恋人のやり方がわからない

 放課後になると、私は急いで荷物をまとめて、悠介くんの元へ行きました。別に急ぐ理由もなかったのですが、なんとなく、そうしていました。
「ゆっ、悠介くん! 俺、もう帰れるよ!」
「俺も今準備できたとこ。行こうぜ」
 そうして私たちは、並んで教室を出ました。廊下では「今日どうする?」という話をし、悠介くんの提案で公園に行くことになりました。悠介くんの家も一瞬だけ候補に挙がったのですが、悠介くん曰く「俺の家にはまだ風邪菌がいるかもしれねえ」とのことで、却下されました。さらに公園に着くまでには、りっちゃん先生になった経緯をもう一度説明し、もう一度、二人で首を傾げました。
「ねぇ、またアイス買おうよ」
 公園に着いて、私は自販機を指差しました。
「いいな」
 悠介くんは小さく笑いました。
「今度は俺が、悠介くんと同じの買ってみようかな」
「じゃあ俺が先に選ぶのか……」
「選ぶの苦手?」
「好きな味ねえからな……この前のチョコはうまかったけど」
 そう言うと、悠介くんは顎に手を当てて宙を見てしまいました。私はちょっとだけ面白くなり、
「じゃあ俺が選んであげようか」
 と、冗談のつもりで言ってみたのですが、悠介くんは、
「いや、自分で頑張る」
 と言い、
「頑張る……!?」
 と、私の方が逆に目をパチパチさせることになりました。
 自販機前に立った悠介くんは、やはり、妙に堂々としていました。
 そうして悠介くんは、結局一分ほど迷った末に、「まあ、これでいいか」とぶどう味を選んだのですが(前にもぶどうを選んでいませんでしたか……?)、私が同じくぶどう味のボタンを押すと、なぜか満足げな顔をしていました。
「どっか座りたいね」
「ああ……」
 そう、見回すと、二つ並んだブランコが空いているのが目に入りました。
 そういえば前に、高校生のカップルが隣同士のブランコに座ってるの、見たことがあったな……。
 ……。
「悠介くん、あそこに座らない?」
 私はブランコを指差して言いました。
「今は子供があんまりいないし、俺たちが使っても大丈夫だと思うんだけど……」
「お前、そこ心配するんだな」
「あ、いや、一応……」
「いいと思う。座ろうぜ」
 そう言って悠介くんはズンズンと歩いていくと、「小学生ぶりだな」と呟きながら、すっと座りました。続いて私も座ると、腰掛けた瞬間、ブランコからギッと大きな音が鳴りました。
「なんで悠介くん、そんなに静かに座れるの……?」
「なんでだろうな」
 本人は首を傾げていました。
「まあ食おうぜ」
「うん」
 頷いて、アイスを一口口に含むと……普通に、甘い味がしました。普通のアイスです。でも、美味しいものは美味しい。
「……悠介くん、これ、美味しいね」
 私が横を向いてそう言うと、悠介くんは「ああ」と頷きました。
 心なしか、さっきよりも満足げな顔をしている……!
 急に、胸のあたりがほかほかとしてきて、私は意味もなく小さくブランコを漕ぎました。悠介くんは可愛いし、アイスは美味しいし、ブランコは楽しい。チラと隣を見ると、悠介くんはさっきよりももっともっと満足げな顔をしており……逆に恥ずかしくなって、私はブランコを止め、コホンと一つ咳払いをしました。