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なんだかんだ言いながら面倒見がよくて、優しい。困っている人を放っておけない。俺に兄弟はいないけど、こんな人が兄だったらいいなと思う。そんな国領先輩のことを気づけば目で追うようになっていた。
──というか、サークル勧誘のために声をかけられたあの日から、初めて会ったあの瞬間からもう国領先輩に惹かれ初めていたのかもしれない。一目惚れっていうとなんだかむずがゆいけど、ほかにしっくりくる言葉もない。だからきっと一目惚れだったんだと思う。
サークルの活動日や、部室で顔を見れるだけでも嬉しかった。挨拶したり、世間話みたいな短い会話ができるだけでも充分だった。
国領先輩はすごく人気がある。それも男女問わず、先輩後輩問わずだ。先輩の周りにはたくさんの人が集まってくるし、色んな人が先輩に話しかける。俺が入る隙間なんかないくらいに。
最初は会えるだけで満足だったのに、すぐにそれだけじゃ物足りなくなってきた。先輩ともっと話したい。先輩にもっと構ってほしい。先輩の時間を独り占めしたい。ただのサークルの後輩じゃなくて、特別な後輩になりたい。気づいたらもう欲望まみれになっていた。
──そうして思いついた方法が、困っているふりをして先輩に頼る、だった。
先週たまたま部室で課題をやっていたときに、キャビネットの中の本が目に留まった。少し難しそうだけど参考になるかもしれないと思い、キャビネットのダイヤル錠を開けようとして、ふと手を止めた。
キャビネットの鍵の番号を忘れてしまったといえば、先輩はきっと助けてくれる。自然な流れで先輩と話すことができる。
結局、その場ではキャビネットの鍵は開けずに帰り、家でシミュレーションをして、今日に臨んだのだった。
「……」
大学の門を出て、夕暮れの道を駅に向かって歩いていく。リュックの中にはキャビネットから借りた例の本が入っているので、少し重い。歩きながらショルダーベルトを握って背負い直す。
シミュレーション通りの展開になったのに、不思議とあまり嬉しくはない。いつもよりもたくさん国領先輩と話ができたし、近づくことができたのに。
理由はわかってる。もやもやするのは嘘をついたからだ。
面倒見がよくて、困っている人を放っておけない国領先輩の長所を、俺は自分の欲望のために都合よく利用した。
「……嘘ついて騙すとか最低だな」
呟いた声は車の音に掻き消されてしまったけど、自分の耳にはちゃんと届いていた。
なんだかんだ言いながら面倒見がよくて、優しい。困っている人を放っておけない。俺に兄弟はいないけど、こんな人が兄だったらいいなと思う。そんな国領先輩のことを気づけば目で追うようになっていた。
──というか、サークル勧誘のために声をかけられたあの日から、初めて会ったあの瞬間からもう国領先輩に惹かれ初めていたのかもしれない。一目惚れっていうとなんだかむずがゆいけど、ほかにしっくりくる言葉もない。だからきっと一目惚れだったんだと思う。
サークルの活動日や、部室で顔を見れるだけでも嬉しかった。挨拶したり、世間話みたいな短い会話ができるだけでも充分だった。
国領先輩はすごく人気がある。それも男女問わず、先輩後輩問わずだ。先輩の周りにはたくさんの人が集まってくるし、色んな人が先輩に話しかける。俺が入る隙間なんかないくらいに。
最初は会えるだけで満足だったのに、すぐにそれだけじゃ物足りなくなってきた。先輩ともっと話したい。先輩にもっと構ってほしい。先輩の時間を独り占めしたい。ただのサークルの後輩じゃなくて、特別な後輩になりたい。気づいたらもう欲望まみれになっていた。
──そうして思いついた方法が、困っているふりをして先輩に頼る、だった。
先週たまたま部室で課題をやっていたときに、キャビネットの中の本が目に留まった。少し難しそうだけど参考になるかもしれないと思い、キャビネットのダイヤル錠を開けようとして、ふと手を止めた。
キャビネットの鍵の番号を忘れてしまったといえば、先輩はきっと助けてくれる。自然な流れで先輩と話すことができる。
結局、その場ではキャビネットの鍵は開けずに帰り、家でシミュレーションをして、今日に臨んだのだった。
「……」
大学の門を出て、夕暮れの道を駅に向かって歩いていく。リュックの中にはキャビネットから借りた例の本が入っているので、少し重い。歩きながらショルダーベルトを握って背負い直す。
シミュレーション通りの展開になったのに、不思議とあまり嬉しくはない。いつもよりもたくさん国領先輩と話ができたし、近づくことができたのに。
理由はわかってる。もやもやするのは嘘をついたからだ。
面倒見がよくて、困っている人を放っておけない国領先輩の長所を、俺は自分の欲望のために都合よく利用した。
「……嘘ついて騙すとか最低だな」
呟いた声は車の音に掻き消されてしまったけど、自分の耳にはちゃんと届いていた。


