学園物に出てくるキャラに当てはめていると、首の後ろで束ねた髪同様、明るい茶色の目が俺へと向けられた。
「自分ら、二年の転入生やな。俺は三年で、寮長の仁和浅葱や。よろしゅう頼む」
「おう! オレは北見真白だっ」
「谷です」
「北見に谷な、うん、よろしゅう」
転校するのって初めてだけど、自己紹介の嵐だな。明日、クラスで自己紹介したら落ち着いてくれるかな。
……何て思いつつ、相変わらず苗字しか名乗らない俺だったけど。
寮長は、ニコニコ笑いながらそう返してくれた――担任より大人だよ。オカン、いや、いっそ女将だな。
「あ、同じ部屋になる奴ら呼ぶから、ちぃと待ってぇな」
そう言うと、寮長はおもむろに電話の子機を手にした。それから、繋がったらしい相手と寮長室へ来るよう話してる。
(ホテルのフロント状態だな)
確かに、これだけ大きな寮だと必要なシステムだろう。そう納得して真白としばし待ってると、待ち人らしい二人がやって来た。
「お前らと同じ、二年S組の……」
一人はふわふわの髪と大きな目の、女の子(しかも美少女)にしか見えない男で。もう一人は髪サラサラで、甘めの容姿の爽やか君……。
「キタコレ! 王道転校生だけでもメシウマなのに、平凡まで! しかも寮長、半裸待機! あ~、もう俺、萌え死ぬ…いや、でも生徒会との絡みを見るまではっ」
「一茶!」
キラキラと目を輝かせて興奮する爽やか君を、可愛いのが叱り付けた――そうか、いるとは思ってたけどお前が腐男子か。
王道学園物を読んでいて、思ったことがある。
男同士の恋愛は見る専門って豪語する腐男子だけど、下地があるからか男と恋に落ちる可能性が高いんだ。
(ただ、攻めじゃなく受けになる可能性もあるんだよな)
そして爽やか君は爽やか君で、少々、影が薄い――いや、これは可哀想か。周りがあまりにも濃すぎるんだ。
相手がダイ○ン真白だから、無駄な努力かもしれないけど。
(腐男子と爽やか君は、話がとっちらからないようパセリ(彩り)要員にって思ってたんだよな)
うん、と心の中で頷いた俺の前で二人が自己紹介する。
「杜奏水です、よろしくね」
「柏原一茶。ようこそ、王道学園へ……っ痛っ!」
「煩いけど、悪い奴ではないから安心してね」
両手を広げた腐男子の後頭部を、可愛いのが笑顔のまま殴った。うん、ナイスボケツッコミ。
「……二兎を追う者は、一兎をも得ず」
「っ!?」
ボソリ、と俺が呟いたのに腐男子が反応した。俺の肩を掴み、真白達から離して尋ねてくる。
「何、君、もしかしてお仲間?」
「いや。ただ、王道転校生総受けが見たいだけだ」
「えっ? 腐ってないのに?」
「知り合いが、推してるんだ」
嘘じゃない。桃香さんが(新作として)推してるからな。
「そっかぁ……王道君、アンチじゃない?」
「あぁ、ちゃんと苗字で呼んでくれてる」
「本当に君、腐ってないの? まぁ、でもそれなら良いかな」
そう言うと腐男子は寮長へと目をやり、笑顔で手を挙げた。
「俺、この転校生と同室になりますっ」
「そうか? 谷は良いんか?」
「はい」
「一茶、転校生に迷惑かけちゃ駄目だよ……よろしくね、真白」
「オレこそ、よろしくな奏水っ」
穏便に話がついただけじゃなく、いつのまにか可愛いのと真白が仲良くなっていた。それを見て、腐男子が「姫カップル!」と喜んでいる。そんな面々を見ながら、俺は思った。
……物語世界ならともかく、俺には魔法使いみたいに何でも出来る訳じゃない。
だけど、魔法が使えないシンデレラが継母や姉達の為、ドレスを作って舞踏会に送り出したみたいに――俺も、頑張ってやるよ。
(ただし、俺は舞踏会へは行かないけどな?)
本音を言うと、入室カード(寮の鍵も兼用)があるんで、避けられるのなら避けたい。寮長が可愛い子(男)を連れ込んでいちゃついてるとか、本気で見たくない。
(だけど、部屋割があるからな)
流石に、何も知らない転入生同士で同じ部屋にはならないだろう。白月学園の寮は、生徒会と風紀委員、そして寮長以外は二人部屋らしいんで、どうしても入れ替えが必要だ。
「うわ、こっちもデカいな!」
「……ホテルだな」
門や学校同様、いかにも高級な建物に俺達はそれぞれ感想を口にした。うん、まあ、ここまではいいよ。想定内だから。
(転入生来るって知ってるよな、頼むから自重しててくれよ、本っ当頼むから生徒連れ込んで妙なことしてんなよ)
大切なことなんで二回(声に出さずに)言って、俺達は入口近くの寮長室へと向かった。
そして、その部屋のドアをノックしたが――俺の祈りは通じなかったらしく、誰も出てはくれなかった。
(チッ、もげろ)
何が、かは省略で。考えるだけでもウンザリするからな。
「おーい、誰かいないのかー?」
そんな俺の苛立ちを知ってか知らずか、真白がおもむろにノックをした。しかも思いっきり、ガンガン連打で。いいぞ、もっとやれ。
「すまんな、取り込んでたわ」
……そう言って、部屋から出て来た男は上半身裸だった。
そこまでは王道通りだったが、明るい色の髪は濡れていて。
その腕には、同じく濡れた三毛猫と黒猫が抱かれていた――うん、確かに可愛いけど。
(をいをい、新しいな)
取り合えず、さっきの舌打ちと呪いは反省しておこう、うん。
どうやら、猫達の入浴タイムだったらしい。しかも更にもう一匹、ぶち模様の猫も出てきて、寮長らしき人物の足にくっついた。
「……猫? 飼ってんの……ですか?」
「俺だけやなく、野良を寮全体で面倒見てる感じや……って自分、敬語ヘッタやな! 無理せんでえぇよ」
俺とは違い、声に出して尋ねる真白に笑って答える。一瞬、ミラクル再びかと思ったけど、笑顔に変化がないんで断定出来ない。
(変態みたいに、作ってる感じはないけど……実は腐男子? 年上だけど爽やか君? それとも、オカンキャラ?)
王道学園物に出てくるキャラに当てはめていると、首の後ろで束ねた髪同様、明るい茶色の目が俺へと向けられた。
「自分ら、二年の転入生やな。俺は三年で、寮長の仁和浅葱や。よろしゅう頼む」
「おう! オレは北見真白だっ」
「谷です」
「北見に谷な、うん、よろしゅう」
転校するのって初めてだけど、自己紹介の嵐だな。明日、クラスで自己紹介したら落ち着いてくれるかな。
……何て思いつつ、相変わらず苗字しか名乗らない俺だったけど。
寮長は、ニコニコ笑いながらそう返してくれた――担任より大人だよ。オカン、いや、いっそ女将だな。
「あ、同じ部屋になる奴ら呼ぶから、ちぃと待ってぇな」
そう言うと、寮長はおもむろに電話の子機を手にした。それから、繋がったらしい相手と寮長室へ来るよう話してる。
(ホテルのフロント状態だな)
確かに、これだけ大きな寮だと必要なシステムだろう。そう納得して真白としばし待ってると、待ち人らしい二人がやって来た。
「お前らと同じ、二年S組の……」
一人はふわふわの髪と大きな目の、女の子(しかも美少女)にしか見えない男で。もう一人は髪サラサラで、甘めの容姿の爽やか君……。
「キタコレ! 王道転校生だけでもメシウマなのに、平凡まで! しかも寮長、半裸待機! あ~、もう俺、萌え死ぬ…いや、でも生徒会との絡みを見るまではっ」
「一茶!」
キラキラと目を輝かせて興奮する爽やか君を、可愛いのが叱り付けた――そうか、いるとは思ってたけどお前が腐男子か。
王道学園物を読んでいて、思ったことがある。
男同士の恋愛は見る専門って豪語する腐男子だけど、下地があるからか男と恋に落ちる可能性が高いんだ。
(ただ、攻めじゃなく受けになる可能性もあるんだよな)
そして爽やか君は爽やか君で、少々、影が薄い――いや、これは可哀想か。周りがあまりにも濃すぎるんだ。
相手がダイ○ン真白だから、無駄な努力かもしれないけど。
(腐男子と爽やか君は、話がとっちらからないようパセリ(彩り)要員にって思ってたんだよな)
うん、と心の中で頷いた俺の前で二人が自己紹介する。
「杜奏水です、よろしくね」
「柏原一茶。ようこそ、王道学園へ……っ痛っ!」
「煩いけど、悪い奴ではないから安心してね」
両手を広げた腐男子の後頭部を、可愛いのが笑顔のまま殴った。うん、ナイスボケツッコミ。
「……二兎を追う者は、一兎をも得ず」
「っ!?」
ボソリ、と俺が呟いたのに腐男子が反応した。俺の肩を掴み、真白達から離して尋ねてくる。
「何、君、もしかしてお仲間?」
「いや。ただ、王道転校生総受けが見たいだけだ」
「えっ? 腐ってないのに?」
「知り合いが、推してるんだ」
嘘じゃない。桃香さんが(新作として)推してるからな。
「そっかぁ……王道君、アンチじゃない?」
「あぁ、ちゃんと苗字で呼んでくれてる」
「本当に君、腐ってないの? まぁ、でもそれなら良いかな」
そう言うと腐男子は寮長へと目をやり、笑顔で手を挙げた。
「俺、この転校生と同室になりますっ」
「そうか? 谷は良いんか?」
「はい」
「一茶、転校生に迷惑かけちゃ駄目だよ……よろしくね、真白」
「オレこそ、よろしくな奏水っ」
穏便に話がついただけじゃなく、いつのまにか可愛いのと真白が仲良くなっていた。それを見て、腐男子が「姫カップル!」と喜んでいる。そんな面々を見ながら、俺は思った。
……物語世界ならともかく、俺には魔法使いみたいに何でも出来る訳じゃない。
だけど、魔法が使えないシンデレラが継母や姉達の為、ドレスを作って舞踏会に送り出したみたいに――俺も、頑張ってやるよ。
(ただし、俺は舞踏会へは行かないけどな?)
