12月26日。
玄関からもの凄い怒鳴り声が聞こえる。
「ぶっ殺す! おい、出て来いよクソ野郎! 逃げんじゃねぇ!」
母が声の主を必死になだめている。僕の最後の願いを叶えるために。申し訳ありません、お引き取り下さいと、何度も何度も。
それでも僕を呼ぶ声はやまない。
「殺す! 殺してやる! 『愛を悲しませたらぶっ殺す』って言ったよな!? 忘れたとは言わせねぇぞ!! おい! 出て来いって言ってんだろ!
……死ぬんじゃねぇよ、馬鹿野郎……っ!」
僕は必死に耳を塞いだ。そうでもしないと、どうにかなってしまいそうだったから。
やがて静寂が訪れた……と思ったら、また後から二人ほど順番にやって来ては、同じような言葉を喚き散らされた。
特にダウナーな彼女のあんな金切り声は、できれば知らないままで逝きたかった。
夜。今度こそ静かになり、やっと両手が自由になった僕はケータイでWordファイルを開き、ひたすら文字を打ち込む。否、打っては消してを繰り返す。
以前、文藝部の初品評会のとき、テスト期間中に皆の推し作品を一通り読んだうえで10万字ちょっとの小説を書いたことを思い出す。
処女作のクセに、あのときはよくスラスラと筆が進んだものだ。今はたった二、三行書くのにちんたらちんたら。
それもこれも全て、次は僕自身が書きたいものを読ませろなんて言った彼のせいだ。書きたいこと、伝えたいことが多すぎて、とてもじゃないが処理が追い付かない。
さっきとは別の理由で頭を抱えていると、一階から僕を呼ぶ声がした。いつのまにやら夕飯の時間になっていたらしい。
「今日は賢太の好きな親子丼よ……美味しくできたかわからないけれど」
「え、なんで僕が親子丼好きだって知って……」
「だってあなた、親子丼のときはいつも他のレトルトや冷食より食べるの早かったじゃない」
見ていてくれたんだ。全然気付かなかった。
「いただきます」
「ど、どうかしら。美味しい?」
「…………うん、すっごく美味しいよ」
「……明日こそ、美味しく作れるように頑張るわ」
玄関からもの凄い怒鳴り声が聞こえる。
「ぶっ殺す! おい、出て来いよクソ野郎! 逃げんじゃねぇ!」
母が声の主を必死になだめている。僕の最後の願いを叶えるために。申し訳ありません、お引き取り下さいと、何度も何度も。
それでも僕を呼ぶ声はやまない。
「殺す! 殺してやる! 『愛を悲しませたらぶっ殺す』って言ったよな!? 忘れたとは言わせねぇぞ!! おい! 出て来いって言ってんだろ!
……死ぬんじゃねぇよ、馬鹿野郎……っ!」
僕は必死に耳を塞いだ。そうでもしないと、どうにかなってしまいそうだったから。
やがて静寂が訪れた……と思ったら、また後から二人ほど順番にやって来ては、同じような言葉を喚き散らされた。
特にダウナーな彼女のあんな金切り声は、できれば知らないままで逝きたかった。
夜。今度こそ静かになり、やっと両手が自由になった僕はケータイでWordファイルを開き、ひたすら文字を打ち込む。否、打っては消してを繰り返す。
以前、文藝部の初品評会のとき、テスト期間中に皆の推し作品を一通り読んだうえで10万字ちょっとの小説を書いたことを思い出す。
処女作のクセに、あのときはよくスラスラと筆が進んだものだ。今はたった二、三行書くのにちんたらちんたら。
それもこれも全て、次は僕自身が書きたいものを読ませろなんて言った彼のせいだ。書きたいこと、伝えたいことが多すぎて、とてもじゃないが処理が追い付かない。
さっきとは別の理由で頭を抱えていると、一階から僕を呼ぶ声がした。いつのまにやら夕飯の時間になっていたらしい。
「今日は賢太の好きな親子丼よ……美味しくできたかわからないけれど」
「え、なんで僕が親子丼好きだって知って……」
「だってあなた、親子丼のときはいつも他のレトルトや冷食より食べるの早かったじゃない」
見ていてくれたんだ。全然気付かなかった。
「いただきます」
「ど、どうかしら。美味しい?」
「…………うん、すっごく美味しいよ」
「……明日こそ、美味しく作れるように頑張るわ」
