17年前の明日、僕は空の青さを知る。



 後日。文藝部室に集まった愛と日下部、そして新部長の橘京華と旧部長の袴田零士。
 袴田がどうして平日の午後から大学にも行かずこんなところにいるのかは、推して知るべし。

「本当にやるんだね?」

 袴田の言葉に愛は無言で頷く。迷いは一切なかった。

「投稿するなら、『闇のノベリスト』ってサイトが、オススメ。まだ利用人数は少ない、けど、エロに寛容」
「なにそれ、そんなサイト聞いたこともないんだけど。俺、お前のことが時々怖いよ」
「袴田さんが甘やかしまくった結果っすよ。てか、卒業した先輩がなんで昼間っからここにいるんす」
「よし! それじゃ早速準備しよう! 阿良々木ちゃん、まずはアカウントを」
「おい」

 袴田と橘の指南を受けつつ、愛はアカウントを作成した。ペンネームは「レゾン阿良々木」。
 年齢・性別等も入力した後、いよいよリレー小説をコピペしてネットの海に解き放つ。

「推敲はしなくていいのかい?」

「はい。だって、全部が先輩の生きた証ですから。そのままの形で残したいんです」

 愛の言葉に一同は従うしかない。そもそも作者の片方がいない以上、決定権は全て愛の手のひらの上だ。

「それじゃ、いきます」

 投稿ボタンを押す。17歳の愛知賢太とその恋人を乗せた船が、大海原に漕ぎだした。

「……届くといいな。誰か一人にでも」

 日下部の言葉に、愛は「うん!」と笑顔を弾けさせた。突き抜ける青天のような、無邪気な笑顔を。

―了―