月曜日、私たちはいつも通り、朝に話して、昼に話して、放課後、一緒に帰る約束をしました。
その日の放課後は、しとしとと、静かな雨が降っていました。
「結構ちゃんと降ってるね……」
「朝は晴れてたのにな……」
廊下の窓から外を見て、言いました。
「俺ね、家の中から見る分には、土砂降りの雨の方が好きなんだけど」
「ああ」
「最近はこういう雨も好きかもなって、思ってるんだ」
私がそう言うと、悠介くんは、意外そうに小さく目を見開いて「そうなのか」と言いました。
「うん、なんか、落ち着く」
「へぇ……」
昇降口で、傘立てからビニール傘を取り出しました。朝、予報を見て、持ってきておいたものでした。
ですが悠介くんは、カバンの中を漁り、すっと、宙を見ました。
「忘れた……」
「忘れた?」
「傘忘れた。普通の傘も、折りたたみ傘もねえ……」
「あー……」
それなら、あれをやるしかないでしょう。
「一緒の傘入って帰ろう」
私は傘を、少し持ち上げました。
悠介くんは顔を赤くして、「お前がいいなら……」と、小さく言いました。
二人で並んで、道路を歩きます。いつもの下校よりずっと近い、肩と肩が触れる距離。
「そういえば悠介くん」
「ん?」
「最初にちゃんと話したのも、雨の日だったね」
「ああ……そうだな」
「あの時ね、本当は傘、忘れてなかったんだ」
「えっ」
「雨の中、傘ささないで歩いてみたら、どうなるのかなって思って……」
「はぁ……」
「で、結局よくわからなかった」
私は肩をすくめて、笑いました。自分でも、なぜこの話をしたのか、分かりませんでした。ちょっとした小話のつもりだったのか、あるいは……。
しかし悠介くんは突然、
「じゃあ、今度は二人でやってみるか……?」
と、訳のわからないことを言い出しました。
「え……?」
「いや……二人でやったら、なんか違うかなって……」
なんですかそれ……。
でも、それって、なんだか最高に魅力的な気がします。
「いいかも」
「本当か?」
「やろう」
「……!」
私がそう言うと、悠介くんはパッと顔を輝かせ……、
「ねぇ、周りに誰もいない?」
「多分、いないと思う……」
私たちはキョロキョロと念入りにあたりを見回すと……、
「じゃ、閉じちゃうよ!」
目を見合わせて、バッと傘を閉じました!
「おお、冷てえ」
「本当だ!」
ひんやりとした雨が、しっとりと私たちを濡らしていきます!
私は両手を広げて、「見て、映画みたい!」と、一回転しました。悠介くんは私の真似をするように両手を広げると、「気持ちいいな、これ」と、まるで世紀の大発見をしたように言いました。
前髪がぺったりと額に張り付き、私は勢いよく掻き上げました。そうすると、悠介くんも同じように前髪を掻き上げたので、
「ねぇ悠介くん、イケメン度上がってるよ」
と言ってあげました。
「イケメン度?」
「今の仕草、すごくカッコよかったってこと」
「それなら律も、めちゃくちゃ色っぽいぞ」
「なにそれ!」
久々に、お腹の底から笑いが出てきました。
「ねぇ、ちょっと走ってみない?」
「いいぞ。あとスキップもやってみねえか?」
「スキップ……!?」
悠介くん、なんてことを言うのでしょう!
「いいよ、やろう!」
そうして私たちは、制服をぐしゃぐしゃにしながら、雨の中を駆けていきました。
雨が、私たちを祝福している。
今は、俺たちだけの世界!
「これ、楽しいな……!」
「そうだね!」
道路には、二人分の足音が、響き渡っていました。
END
その日の放課後は、しとしとと、静かな雨が降っていました。
「結構ちゃんと降ってるね……」
「朝は晴れてたのにな……」
廊下の窓から外を見て、言いました。
「俺ね、家の中から見る分には、土砂降りの雨の方が好きなんだけど」
「ああ」
「最近はこういう雨も好きかもなって、思ってるんだ」
私がそう言うと、悠介くんは、意外そうに小さく目を見開いて「そうなのか」と言いました。
「うん、なんか、落ち着く」
「へぇ……」
昇降口で、傘立てからビニール傘を取り出しました。朝、予報を見て、持ってきておいたものでした。
ですが悠介くんは、カバンの中を漁り、すっと、宙を見ました。
「忘れた……」
「忘れた?」
「傘忘れた。普通の傘も、折りたたみ傘もねえ……」
「あー……」
それなら、あれをやるしかないでしょう。
「一緒の傘入って帰ろう」
私は傘を、少し持ち上げました。
悠介くんは顔を赤くして、「お前がいいなら……」と、小さく言いました。
二人で並んで、道路を歩きます。いつもの下校よりずっと近い、肩と肩が触れる距離。
「そういえば悠介くん」
「ん?」
「最初にちゃんと話したのも、雨の日だったね」
「ああ……そうだな」
「あの時ね、本当は傘、忘れてなかったんだ」
「えっ」
「雨の中、傘ささないで歩いてみたら、どうなるのかなって思って……」
「はぁ……」
「で、結局よくわからなかった」
私は肩をすくめて、笑いました。自分でも、なぜこの話をしたのか、分かりませんでした。ちょっとした小話のつもりだったのか、あるいは……。
しかし悠介くんは突然、
「じゃあ、今度は二人でやってみるか……?」
と、訳のわからないことを言い出しました。
「え……?」
「いや……二人でやったら、なんか違うかなって……」
なんですかそれ……。
でも、それって、なんだか最高に魅力的な気がします。
「いいかも」
「本当か?」
「やろう」
「……!」
私がそう言うと、悠介くんはパッと顔を輝かせ……、
「ねぇ、周りに誰もいない?」
「多分、いないと思う……」
私たちはキョロキョロと念入りにあたりを見回すと……、
「じゃ、閉じちゃうよ!」
目を見合わせて、バッと傘を閉じました!
「おお、冷てえ」
「本当だ!」
ひんやりとした雨が、しっとりと私たちを濡らしていきます!
私は両手を広げて、「見て、映画みたい!」と、一回転しました。悠介くんは私の真似をするように両手を広げると、「気持ちいいな、これ」と、まるで世紀の大発見をしたように言いました。
前髪がぺったりと額に張り付き、私は勢いよく掻き上げました。そうすると、悠介くんも同じように前髪を掻き上げたので、
「ねぇ悠介くん、イケメン度上がってるよ」
と言ってあげました。
「イケメン度?」
「今の仕草、すごくカッコよかったってこと」
「それなら律も、めちゃくちゃ色っぽいぞ」
「なにそれ!」
久々に、お腹の底から笑いが出てきました。
「ねぇ、ちょっと走ってみない?」
「いいぞ。あとスキップもやってみねえか?」
「スキップ……!?」
悠介くん、なんてことを言うのでしょう!
「いいよ、やろう!」
そうして私たちは、制服をぐしゃぐしゃにしながら、雨の中を駆けていきました。
雨が、私たちを祝福している。
今は、俺たちだけの世界!
「これ、楽しいな……!」
「そうだね!」
道路には、二人分の足音が、響き渡っていました。
END
