恋人のやり方がわからない

 水族館を出る頃には、もう空は赤くなり始めていました。
 潮風が頬を撫でていきます。
「……」
「……」
「……なあ、ちょっと海見ていかないか」
「……うん」
 私たちは海辺まで歩き、並んで座りました。
 波の音が、静かに寄っては、引いていきます。
「……今日、楽しかったね」
「……ああ」
 本当に、楽しかったな。
 終わっちゃうんだ、今日。
 ……。
 急に、どうしようもなくセンチメンタルで、どうしようもなく寂しくなり、私は意味もなく、カバンを握りしめました。
「……」
「……律?」
「悠介くん……?」
「いや、なんか、しんどそうな顔してるから……」
「ああ……」
 バレていたのですね。
「今日すごく楽しかったから……これで終わっちゃうんだなって思って……」
「……」
 今日の私は、いやに正直です。
 昔から、こんな感じだったでしょうか。
 ……どうだっただろう。
 波の音が、響きます。
「……また、会えるだろ」
「……え?」
「明日も、明後日も、会えるだろ」
「……」
「ていうか、リスト、まだ全然達成してねえし」
 ……。
 リスト。
「あは、そうだったね」
 あの長いリスト!
 急に、センチメンタルになっていたのが、可笑しくなってきました。
「ねぇ、次はどこ行く?」
「リストには遊園地って書いてあったぞ」
「よく覚えてるね」
「そりゃ覚えるだろ……」
「そう?」
「お前が作ったんだから……」
「……」
 悠介くんは時々、突然、弱いところに触れてきます。
「……ありがと」
「どういたしまして……?」
 それも、無自覚に。
「ねぇ、もう少しだけ、ここにいてもいい……?」
「ああ」
 波の音が、響きます。空にはほんのりと薄く、白い三日月が浮かんでいました。