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家に帰れば追い打ちのように母が僕を責める。
「ちょっとあなた、まだ学校で阿良々木愛さんと仲良くしているそうね。関わらないよう言ったはずよ」
「うるさいな……」
「え?」
「放っておいてくれよ! 僕が誰と仲よくしようが、母さんには関係ないだろ!」
一時の感情に身を任せて怒鳴り、自室へと駆け込む。ドアを閉めると、立っていられずにその場にへたり込んでしまった。
心臓がドクドクと激しく脈打っている。母に反抗したのなんて、生まれて初めてのことだった。
「どうしよう、どうしよう……」
やってやったぞ、なんて達成感はまるでない。友人たち、特に彼女に強く拒絶され、今度は母を自ら拒絶してしまった。
冷静に考えて僕の落ち度の割合は少ない、と思う。だけどもっと上手くやれなかったのか。あんなに愛を追い詰めるようなやり方をしなくても。今思えば、途中から明らかに不満が募っている様子に気付いていたはずなのに、見て見ぬふりしてしまった。
さらにその失敗のモヤモヤを、いくら理不尽を言われているとしても、母に当たって発散する必要性はなかった。
思い出すのは、中学に入って突然、これまで友だちだった人たちが離れていった記憶。久しく忘れていたひとりぼっちが、ひたひたと忍び寄って来る。
頭上でドアをノックする音がした。
「母さん……! 僕……っ!」
「ご飯、ここに置いておくわ」
コトッと食器が床に置かれた音がする。それっきり。謝らせてももらえなかった。
とても食欲なんか起こるはずもなく。僕はフラフラと吸い寄せられるようにベッドに向かうと、制服のまま倒れ込み、枕に顔面を強く押し付けて泣いた。
目が覚めるともう二時間以上も経っていた。しかしどこかで聞いた話とは異なり、時間がなにもかも解決してくれた様子はない。
もし、これで文藝部の皆が離れていってしまったら。僕にはもう母さんしかいないのに、その母さんも……
だけどそんな心配は無用だったとすぐにわかる。ケータイ画面が光り、受信を告げていたのだ。それも複数の。
『すまなかった、愛知くん。軽々しくテーマを設定した俺の責任だ。判定も感情的だった。君はなにも悪くない。また明日、元気に部活に来てくれると嬉しい』
『今日は、反省。ごめんね』
『同じチームなのに一人にして悪かった。明日エビカツサンド奢らせろ』
力が抜けて手からケータイが滑り落ちる。気が付けばまた涙が溢れていた。
そうだ、彼らはあの程度のことで離れていくような人たちじゃない。不安が涙と一緒に頬から滑り落ち、布団に染み込んでゆく。
今回一つ、学習したことがある。
人間関係というのは相互的なもの。どちらかに全て非があるわけじゃないのなら、謝り合って、双方の間で和解点を探せばいいだけ。僕はまだまだ全然わかっていなかった。
一人一人丁寧に返信を返し、その後廊下に夕飯があることを思い出して部屋で食べた。
……最近の冷凍食品は出来がいいもので、温かくても冷めても十分美味しいのだが、近頃、毎回一品お世辞にも美味しいとは言いがたいものが混ざっている。今日はなんかよくわからない炒め物。まずくはない、けど……
「まさかな」
ひとりごちて、ゆっくりとその出来の悪さを味わった。
家に帰れば追い打ちのように母が僕を責める。
「ちょっとあなた、まだ学校で阿良々木愛さんと仲良くしているそうね。関わらないよう言ったはずよ」
「うるさいな……」
「え?」
「放っておいてくれよ! 僕が誰と仲よくしようが、母さんには関係ないだろ!」
一時の感情に身を任せて怒鳴り、自室へと駆け込む。ドアを閉めると、立っていられずにその場にへたり込んでしまった。
心臓がドクドクと激しく脈打っている。母に反抗したのなんて、生まれて初めてのことだった。
「どうしよう、どうしよう……」
やってやったぞ、なんて達成感はまるでない。友人たち、特に彼女に強く拒絶され、今度は母を自ら拒絶してしまった。
冷静に考えて僕の落ち度の割合は少ない、と思う。だけどもっと上手くやれなかったのか。あんなに愛を追い詰めるようなやり方をしなくても。今思えば、途中から明らかに不満が募っている様子に気付いていたはずなのに、見て見ぬふりしてしまった。
さらにその失敗のモヤモヤを、いくら理不尽を言われているとしても、母に当たって発散する必要性はなかった。
思い出すのは、中学に入って突然、これまで友だちだった人たちが離れていった記憶。久しく忘れていたひとりぼっちが、ひたひたと忍び寄って来る。
頭上でドアをノックする音がした。
「母さん……! 僕……っ!」
「ご飯、ここに置いておくわ」
コトッと食器が床に置かれた音がする。それっきり。謝らせてももらえなかった。
とても食欲なんか起こるはずもなく。僕はフラフラと吸い寄せられるようにベッドに向かうと、制服のまま倒れ込み、枕に顔面を強く押し付けて泣いた。
目が覚めるともう二時間以上も経っていた。しかしどこかで聞いた話とは異なり、時間がなにもかも解決してくれた様子はない。
もし、これで文藝部の皆が離れていってしまったら。僕にはもう母さんしかいないのに、その母さんも……
だけどそんな心配は無用だったとすぐにわかる。ケータイ画面が光り、受信を告げていたのだ。それも複数の。
『すまなかった、愛知くん。軽々しくテーマを設定した俺の責任だ。判定も感情的だった。君はなにも悪くない。また明日、元気に部活に来てくれると嬉しい』
『今日は、反省。ごめんね』
『同じチームなのに一人にして悪かった。明日エビカツサンド奢らせろ』
力が抜けて手からケータイが滑り落ちる。気が付けばまた涙が溢れていた。
そうだ、彼らはあの程度のことで離れていくような人たちじゃない。不安が涙と一緒に頬から滑り落ち、布団に染み込んでゆく。
今回一つ、学習したことがある。
人間関係というのは相互的なもの。どちらかに全て非があるわけじゃないのなら、謝り合って、双方の間で和解点を探せばいいだけ。僕はまだまだ全然わかっていなかった。
一人一人丁寧に返信を返し、その後廊下に夕飯があることを思い出して部屋で食べた。
……最近の冷凍食品は出来がいいもので、温かくても冷めても十分美味しいのだが、近頃、毎回一品お世辞にも美味しいとは言いがたいものが混ざっている。今日はなんかよくわからない炒め物。まずくはない、けど……
「まさかな」
ひとりごちて、ゆっくりとその出来の悪さを味わった。
