恋人のやり方がわからない

 この種の羞恥は、どう扱えばいいのでしょう。私には、永遠の謎に思えます。

 一人で弁当を食べながら、私は眉間にぎゅっと力を入れていました。こうでもしていなければ、恥ずかしさでおかしくなってしまいそうだったのです。
 視線はただ一点、弁当だけに集中し、決して周りは見ませんでした。
 今はブロッコリーに集中するのです。そう、ブロッコリー、ただ一つに……。
「ねぇ、成瀬くん! ……うわ、眉間すご」
「!!」
 突然、前方から女子生徒の声が飛んできました。危うくむせそうになりましたが、なんとか大事故になる前に持ちこたえ……私は見上げました。
 そこにいたのは四人の女子グループでした。それも、クラスで最も目立っているグループでした。今朝、目が合ったグループとは違う生徒たちです。
 私は精一杯の社交用笑顔を作り、言いました。
「……何か用かな?」
「んー? 話しかけてみたくなっただけだけど」
 女子グループの一人はそう言うと、周りに向かって「ね〜」と言いました。何が「ね〜」なのでしょう。
 私は引き攣った笑顔で続けました。
「俺、別に面白い話できないよ……?」
「でも五十嵐くんといる時、めっちゃ面白いよね」
 そう言うと再びその女子は、周りに向かって「ね〜」と言いました。
 五十嵐くんといる時めっちゃ面白い? 待ってください、今の言葉はどういうことですか。
 しかし彼女たちは私の困惑など待ってはくれません。
「話しかけようってみんなで言ってたんだよね」
「なんか五十嵐くんと喋ってるとこ見て、意外と面白い人なのかな〜って」
「そ〜、だから仲良くなれたらいいよね〜って」
「普通にイケメンだし」
「はぁ……」
 本当に、はぁとしか言えません。普段の私のペースとあまりに違います。意味を理解するので精一杯です。笑顔は保っていますし、平静も装っていますが、普通に、ちゃんと、パニックです。
「いつも五十嵐くんといるから、話しかけらんなくて!」
「昔は一人だったけど……」
「昔は喋んなかったでしょ!」
 それはそうです。
「ね〜、りっちゃんって呼んでいい?」
 急ですね。
「いいけど……」
 勢いで了承してしまいました。
「やった〜!」
 それから四人は何かを一方的に喋った後、「りっちゃんまたね〜」と去っていきました。
 ……。
 りっちゃんになってしまった……。
 私はぼんやりした頭のまま、残りの弁当を食べました。