恋人のやり方がわからない

「成瀬、今日も一緒に帰んね?」
 今日も、五十嵐くんは誘ってきました。
「……うん、いいよ」
 嫌ではありません。私は素直に誘いに乗りました。
 今日も私たちは、並んで昇降口を出ました。
「……」
「……」
「……今日寒くね」
「寒いね」
 会話はそれだけでした。
「じゃあ、またな」
「うん、またね」
 T字路で手を振ると、五十嵐くんは背中を向けて去っていきました。
 行っちゃう……。
 妙にその背中から、目が離せませんでした。

・ ・ ・

「成瀬、今日も一緒に帰んね?」
「うん、いいよ」
 今日も私たちは、並んで昇降口を出ました。これも、最近では日常になりつつありました。
 相変わらず、今日も無言ですが……、
 ……。
 あ、コンビニを過ぎた。
 いつもならコンビニなど素通りするのに……今日はやけに気になりました。
 あ、小学校を過ぎた。
 二個目のコンビニを、過ぎてしまった。
 ……。
 ……なんだこれ。
 本当に、いやに、通り過ぎていく建物が気になりました。
 前まで、こんなもの、気になっていたでしょうか。
「……」
「……」
 相変わらず、無言のままです。
 あっ、コインランドリーを過ぎてしまった。
 このままでは、T字路に着いてしまう。
 もう道が見えてきてしまった。
 もう、T字路に……。
 T字路に。
「じゃあ、俺こっちだから」
 ……。
「……成瀬?」
「う、うん、また明日……」
 そう言って私は、いつも通りに手を振りました。
 そうして手を下ろして、背中をじっと、見送りました。
「……」
 いや、早く自分も帰りなよ。
 わかってるよ、でも身体が動かないんだよ。
 なんでだよ。
 知らないよ。
 早く帰りなよ。
 だから知らないって……。