恋人のやり方がわからない

 翌朝、私の瞼は微妙に重くなっていました。
 ですが登校して、ぼんやりと、なんの気なしに教室を見たら……、
「……!?」
 窓際の席に、五十嵐くんがいました。
「いっ、五十嵐く……」
 私が固まっていると五十嵐くんがこちらを向き、しっかりと目が合ってしまいました。
「あ……」
 そこから、何秒、その場に立ちすくんでいたでしょうか。
 背後から女子生徒の「あの」という声が聞こえたところで、初めて、自分がドアを塞いでいたことに気がつきました。
「あっ」
 今のは恥ずかしい。
「ごめん」
 私は小さく謝ると、ぎこちなく歩いて、顔を真っ赤にさせたまま席につきました。恥ずかしい。今のは本当に恥ずかしい。
 教科書を準備するフリをしながら羞恥に震えていると、突然、
「成瀬」
 と、上から声が降ってきました。
「っ!」
 びっ……くりした……。
「五十嵐くん……」
 そろそろと見上げると、五十嵐くんはいつも通りの顔をしていました。
 ……いや、ほんの少しだけ顔が赤い?
 ……。
 私がついまじまじと見ていると五十嵐くんは、「あんま見んなよ……」と、今度ははっきりと耳まで赤くさせて目を逸らしました。
「あっ、ごめん……」
「いや、いい……」
「……」
「……」
 お互い照れて、下を向いてしまいました。
 ……。
 付き合うとは、こういうことなのか……!?
 私は下を向いたまま、意味もなく指をいじりながら「五十嵐くん、今日は早いね」と言いました。五十嵐くんは「なんか、なんとなく」と、妙にもごもごした声で返してきました。
 なんとなくで、そう登校時間が早くなるものですか。
「……」
「……」
 また、沈黙です。
 でも、いつもの沈黙とは明らかに違います。
 明らかに、ソワソワしている。
 お互いに。
 どうしよう……。
 ……。
「……成瀬」
「なにっ!」
「わ、びっくりした……」
「あっ……」
 つい、大声が出てしまった。
「ごめん、なんか緊張……しちゃって……」
「いや、俺も……」
「……」
「……」
 ……なんですか、これ……。
 私はまた俯きました。
 上が、見られない。五十嵐くんの顔が、見られない。
 でも、だからといって、どうすれば。
 私が必死に床のを凝視していると、
「成瀬、今日、一緒に飯食わね……?」
 と、突然、びっくりするくらいに素朴なお誘いが降ってきました。
 びっくりするくらいに、控えめな声で……。
「飯……?」
 つい見上げると、五十嵐くんは真っ赤な顔のまま、強く両手を握っていました。
 あ、かわいい……。
「……いいよ」
 出てきた私の声は、微妙に震えていました。
「じゃあ、また昼……」
 五十嵐くんはそう言うと、すっと背中を向け去っていきました。
「あっ、待っ……」
 言いかけましたが、その声は届きませんでした。だからといって追いかけるのも気恥ずかしく、私は机の上に突っ伏しました。
 なんで。
 なんで……!
 なんで付き合おうと言っただけで、こんなに!