「はい、和ちゃん。これが一応録画ね。ごめん、忙しそうで渡し辛くて……和ちゃんにも止められてたから。あと、一応栄養ドリンク」
と、申し訳なさそうな千景の顔に私も申し訳なくなってしまった。
パソコン室では相変わらず、後輩たちが作業に入っているから、適当に後ろの席を案内すると、栞も少し間を置いてやって来た。ベースを担いでいるところがすっかり様になっている。
大学に進んでも背負ってそうな、そんな感じがする。
なんだか本当に、私だけ取り残されたみたいだ。
「ここ、座らせてもらっても? それと、そこのカフェでテイクアウトしてきた珈琲」
二人がくれた差し入れの袋をガサガサと机の上にまとめながら久しぶりに話すことに感動していた。うわ、友達と話したの、いつ振りだろう。三日とか?
「ありがと。編集部が部活で使用申請出してるのここら辺だから好きにしちゃって」
「すっかりディレクターね。やっぱり将来はそちらに進んだ方が良いのかもしれないわね」
「冗談。めちゃめちゃきついよ今」
「……でもその道で食べていけるなら、この時間は絶対後で生きるわ。死なない程度にしっかり頑張ったらいいと思うし、和は馬鹿でもクズじゃないから分かってくれるわよ」
「そうだよ。だから悪いんだよ。和は分かってくれる。それってあいつが、私に遠慮して自分のやりたいことが出来ないってことじゃん」
「そもそもだけれど、なんで彼女はあなたに動画編集を頼んだのかしら」
「え? 自分じゃできないから、でしょ。トライアウト用の動画とか、ええと、バズる動画、見つけてもらう動画、みたいな」
栞と千景は顔を見合わせて、何か納得したような表情を見せた。
また、私だけが何もわかっていないみたいで酷く落ち着かなかった。
「ふたりで初めて、今のLM部があるのは知ってる。LM部が無かったら、私たちってたぶん、こんなに一緒にいなかったし。でも、だったらちょっとおかしいことがあるの」
「おかしいこと?」
「彼女、別にプロを目指しているとは思えないのよね」
「は? なんで。あいつめっちゃ頑張ってるよ。楽器もゲームも、あんな一生懸命に」
「そう。だからそれは私たちでも分からないわ。必死でやってるはずなのに、これが夢だって気持ちが見えてこないの」
「元々、なれたらなりたい、くらいだったよね? だとしたら頑張りすぎだと思うし、大会も全部出てるってことはやる気は絶対にあると思うんだけどさ」
二人は傍から見ていて何か違和感を覚えた、ということらしかった。
でも私からすれば、そう言われればそうだね、程度の違和感しかない。和はずっと楽しそうだし、私がプロにすると言った時、笑ってくれた。
だから私は、当然のように一緒に和のやりたいことをしていると思ってた、のに。
分からない。自分一人しかいなかった道に色んな人がぽつりぽつりと表れて。ずっと前を歩いてる和にくっついて行っているはずだったのに、今はもう、何も見えない。
栞と千景は何も言えない私を特に咎めるつもりもなく、ゆっくりと椅子から立ち上がった。
「編集。一週間私たちも手伝う」
「うん。これまでお手伝いしてたから、ある程度分かる」
「いやそれはさすがに――」
そこまで迷惑はかけられない。
そう言おうとした私のおでこを指で弾き、栞は椅子に手をついて屈む。
美人が目の前に来て、さすがに女の私でもドキドキしてしまった。
「あなたが同じ状況ならこっちがなんて思ってようと関係なく助けるでしょ」
「え、私、もしかしてクソ迷惑だった?」
「ちっ」
「え、舌打ち!?」
「私もうこの陰キャと話したくないから、千景、説明してあげて」
「え、オーバーキル……」
「皆、そうやって踏み込んできてくれる桜夏ちゃんに助けられたってことだよ。誰かを助けるのに、自分が助けられることが苦手過ぎてちょっと、アレだよね」
「やめて! 陰キャって言いたいんでしょ!? もうたくさんです! 分かった、でも、ディレクションはまた違うからちゃんと覚えてよ。その間に私は今回の戦いを見るから。右脳で見るから左脳に話しかけて」
「任せて。私たちのリーダーは私たちが助けるから」
「とっととやりましょう。別に暇じゃないから」
と、申し訳なさそうな千景の顔に私も申し訳なくなってしまった。
パソコン室では相変わらず、後輩たちが作業に入っているから、適当に後ろの席を案内すると、栞も少し間を置いてやって来た。ベースを担いでいるところがすっかり様になっている。
大学に進んでも背負ってそうな、そんな感じがする。
なんだか本当に、私だけ取り残されたみたいだ。
「ここ、座らせてもらっても? それと、そこのカフェでテイクアウトしてきた珈琲」
二人がくれた差し入れの袋をガサガサと机の上にまとめながら久しぶりに話すことに感動していた。うわ、友達と話したの、いつ振りだろう。三日とか?
「ありがと。編集部が部活で使用申請出してるのここら辺だから好きにしちゃって」
「すっかりディレクターね。やっぱり将来はそちらに進んだ方が良いのかもしれないわね」
「冗談。めちゃめちゃきついよ今」
「……でもその道で食べていけるなら、この時間は絶対後で生きるわ。死なない程度にしっかり頑張ったらいいと思うし、和は馬鹿でもクズじゃないから分かってくれるわよ」
「そうだよ。だから悪いんだよ。和は分かってくれる。それってあいつが、私に遠慮して自分のやりたいことが出来ないってことじゃん」
「そもそもだけれど、なんで彼女はあなたに動画編集を頼んだのかしら」
「え? 自分じゃできないから、でしょ。トライアウト用の動画とか、ええと、バズる動画、見つけてもらう動画、みたいな」
栞と千景は顔を見合わせて、何か納得したような表情を見せた。
また、私だけが何もわかっていないみたいで酷く落ち着かなかった。
「ふたりで初めて、今のLM部があるのは知ってる。LM部が無かったら、私たちってたぶん、こんなに一緒にいなかったし。でも、だったらちょっとおかしいことがあるの」
「おかしいこと?」
「彼女、別にプロを目指しているとは思えないのよね」
「は? なんで。あいつめっちゃ頑張ってるよ。楽器もゲームも、あんな一生懸命に」
「そう。だからそれは私たちでも分からないわ。必死でやってるはずなのに、これが夢だって気持ちが見えてこないの」
「元々、なれたらなりたい、くらいだったよね? だとしたら頑張りすぎだと思うし、大会も全部出てるってことはやる気は絶対にあると思うんだけどさ」
二人は傍から見ていて何か違和感を覚えた、ということらしかった。
でも私からすれば、そう言われればそうだね、程度の違和感しかない。和はずっと楽しそうだし、私がプロにすると言った時、笑ってくれた。
だから私は、当然のように一緒に和のやりたいことをしていると思ってた、のに。
分からない。自分一人しかいなかった道に色んな人がぽつりぽつりと表れて。ずっと前を歩いてる和にくっついて行っているはずだったのに、今はもう、何も見えない。
栞と千景は何も言えない私を特に咎めるつもりもなく、ゆっくりと椅子から立ち上がった。
「編集。一週間私たちも手伝う」
「うん。これまでお手伝いしてたから、ある程度分かる」
「いやそれはさすがに――」
そこまで迷惑はかけられない。
そう言おうとした私のおでこを指で弾き、栞は椅子に手をついて屈む。
美人が目の前に来て、さすがに女の私でもドキドキしてしまった。
「あなたが同じ状況ならこっちがなんて思ってようと関係なく助けるでしょ」
「え、私、もしかしてクソ迷惑だった?」
「ちっ」
「え、舌打ち!?」
「私もうこの陰キャと話したくないから、千景、説明してあげて」
「え、オーバーキル……」
「皆、そうやって踏み込んできてくれる桜夏ちゃんに助けられたってことだよ。誰かを助けるのに、自分が助けられることが苦手過ぎてちょっと、アレだよね」
「やめて! 陰キャって言いたいんでしょ!? もうたくさんです! 分かった、でも、ディレクションはまた違うからちゃんと覚えてよ。その間に私は今回の戦いを見るから。右脳で見るから左脳に話しかけて」
「任せて。私たちのリーダーは私たちが助けるから」
「とっととやりましょう。別に暇じゃないから」
