ものすごく久しぶりに四人で集まる機会があって、私たちは視聴覚室でバンド練習を行うことになった。
千景も夢に向かって歩き出したことで、今まで以上に撮影に行っていて忙しかったせいだ。
和は別に相変わらず。最近はチームの練習ハウスに出入りしていてそこで刺激をもらっているらしい。ちなみに加入後は一勝もしていないガチ雑魚プレイヤーなのでそろそろ頑張ってほしい。
そして、栞だ。
前に渡した曲に歌詞を乗せた、完成した状態の音源を再生すると言って皆を集めた。
スマホから私の曲と、AI音声をミックスした状態の新曲が流れた。
夢へ歩み出す前の、困り果てた人の背中を押す。
誰かの成功なんて関係ない、自分の夢を叫んでろ。
現実事実正しさなんて誰かに代わりに叫ばせろ。
そんな感じで、最初から最後まで一貫して、誰かの正しさは誰かが勝手に叫ぶから、自分は自分のことだけ叫んで前へ進めって、応援してるのか何なのか分からない歌詞。
ただ、不思議と言いたいことはわかる。要は、自分を信じろっていう言葉。
曲が終わった後、皆口々に感想を述べる。
「ええじゃないか」
「そうだね。めっちゃ私らっぽい」
「うんうん、ここのリリックいいね。誰かが叫べ? これがタイトルにもなってるのかな。いいね」
私たちFRAMEの二曲目「誰かが叫べ」はめちゃめちゃウチらっぽい、良い曲だった。
どうなるか不安だったけど、やっぱこいつの文字は最高だ。
いつだって私が予想した物以上のリリックを刻んでくれる。
皆が満足げに早速練習をしようと位置に着こうとした時、栞は「あの!」と、珍しく大きな声で全員を見た。
顔は真っ赤で、手は体の前でぎゅっと結んでいた。
「私、あの……ごめんなさい。自分の夢が上手くいかなくて、二人のプロ入りっていう話を聞いて、すごく嫉妬した。皆の隣にいていいのかって思ってしまった。もう小説なんか書かないって言ってしまった。でも歌詞を書いてみんなが私の言葉を届けてくれるってイメージしてたら、すごく楽しかった。自分も、皆と一緒に弾きたいと思った。だから……その、ごめんな、さい」
という、栞の精一杯を、まるで空気の読めない和は大爆笑で一蹴した。
「なにそれ、私知らんし。ていうか、私これでも音楽も結構本気でやってるからさ、そんな歌詞書けないし、小説家目指すって真っ直ぐ夢を見てた栞がめっちゃカッコ良くて、中途半端な自分が嫌だったよ」
こういう時、和は強い。
だってこいつ、どんな時でも絶対に嘘はつかないし、真っ直ぐ当たってくれるから。
自分がしんどい時、しんどいって言えないから距離を取ったりするところからも、今、和が言ったことがすべて真実だと如実に語っている。
「ていうか、別にバンド辞めるみたいな話はしてなくね? 私ら、音楽性が全然違わない変なバンドだし。栞が夢を諦めるのは普通に止めるけど、バンドは別でしょ」
そう。
私たちはそんなことで栞を嫌いになったりはしない。
この言葉は、かつて私が皆に教わった、大切な宝物だった。
「私も変われた。最近、考え方を変えたのは栞ちゃんのお陰だし、私、この歌詞のファンだよ?」
「そうそう。ウチら全員、栞の歌詞のファンなんだから。ってかお前、勝手に抜けさせねえよ? こんな才能他にいないし」
「そうだよー、栞ちゃん、悩んでたならちゃんと言ってよ。そっちの方が嫌で悲しいよ」
「わかる。ていうかそういう時、皆、桜夏に吐き出してるの何なん? 私も含めてだけど」
「桜夏ちゃん、ずかずか方言で叫ぶからこっちの防御が間に合わないんじゃないかな」
「止めて! 私は標準語美少女、方言なんて使ってない!」
「だからいいじゃん別に、可愛いし、私は好きだよ、桜夏の方言」
「いやだからさ!」
騒ぐ私たちのすぐ横で、栞は泣きながら、笑っていた。
感情のリミッターが外れた時、栞は悲しい時も楽しい時も、涙を流す。
今はさすがの私でも、ていうか、誰が見ても分かる。嬉しいから、楽しいから、泣いている。
「栞ってさ、私らの中で一番クールっぽいのに、めっちゃ泣くよね」
「桜夏、今度感動系の動物動画見せてやるからな。人の涙を茶化すな」
「え、ガチ無理。世界からティッシュ消してしまうから」
「ありがとう、みんな……私をバンドにいれてくれて……私、もう、諦めない」
全員で、栞を抱きしめて、千景が何故かわんわん泣いて、練習どころじゃなくなった。
なくなったけど、それでいい。
私らはそうやって、誰かの夢の途中で偶然交錯した、バンドだから。
「こっちこそ、バンドに入ってくれてありがとう。ウチらLM部は、ウチらの音楽を完成させるまではずっと一緒じゃ」
「じゃあ、ずっと未完成でいいかもな。ずっと完成しなかったら、ずっと進化し続けるんだろ?」
「……ウチらもいつかは卒業しちゃうからな、まあ、今の内って感じで」
「そうだね。合わせよっか」
明日のことは分からない。
今は、ようやく完成した未完成の二曲目を、皆で弾くとしよう。
千景も夢に向かって歩き出したことで、今まで以上に撮影に行っていて忙しかったせいだ。
和は別に相変わらず。最近はチームの練習ハウスに出入りしていてそこで刺激をもらっているらしい。ちなみに加入後は一勝もしていないガチ雑魚プレイヤーなのでそろそろ頑張ってほしい。
そして、栞だ。
前に渡した曲に歌詞を乗せた、完成した状態の音源を再生すると言って皆を集めた。
スマホから私の曲と、AI音声をミックスした状態の新曲が流れた。
夢へ歩み出す前の、困り果てた人の背中を押す。
誰かの成功なんて関係ない、自分の夢を叫んでろ。
現実事実正しさなんて誰かに代わりに叫ばせろ。
そんな感じで、最初から最後まで一貫して、誰かの正しさは誰かが勝手に叫ぶから、自分は自分のことだけ叫んで前へ進めって、応援してるのか何なのか分からない歌詞。
ただ、不思議と言いたいことはわかる。要は、自分を信じろっていう言葉。
曲が終わった後、皆口々に感想を述べる。
「ええじゃないか」
「そうだね。めっちゃ私らっぽい」
「うんうん、ここのリリックいいね。誰かが叫べ? これがタイトルにもなってるのかな。いいね」
私たちFRAMEの二曲目「誰かが叫べ」はめちゃめちゃウチらっぽい、良い曲だった。
どうなるか不安だったけど、やっぱこいつの文字は最高だ。
いつだって私が予想した物以上のリリックを刻んでくれる。
皆が満足げに早速練習をしようと位置に着こうとした時、栞は「あの!」と、珍しく大きな声で全員を見た。
顔は真っ赤で、手は体の前でぎゅっと結んでいた。
「私、あの……ごめんなさい。自分の夢が上手くいかなくて、二人のプロ入りっていう話を聞いて、すごく嫉妬した。皆の隣にいていいのかって思ってしまった。もう小説なんか書かないって言ってしまった。でも歌詞を書いてみんなが私の言葉を届けてくれるってイメージしてたら、すごく楽しかった。自分も、皆と一緒に弾きたいと思った。だから……その、ごめんな、さい」
という、栞の精一杯を、まるで空気の読めない和は大爆笑で一蹴した。
「なにそれ、私知らんし。ていうか、私これでも音楽も結構本気でやってるからさ、そんな歌詞書けないし、小説家目指すって真っ直ぐ夢を見てた栞がめっちゃカッコ良くて、中途半端な自分が嫌だったよ」
こういう時、和は強い。
だってこいつ、どんな時でも絶対に嘘はつかないし、真っ直ぐ当たってくれるから。
自分がしんどい時、しんどいって言えないから距離を取ったりするところからも、今、和が言ったことがすべて真実だと如実に語っている。
「ていうか、別にバンド辞めるみたいな話はしてなくね? 私ら、音楽性が全然違わない変なバンドだし。栞が夢を諦めるのは普通に止めるけど、バンドは別でしょ」
そう。
私たちはそんなことで栞を嫌いになったりはしない。
この言葉は、かつて私が皆に教わった、大切な宝物だった。
「私も変われた。最近、考え方を変えたのは栞ちゃんのお陰だし、私、この歌詞のファンだよ?」
「そうそう。ウチら全員、栞の歌詞のファンなんだから。ってかお前、勝手に抜けさせねえよ? こんな才能他にいないし」
「そうだよー、栞ちゃん、悩んでたならちゃんと言ってよ。そっちの方が嫌で悲しいよ」
「わかる。ていうかそういう時、皆、桜夏に吐き出してるの何なん? 私も含めてだけど」
「桜夏ちゃん、ずかずか方言で叫ぶからこっちの防御が間に合わないんじゃないかな」
「止めて! 私は標準語美少女、方言なんて使ってない!」
「だからいいじゃん別に、可愛いし、私は好きだよ、桜夏の方言」
「いやだからさ!」
騒ぐ私たちのすぐ横で、栞は泣きながら、笑っていた。
感情のリミッターが外れた時、栞は悲しい時も楽しい時も、涙を流す。
今はさすがの私でも、ていうか、誰が見ても分かる。嬉しいから、楽しいから、泣いている。
「栞ってさ、私らの中で一番クールっぽいのに、めっちゃ泣くよね」
「桜夏、今度感動系の動物動画見せてやるからな。人の涙を茶化すな」
「え、ガチ無理。世界からティッシュ消してしまうから」
「ありがとう、みんな……私をバンドにいれてくれて……私、もう、諦めない」
全員で、栞を抱きしめて、千景が何故かわんわん泣いて、練習どころじゃなくなった。
なくなったけど、それでいい。
私らはそうやって、誰かの夢の途中で偶然交錯した、バンドだから。
「こっちこそ、バンドに入ってくれてありがとう。ウチらLM部は、ウチらの音楽を完成させるまではずっと一緒じゃ」
「じゃあ、ずっと未完成でいいかもな。ずっと完成しなかったら、ずっと進化し続けるんだろ?」
「……ウチらもいつかは卒業しちゃうからな、まあ、今の内って感じで」
「そうだね。合わせよっか」
明日のことは分からない。
今は、ようやく完成した未完成の二曲目を、皆で弾くとしよう。
