17年前の明日、僕は空の青さを知る。

 12月29日。
 今日は最初で最後の、母との病院以外が目的での外出だ。

「冥土の土産に『ベンティアイス抹茶クリームフラペチーノオーツミルク変更エクストラ抹茶パウダーバニラシロップ追加シロップ多めチョコレートチップ追加チョコレートソ―ス追加キャラメルソース追加エクストラホイップ氷少なめ』が飲みたいんだ」
「ベンティ……なんですって?」

 初デートの思い出のショッピングモール、その三階の本屋に併設されたカフェへと連れて行ってもらう。もちろん、万が一にも文藝部のメンバーに出くわしたりしないよう細心の注意を払って。

 ベンティ(以下略)を飲みながら、そういえば僕らってお互い、交際していたくせに形に残るようなプレゼントをしたことがなかったなと気付く。

 でもそれでよかったのかもしれない。形見なんて遺したら、なんのために別れたのかわからないし。
 彼女には僕のことなんか綺麗さっぱり忘れて、幸せになってもらわなければならない。

 そういう意味で一番信頼できる友人の分に、彼女のことを頼む旨を記載しておくことにした。