夢はきっと全部青春でできている

 ウチらの星を見下せがバズったことを知ったのは文化祭が終わって2週間過ぎた頃だった。
 そのせいって言ったらあれだけど、ウチはしばらく和の動画と自分の動画を作り続けた。

「おい、ヘボ格ゲーマー、次の大会、さすがに勝つんじゃろうな」

 いつものパソコン室。後輩が頑張って課題制作に励む中、ガチャガチャとレバーレスコントローラーを叩く和は顔を上げた。

「任せな。最近は安定して高ランクのプレイヤーに勝てるようになってる」
「つってもアプデで弱体化したんでしょ? 変えんの? キャラ」
「好きで面白いからやってる。私のスタンスが合わないってなったらクビにされるだけだって」
「んじゃ、クビになったら――」
「また二人で、ゲーム実況動画から、だな」
「……まあ、それも悪くないけどね」
「あ、二人ともこっちにいたんだ。桜夏ちゃん、何か手伝おうか?」

 写真部の活動が落ち着いて、動画編集にも興味を持ち始めた千景は最近よくウチの編集を手伝ってくれている。
 ちょっと変わったことと言えば、合間に千景は、ウチが目指している大学の赤本を持っているところ、かな。
 結局和と栞も、ウチが行く大学へ、仮じゃけど進路を決定したはず。

 目指すべき道が、皆ゆっくりとだが決まり始めている。

「おー、だいじょぶだいじょぶ。勉強しなー」
「そっか……あ、あと、これありがと。大事にするね」

 見せられたのは、ウチが撮ったぶれっぶれの写真だった。
 今見てもどうして一瞬を切り取るのがこんなに難しいの買って首をかしげたくなる。

「後輩ちゃんに撮ってもらえばよかったなぁ」
「ううん。桜夏ちゃんが私のために撮ってくれたから、私の一生の宝物なんだよ」
「いやいやいや、じゃあ今度カメラ教えてよ。ちゃんと撮る」
「いいよ。私も、ギター教えてほしいし」

 星を見下せ、は、ドラム、ギター、ベースが正式の編成として採用。
 まさかのキーボードがギターにスイッチする構成だった。
 ちなみにボーカルはそのまま千景と栞にして、ウチは横で高みからリードギターとして音楽を叩きつける形にした。
 どんな形でも、どんなに不格好でも、未完成でええんじゃ。
 完成された音楽なんて、それこそ誰かがもう演奏しとるんじゃけ。
 三人で次の和の動画をどうするか話していると、扉が開いた。
 ゆっくりと、茫然とした様子の栞が入って来た。

 また、何か悪い事でも起きたのかと思ったら、あいつは開口一番、短く言った。

「受かった……漫画原作だけど……小説家じゃないけど、連載、始まる」

 らしくなく言葉足らずなところが、本人の驚きを如実に表しているようだった。

「ぬえ!? は、え?」
「良かったじゃん! 漫画の方がぶっちゃけ読みやすいし」
「おめでとう! 栞ちゃん!」
「あ、ありがとう。自分でも、分からないけど……ありがとう」

 はしゃぐウチらと、信じられないって顔の栞。感情が全くちぐはぐで、本当にバンド以外何も合わないウチらなのに。
 何でここにいるか不思議じゃ。

「よっしゃ、んじゃ、景気づけに新曲作ろうぜ! ウチらの夢を叫ぶ四曲目!」
「いいな、それ」
「うん! もちろん、歌詞は栞ちゃんが書いてね」
「うん……もちろんよ」

 ぞろぞろと、他にやるべきことや今やってることを忘れて、ウチらは視聴覚室へ走った。
 結局最後まで、これがウチの夢ですって言えるものは見つけられんかった。
 じゃけどたぶん、それでいいんだって思う。

 夢はきっと全部青春でできていると思うけ。

 この思い出の積み重ねが、後々夢じゃったって心から言えるようになるんだろうって、思う。
 視聴覚室に着くなり、新しい曲のイメージを作るために、とりあえず曲を弾いてイメージを固める。

 ここまで歩んだ、ウチらのこれから。

 夢と目標を構成する青春の切り取り編集を、皆で!

「ワン、ツー!」