恋人のやり方がわからない

 土曜日の昼、私はベッドに寝転がって、スマホを凝視していました。
 どうやら世間には、デートというものがあるらしい。
 今朝のテレビの特集でやっているのを見て、ああそういえば、そんなものがあったなと思ったのです。
 なら、悠介くんとやってみたら……。
 ……。
 いや、いいのかそんなことをして?
 ……。
 いや冷静に考えて、ダメな理由の方がないはず……多分。
 コンビニに行くだけで、あんなに楽しかった。
 公園にいるだけでも。
 それならもっと遠くて変なところに行って、もっと変で、新しくて、可愛い悠介くんを見られたら。
 もっと、一緒の時間を過ごせたら。
 ……なんていうのは、望みすぎでしょうか。
 ……。
 ……考えるだけなら、いいですよね?
 私は「デート」「おすすめスポット」と検索し、出てくるページを次々と見漁りました。
「いやまだ、デートするなんて決まったわけじゃないけど……」
 そうです、そもそも悠介くんと、デートの話など少しもしていません。
 でも、もし、二人で外に行って、手を繋いで、一緒に何かを見たり、一緒に何かを食べられたり、何か楽しいことができたら……。
 ……。
「悠介くん、何が好きなんだろう……」
 あの人、好きな食べ物すらわからないんだよな。
「水族館あたりが無難かな……」
 水族館。かなりいい気がする。
「遊園地とかは……ちょっと、俺が恥ずかしいかな」
 悠介くんがはしゃぐところは、見てみたい気もするけれど……。
「プラネタリウム……そういうのもあるのか」
 これも結構、ありじゃない?
「美術館、神社、大きめの公園……」
 俺は好きだけど……悠介くんは?
「『おすすめのランチは!』……急にランチ出てきた」
 でもまあ、そうだよね。ランチ、大事だよね。
 うん……。
 などと、悩んでいたら、いつの間にかA4三枚の長大な資料が出来上がっていました。
「行きたいところの候補とメリットを並べただけなのに……!?」
 ……。
 とりあえず、悠介くんに見てもらいましょうか。悠介くんもまあまあ変な人ですから、このくらいで引いたりはしないでしょう。
「あ、その前に、悠介くんがデート行きたいか確認しないと……」
 つい私の欲望が先走ってしまいました。そもそも悠介くんがデートに行きたいのか……それが一番重要でした。ですがラインを開いた瞬間、気がつきました。
 これ、本当に聞いてもいいのかな。
 いきなりデートだなんて、引かれないかな。
 ……最初は考えるだけなんて、言っていたのに。
「……」
 でも悠介くんなら、受け止めてくれるかな。
 いや、それは期待しすぎなのかな。
 ……。
 私はアプリを閉じました。代わりに絵用の青いノートを開きました。しかし集中できず、今度は文庫本を開きました。ですがそれもダメで、次は物理の参考書を開きました。けれどどうにも落ち着かず、身体がソワソワして、何もかもが手につかなくて……。
 私はラインを開いて、打ち込みました。
 よければ今度、デートしない?
 ……と。
 それから深呼吸して、いいよね、いいよね、誤字はないよね、本当におかしくないよねと、何度も読み返して、七回ほど読み返したところで、えいやっと送信ボタンを押しました。
 ……。
 送ってから、「デートしない?」ではなく「おでかけしない?」の方がよかったかもしれないと後悔しましたが、私が送信取り消しするよりも前に既読がつき、
「いいよ、俺もしたい」
 と返ってきました。