恋人のやり方がわからない

 さて、一睡もしなかった翌日ですが、意外にも身体はピンピンとしていました。
 寝不足とは、私が思っていたよりも、大したことではなかったのでしょうか。
 私はあのノートをカバンに入れて、ルンルン気分で登校しました。スキップもしたいし、鼻歌も歌いたい。一つ絵が完成したのだから、そりゃあ上機嫌にもなるものでしょう。寝不足によるテンションの狂いもあるかもしれませんが、それはまあ、いいのです。
 私は席につき、いつものように文庫本を開くと、ろくに文字も追わずにチラチラと教室のドアを確認していました。別に、五十嵐くんを探しているわけではありません。本当に、五十嵐くんを探しているわけでは……。
「あっ、五十嵐くん!」
 五十嵐くんが入ってきた瞬間、私は席を立っていました。五十嵐くんは小さく目を見開くと、「成瀬?」と小さく聞き返してきました。
「五十嵐くん、俺ね……」
 そう言った瞬間、ホームルームのチャイムが鳴りました。そうでした、五十嵐くんはホームルームギリギリ勢だったのでした。
「成瀬、なんか用か?」
 チャイムが鳴ってもなお、五十嵐くんは聞いてきました。いや、あれは、そんなにすぐに終われる用事ではありません!
「あっ、いや、後でいいよ」
 私が慌ててそう言うと、五十嵐くんは「そうか」と言って、自分の席に向かっていきました。それから退屈なホームルームが始まり……なんだかひどい吐き気と頭痛がしてきて、結局私は、保健室に行くことになりました。寝不足とは、大したことないものではなかったのですか。寝不足の人間など、世の中にいくらでもいるではありませんか。なぜ私は、たった一日の徹夜でこうもへばっているのですか。
 世の中とは、なぜ、こうも理不尽なのですか。
 ……。