「オレ、オムライス!」
俺同様にメニューを見ていた真白が、裏切らないチョイス(王道転校生はほぼオムライスを選ぶ)をする。
「僕はカルボナーラかな」
「俺は、ハンバーグと……谷君は?」
「モツ煮込み定食」
真白は一茶に教わり、そして二人は慣れた様子で注文していったが――俺が注文したところで、三人の視線が集中した。
いや、だってあるんだよ、メニューに。
「……本当だ」
「今まで、気がつかなかったよ」
「カッコいーな。よし、オレも」
「却下! 真白はオムライスに決まってるのっ」
メニューを示すと、一同は納得してくれた。そして興味津々の真白は一茶に止められ、俺は『今度』一口やると約束した。
……だって、キスしてモツの味したら嫌だろ? それは一茶も賛成らしく、こっそりと拝まれた。
しばらく待ってたら、無駄に顔の良いウェイターが四人分の昼飯を運んで来てくれた。
「ありがとな!」
「……いえ」
真白が礼を言うとウェイターは軽く目を見張り、次いで微笑んだ。
王道展開(他の生徒が言わないお礼を言って好感度アップ)に、一茶が目をキラッキラさせてる。確かに、マナーとしては周りの方が正しいけど――お互いが気持ち良くやり取り出来てるなら、まあ、ありじゃないかな。
「「「キャアァアーッ!!」」」
「「「ウォオォオーッ!!」」」
そして、俺達がそれぞれ昼飯を食べ出すと――不意にさっき以上の歓声が上がり、一茶がスマートフォンを構えた。うん、俺としてはこの騒音の方がマナー違反だ。
(生徒会のお出ましか……それにしても美味いな、このモツ)
つい、トロトロでピリ辛加減の絶妙なモツ煮込み定食に、意識が向いたのは許して欲しい。
「生徒会の皆様よーっ」
「紅河様、今日も素敵です!」
「紫苑様、何て麗しいっ」
「緑野様、好きでーす!」
「沙黄様、抱いて下さーいっ」
「空青様、海青様可愛いー!」
……居合わせた面々が、生徒会の紹介をしてくれた。アピールの結果だけど、モブキャラみたいだなおい。
ちなみに、生徒会の中にはやっぱりあの変態眼鏡がいた。そして、騒ぎにポカンとする真白を見つけると、笑顔でこっちに駆け寄ってきた。
「真白、会いたかったですっ」
「ゲッ、副会長……って、ちょっ!?」
「水臭いですよ。僕のことは、紫苑と呼んで下さい」
変態、改め副会長の作り笑いじゃない笑顔。更に抱き着いての名前呼び発言に、場の空気が一気に殺気立った。
「何、あの毛玉!?」
「引っ込め!」
「紫苑様をたぶらかして、汚らわしいっ」
いやいや、好きなのは嫌でも(あれだけ騒いでたらな)解るけど、心も視野も狭すぎ。どう見ても、惚れ込んでるのは副会長だし。
「神丘先ぱ「紫苑です」」
「紫苑せ「紫苑です」」
「……紫苑?」
「はいっ!」
そして真白、確かに相手もしつこいけどそこは負けるな。いや、まあ、王道的には(一茶も興奮してるし)ありなんだろうけど。
それにしても副会長、会うのは二回目だけど真白とのやり取りを見た限り、王道な腹黒副会長だった筈なのに。黒髪眼鏡な美人(男だけど)が、毬藻にデレまくりとか。そりゃあ、周りも驚くよな。
「何だ。紫苑が気に入ったって言うから、どんな奴かと思ったら……根暗かよ」
黙々と定食を食べながらそう思っていたら、つまらなそうな声がした。途端に罵声がピタリと止んで、ちょっと驚いた。
長めの黒髪と、アーモンド型の目。口きいただけで周りの注目浴びまくりとか、これが俺様会長のカリスマか。
「そうやって、人を見た目で判断する奴よりマシだ」
一方、真白は相変わらず、全く相手に呑まれることも態度が変わることもなかった。そんな真白に、会長が軽く目を見張る。
「「見た目で判断しないなら、僕達のことも解るよね?」」
そんな二人の会話力に、ボーイソプラノの二重奏が割り込んできた。
「僕は、庶務の長城空青」
「僕は、庶務の長城海青」
「「どっちが、どっちでしょう?」」
色素の薄い髪と瞳。そっくり同じ顔の二人が、名乗った途端にクルクルクルッと回ったかと思うと、さっきと同じ二重奏で真白に尋ねた。
成程、これが王道学園物でお馴染みの、双子庶務(役職は他になる可能性あり)による双子見分けゲームか。顔もだけど、サラサラショートの髪型も声も格好(制服だからだけど)も、全く同じで区別がつかない。
だけど、真白は今回も裏切らなかった。
「どっちって……右が空青で、左が海青だろ?」
「「っ!? 」」
むしろ不思議そうに言った真白に、双子庶務が大きな目を更に見開く。
「「当たりだよ、すごいっ」」
「おわっ!」
それから副会長を押し退けると、双子庶務は真白に抱き着いた。よし、これであの二人も落ちたな。
その後も、真白のミラクル――又の名を王道展開が、俺の目の前でくり広げられた。
「……好き?」
「ん? おう、好きだぞオムライス。美味いよな」
「……解、る!?」
「お前の言ってること? あぁ、解るぞ……って!?」
短い黒髪。無口ワンコ書記の、小首を傾げながらの片言台詞を即座に解読したことで、腰にしがみつかれ。
「スゴいね、まぁちゃん……俺は、会計の高良沙黄。ねぇ、今夜俺とイイコトしない?」
「するか! そう言うのは、惚れた相手とするモンだっ」
「……じゃあ、君が俺のこと好きになればいいよね?」
明るい茶髪と軽い口調。チャラ男会計の夜のお誘いをキッパリと跳ね退けて、逆にやる気を出させ。
一連の快進撃を眺めていた会長が、面白そうに唇の端を上げて真白に近づいた。
「気に入った。俺様は、会長の最上紅河だ」
「オレは……ぅんっ!?」
そして会長は、胸倉を掴むように真白を立たせると、生徒達の前でその唇を塞いだ。
……あぁ、こいつも副会長と同じ変質者か。いや、王道的にはバ会長だな。
「何しやがるっ!」
そんな会長の鳩尾に、真白は容赦のない拳を叩き込み――食堂を飛び出して行った真白に、今まで以上の罵声が飛び交う中、完食した俺はこっそりと後を追った。
俺同様にメニューを見ていた真白が、裏切らないチョイス(王道転校生はほぼオムライスを選ぶ)をする。
「僕はカルボナーラかな」
「俺は、ハンバーグと……谷君は?」
「モツ煮込み定食」
真白は一茶に教わり、そして二人は慣れた様子で注文していったが――俺が注文したところで、三人の視線が集中した。
いや、だってあるんだよ、メニューに。
「……本当だ」
「今まで、気がつかなかったよ」
「カッコいーな。よし、オレも」
「却下! 真白はオムライスに決まってるのっ」
メニューを示すと、一同は納得してくれた。そして興味津々の真白は一茶に止められ、俺は『今度』一口やると約束した。
……だって、キスしてモツの味したら嫌だろ? それは一茶も賛成らしく、こっそりと拝まれた。
しばらく待ってたら、無駄に顔の良いウェイターが四人分の昼飯を運んで来てくれた。
「ありがとな!」
「……いえ」
真白が礼を言うとウェイターは軽く目を見張り、次いで微笑んだ。
王道展開(他の生徒が言わないお礼を言って好感度アップ)に、一茶が目をキラッキラさせてる。確かに、マナーとしては周りの方が正しいけど――お互いが気持ち良くやり取り出来てるなら、まあ、ありじゃないかな。
「「「キャアァアーッ!!」」」
「「「ウォオォオーッ!!」」」
そして、俺達がそれぞれ昼飯を食べ出すと――不意にさっき以上の歓声が上がり、一茶がスマートフォンを構えた。うん、俺としてはこの騒音の方がマナー違反だ。
(生徒会のお出ましか……それにしても美味いな、このモツ)
つい、トロトロでピリ辛加減の絶妙なモツ煮込み定食に、意識が向いたのは許して欲しい。
「生徒会の皆様よーっ」
「紅河様、今日も素敵です!」
「紫苑様、何て麗しいっ」
「緑野様、好きでーす!」
「沙黄様、抱いて下さーいっ」
「空青様、海青様可愛いー!」
……居合わせた面々が、生徒会の紹介をしてくれた。アピールの結果だけど、モブキャラみたいだなおい。
ちなみに、生徒会の中にはやっぱりあの変態眼鏡がいた。そして、騒ぎにポカンとする真白を見つけると、笑顔でこっちに駆け寄ってきた。
「真白、会いたかったですっ」
「ゲッ、副会長……って、ちょっ!?」
「水臭いですよ。僕のことは、紫苑と呼んで下さい」
変態、改め副会長の作り笑いじゃない笑顔。更に抱き着いての名前呼び発言に、場の空気が一気に殺気立った。
「何、あの毛玉!?」
「引っ込め!」
「紫苑様をたぶらかして、汚らわしいっ」
いやいや、好きなのは嫌でも(あれだけ騒いでたらな)解るけど、心も視野も狭すぎ。どう見ても、惚れ込んでるのは副会長だし。
「神丘先ぱ「紫苑です」」
「紫苑せ「紫苑です」」
「……紫苑?」
「はいっ!」
そして真白、確かに相手もしつこいけどそこは負けるな。いや、まあ、王道的には(一茶も興奮してるし)ありなんだろうけど。
それにしても副会長、会うのは二回目だけど真白とのやり取りを見た限り、王道な腹黒副会長だった筈なのに。黒髪眼鏡な美人(男だけど)が、毬藻にデレまくりとか。そりゃあ、周りも驚くよな。
「何だ。紫苑が気に入ったって言うから、どんな奴かと思ったら……根暗かよ」
黙々と定食を食べながらそう思っていたら、つまらなそうな声がした。途端に罵声がピタリと止んで、ちょっと驚いた。
長めの黒髪と、アーモンド型の目。口きいただけで周りの注目浴びまくりとか、これが俺様会長のカリスマか。
「そうやって、人を見た目で判断する奴よりマシだ」
一方、真白は相変わらず、全く相手に呑まれることも態度が変わることもなかった。そんな真白に、会長が軽く目を見張る。
「「見た目で判断しないなら、僕達のことも解るよね?」」
そんな二人の会話力に、ボーイソプラノの二重奏が割り込んできた。
「僕は、庶務の長城空青」
「僕は、庶務の長城海青」
「「どっちが、どっちでしょう?」」
色素の薄い髪と瞳。そっくり同じ顔の二人が、名乗った途端にクルクルクルッと回ったかと思うと、さっきと同じ二重奏で真白に尋ねた。
成程、これが王道学園物でお馴染みの、双子庶務(役職は他になる可能性あり)による双子見分けゲームか。顔もだけど、サラサラショートの髪型も声も格好(制服だからだけど)も、全く同じで区別がつかない。
だけど、真白は今回も裏切らなかった。
「どっちって……右が空青で、左が海青だろ?」
「「っ!? 」」
むしろ不思議そうに言った真白に、双子庶務が大きな目を更に見開く。
「「当たりだよ、すごいっ」」
「おわっ!」
それから副会長を押し退けると、双子庶務は真白に抱き着いた。よし、これであの二人も落ちたな。
その後も、真白のミラクル――又の名を王道展開が、俺の目の前でくり広げられた。
「……好き?」
「ん? おう、好きだぞオムライス。美味いよな」
「……解、る!?」
「お前の言ってること? あぁ、解るぞ……って!?」
短い黒髪。無口ワンコ書記の、小首を傾げながらの片言台詞を即座に解読したことで、腰にしがみつかれ。
「スゴいね、まぁちゃん……俺は、会計の高良沙黄。ねぇ、今夜俺とイイコトしない?」
「するか! そう言うのは、惚れた相手とするモンだっ」
「……じゃあ、君が俺のこと好きになればいいよね?」
明るい茶髪と軽い口調。チャラ男会計の夜のお誘いをキッパリと跳ね退けて、逆にやる気を出させ。
一連の快進撃を眺めていた会長が、面白そうに唇の端を上げて真白に近づいた。
「気に入った。俺様は、会長の最上紅河だ」
「オレは……ぅんっ!?」
そして会長は、胸倉を掴むように真白を立たせると、生徒達の前でその唇を塞いだ。
……あぁ、こいつも副会長と同じ変質者か。いや、王道的にはバ会長だな。
「何しやがるっ!」
そんな会長の鳩尾に、真白は容赦のない拳を叩き込み――食堂を飛び出して行った真白に、今まで以上の罵声が飛び交う中、完食した俺はこっそりと後を追った。
