恋人のやり方がわからない

「はよ、成瀬」
「おはよう、五十嵐くん」
 翌朝五十嵐くんは、私が机に着いた瞬間にこちらに来ると、でかい雲があったと報告して去っていきました。
 お弁当も一緒に食べました。放課後も一緒に帰りました。家に行くこともありました。
 それが、何度か続きました。
 慣れてきた……のでしょうか。まだ、よくわからない。部屋の中で口呼吸をするのはやめましたが、それでも、よくわからない。一緒に過ごすなんてのは、付き合う前からやっていたことのはずなのですが。
 ……。
 付き合ってから、七回目の帰り道のことでした。
「あのさ、成瀬」
「なに?」
「夜にライン送るのとか……アリか?」
「ライン……」
 ラインって、あれですか。あの、メッセージアプリですか。
 親としか使っていないのですが……。
 ああ、あと、クラスのグループラインにも入っていました……。
「いいよ」
「じゃあ、今日送ってみるな」
 そう言って五十嵐くんは、前を向きました。
 ライン一つにも、許可を取るのか……。
 いやでも、急に送ったら気持ち悪いから、許可は取った方がいいのか……。
 ……わからない。親としかやりとりしない自分には、何が普通なのか、わからない。
 でもまあ、いちいち確認してくれるのは、かなりありがたい。
「なあ、今日も家来る?」
 家……。
「……行く」
 私は内心ドキドキしながら答えました。行ったところで、また手を繋ぐだけで終わるのでしょうが。
 でもそれが、それだけのことが、私にとってどれだけ重大なことなのか……私は多分、誰にも言えません。
 ……私とは、こんなにも耐性のない人間だったのでしょうか。