恋人のやり方がわからない

 その夜、私はあの青いノートを開いていました。
 今日だけは、勉強なんかどうでもいい。
 とにかく完成させて、すぐにでも、五十嵐くんにあげたい。
 あの顔を、もう一回見たい。
 私は、今日だけはシャーペンではなく画材屋で買った鉛筆を出して、サラサラと線を重ねていきました。ノートの端の、五十嵐くんが選んでくれた雲。その形を、崩さないようにしながら。
 描いて、描いて……。
「あ……もう十一時」
 描き始めて、もう三時間経っている。
「いや、もう少しで完成だよ」
 そう自分に言い聞かせて、私はもう一度、机に向かいました。再び描いて、描いて、描いて、描いて……一段落ついたところで時計を見たら、ちょうど十二時をまわったところでした。
「……」
 もう寝る時間だ。
「……」
 でも、これなら、見せても大丈夫かな。
「……」
 いや、もっと直した方がいいだろうか。でも、それより、早くあげたい。
 早く、五十嵐くんの喜んでくれる顔を見たい。
「渡そう、これ、明日渡そう……!」
 私はノートを丁寧に破ってクリアファイルに入れると、そのまま電気を消して、布団にもぐり込みました。寝不足なんかですべてがダメになるなんてことないように……ちゃんとした顔で、ちゃんとした体調で、渡せるように。なのに、妙に落ち着かない。でも、寝ないと。寝ないと。
 本当に、寝ないと……!