ドアの向こうからすすり泣きが聞こえる。僕の気持ちは正しく君に伝わっただろうか?
23時59分。時計の長針があと半周でてっぺんを指すという頃、急にまぶたが重くなってきた。
……どうやら、現実のほうでも時間が来たらしい。
刹那、頭の中でなにかのネジがピンッと弾け飛ぶ音がした。それと同時に、いったいこんなちっぽけな脳のどこに隠されていたのか、忘れていた記憶がブワッと蘇る。
あれはそう、17年前の明日。まるで新しい命の誕生を祝福するかのような、突き抜けんばかりの快晴だった。
赤子だった僕はその日母の腕に抱かれて外に出た瞬間、初めて、空が青いってことを学習したんだ。
赤子の仕事である泣くことさえも忘れて見惚れる僕に、母はぎこちない笑みを浮かべて、こう呼びかけていた。
「おはよう。あなたが生まれてくるのをずっと待ってたわ、賢太」
そっか。母さんはあんなこと言ってたけど、僕はちゃんと待ち望まれて生まれてきたんだね。
それさえ思い出せればもう十分だ。そんなことより、少し疲れてしまった。夜更かしはよくないし、そろそろ寝よう。重力に従い、僕はゆっくりとまぶたを下ろす。
カチッ。全ての針が真上を向いた。
はっぴーにゅーいやー。
そして。
「お誕生日おめでとう。おやすみなさい、先輩」
17歳の誕生日。最初に耳にした言葉は、僕を安らかな最期へと誘う、愛おしい声だった――。
23時59分。時計の長針があと半周でてっぺんを指すという頃、急にまぶたが重くなってきた。
……どうやら、現実のほうでも時間が来たらしい。
刹那、頭の中でなにかのネジがピンッと弾け飛ぶ音がした。それと同時に、いったいこんなちっぽけな脳のどこに隠されていたのか、忘れていた記憶がブワッと蘇る。
あれはそう、17年前の明日。まるで新しい命の誕生を祝福するかのような、突き抜けんばかりの快晴だった。
赤子だった僕はその日母の腕に抱かれて外に出た瞬間、初めて、空が青いってことを学習したんだ。
赤子の仕事である泣くことさえも忘れて見惚れる僕に、母はぎこちない笑みを浮かべて、こう呼びかけていた。
「おはよう。あなたが生まれてくるのをずっと待ってたわ、賢太」
そっか。母さんはあんなこと言ってたけど、僕はちゃんと待ち望まれて生まれてきたんだね。
それさえ思い出せればもう十分だ。そんなことより、少し疲れてしまった。夜更かしはよくないし、そろそろ寝よう。重力に従い、僕はゆっくりとまぶたを下ろす。
カチッ。全ての針が真上を向いた。
はっぴーにゅーいやー。
そして。
「お誕生日おめでとう。おやすみなさい、先輩」
17歳の誕生日。最初に耳にした言葉は、僕を安らかな最期へと誘う、愛おしい声だった――。
