翌朝私は、文庫本を開きながら、チラチラと教室のドアを見ていました。
認めます、私は、五十嵐くんが気になります。
昔考えていた「見ないようにする」作戦……あれはもう、無理でした。できないことを示す証拠が、積み上がりすぎてしまいました。
気になる奴って何。
気になる奴って……。
文庫本とドアと時計を順に見て……ホームルームギリギリの時間に、五十嵐くんは登校してきました。
あっ。
こっち見た。
目が、合ってしまった。
五十嵐くんは小さく目を見開くとそのままほんの少し目を合わせ……さっと前を向いてしまいました。
あっ、あっち見ちゃった。
……。
ホームルーム後の休み時間も、私の身体は落ち着いてくれませんでした。
今日は五十嵐くん、雲の報告、来ないのかな。
蛾でもいいけど。
期待だけは一丁前に膨らんでいくのに……待てども待てども、五十嵐くんが来る気配はありませんでした。
いつもは来るのに。
……。
三時間目の授業中も、私の身体は落ち着いてくれませんでした。上の空で、黒板を見ていました。
そんな、時でした。
「お前ら、これからの時代は受け身じゃなくて、自分から積極的に……」
教師が突然、人生の説教をしてきました。
受け身じゃなくて、積極的に……。
……。
自分から行った方が、いいのかな?
……。
……そうだ。
雲の絵を描いて、見せに行こう。ちょっとだけ描いてみて、相談したいという体で行ってみよう。そうすれば、同級生としての会話としても自然だろう。きっと。多分。
……教師の説教が、役に立ってしまった。
気づけば私はノートの端に雲の絵を描いていました。私の好きな真夏の入道雲。完成はさせないで、中途半端に描いて、「これ、どう思う?」と聞いて……いや、五十嵐くんにその質問は答えづらいかもしれない。三つくらい描いて、一番好きな形を聞いてみるのは……どうだろう。
ちょうど三つ、適当な雲が描き終わったところで、授業の終わりを告げるチャイムが鳴りました。
そうして休み時間、早速五十嵐くんに見せに行こうと思った時でした。
……。
やっぱり、変じゃないよね?
いや、どうなんだ?
……。
……でもさっきは、見せに行こうと、はっきり思っていたじゃないか。
……行こう、見せに行こう。
行こう。
そう決意した途端、急に心臓がドキドキしてきました。いや、何をドキドキしているんだ。同級生に絵を見せに行くだけじゃないか。しかもその同級生、ちゃんと、絵を見せてくれて嬉しいと言ってくれた人じゃないか。何をそう、緊張しているんだ。
……。
……。
……。
次のチャイムが、鳴ってしまいました。
認めます、私は、五十嵐くんが気になります。
昔考えていた「見ないようにする」作戦……あれはもう、無理でした。できないことを示す証拠が、積み上がりすぎてしまいました。
気になる奴って何。
気になる奴って……。
文庫本とドアと時計を順に見て……ホームルームギリギリの時間に、五十嵐くんは登校してきました。
あっ。
こっち見た。
目が、合ってしまった。
五十嵐くんは小さく目を見開くとそのままほんの少し目を合わせ……さっと前を向いてしまいました。
あっ、あっち見ちゃった。
……。
ホームルーム後の休み時間も、私の身体は落ち着いてくれませんでした。
今日は五十嵐くん、雲の報告、来ないのかな。
蛾でもいいけど。
期待だけは一丁前に膨らんでいくのに……待てども待てども、五十嵐くんが来る気配はありませんでした。
いつもは来るのに。
……。
三時間目の授業中も、私の身体は落ち着いてくれませんでした。上の空で、黒板を見ていました。
そんな、時でした。
「お前ら、これからの時代は受け身じゃなくて、自分から積極的に……」
教師が突然、人生の説教をしてきました。
受け身じゃなくて、積極的に……。
……。
自分から行った方が、いいのかな?
……。
……そうだ。
雲の絵を描いて、見せに行こう。ちょっとだけ描いてみて、相談したいという体で行ってみよう。そうすれば、同級生としての会話としても自然だろう。きっと。多分。
……教師の説教が、役に立ってしまった。
気づけば私はノートの端に雲の絵を描いていました。私の好きな真夏の入道雲。完成はさせないで、中途半端に描いて、「これ、どう思う?」と聞いて……いや、五十嵐くんにその質問は答えづらいかもしれない。三つくらい描いて、一番好きな形を聞いてみるのは……どうだろう。
ちょうど三つ、適当な雲が描き終わったところで、授業の終わりを告げるチャイムが鳴りました。
そうして休み時間、早速五十嵐くんに見せに行こうと思った時でした。
……。
やっぱり、変じゃないよね?
いや、どうなんだ?
……。
……でもさっきは、見せに行こうと、はっきり思っていたじゃないか。
……行こう、見せに行こう。
行こう。
そう決意した途端、急に心臓がドキドキしてきました。いや、何をドキドキしているんだ。同級生に絵を見せに行くだけじゃないか。しかもその同級生、ちゃんと、絵を見せてくれて嬉しいと言ってくれた人じゃないか。何をそう、緊張しているんだ。
……。
……。
……。
次のチャイムが、鳴ってしまいました。
