ライアー・キャンパスライフ



 経済思想史研究会、なんていう畏まった名前をしているけど、その実態はただの飲みサークルだ。俺がそのことを知ったのは新入生歓迎会に参加した後だったけど、大学内ではいわば公然の秘密とも言えるほど割と有名な話らしい。
 入学式の日、たまたま国領先輩からサークル勧誘のチラシを受け取ったことがすべての始まりだった。
 ──俺法学部だけど、何学部?
 ──……はぁ、経済学部っす。
 ──経済学部なんだ? 経済思想史とか興味ある?
 ──え、いえ、別に……。
 ──はは、だよな。こんな名前だけど全然堅苦しいサークルじゃないし、新歓だけでも遊びに来てよ。一年は全員タダだから。
 チラシを貰いながら先輩とそんなやり取りをしたことを今でも覚えている。初対面の新入生にも気さくに説明する先輩は、三月まで高校生だった俺には随分大人びて見えた。
 一年は全員タダという言葉につられてとりあえず新歓に参加することにした俺は、結局そのまま入部届を出し、正式にサークルの一員になった。
 国領先輩が言っていた通り、経済の「け」の字もない普通の飲みサーだったし、ほかの先輩たちも皆いい人ばかりだったから。なによりも──サークルに勧誘した張本人である国領先輩に、もっと近づきたいと思うようになってしまったから。