17年前の明日、僕は空の青さを知る。

 焼きそばパンとオレンジジュースとともに、お届け物を持って1―4へ急ぐ。
 途中、見覚えのある顔の二人とともに愛は歩いてきた。初めて会ったときと同じなら三人で購買に向かっているのだろう。その中の一人だけに食べ物を渡すなんてちょっとイヤな感じだが、日下部に託されてしまった以上しかたない。
 それに僕は愛のか、彼氏だし。堂々としていて問題ないはずだ。

「あれ? 愛知先輩? どうしてこっちに」
「いや、そのーあのー、これ……」
「どう見ても愛にプレゼントでしょ。イヤだわー見せつけちゃって」
「先輩、よければ愛ごと差し上げますよ。私たちも今日は彼氏でも誘おっか」
「そうしよ。ってことで愛知先輩、愛をよろしくお願いしまーす」
「ちょっ、やめりんよ勝手に……ああもう、行っちゃった」
「愛さん、えっと」
「……中庭じゃ目立つから部室行こ。たぶん空いとるだら」

 そうして流れで一緒にお昼を食べることになったのだが、一学期のことを思い返して今さらながらに実感する。
 愛たちと出会ったあの日から、学校そのものがどことなく、僕にとって生きやすい場所に変わってきていることに。

「なにニヤけとるん? ……エッチ」
「よくわからないけど、誤解だよ」

 そう、今のは完全に誤解というかむしろエッチなのは愛のほうなのだ。それが証拠に午後の授業は、唇に微かに残るエビの味が気になって全く集中できなかった。



「というわけで今日はディベートをやりたいと思うのだが、」

 どういうわけか知らないが本日の部活は、あるテーマについて肯定派と否定派にランダムに分かれて討論を交わす「ディベート」を行うとのこと。
 袴田先輩曰く、即興で論理的に話を組み立てたり思考力を鍛える練習として、昨年度から取り入れているらしい。

 すごいな、まるで文藝部みたいだ。

「えー……その前に、一つ……」

 いつもハキハキした袴田先輩が、珍しく言い淀む。

「俺はたまに部室でお昼を食べることがあるんだが、」

 ギクッと約二名の肩が震える。

「その、なんだ……盛り上がっちゃう気持ちはわかるが、部室ではほどほどに、な? 誰が見てるかわからないから」
「そう。私見るのに夢中で、お昼、食べ損ねた」

 購買で買ったと思しき激辛お菓子をポリポリつまみながら、橘がこともなげに言う。日下部が呆れたようにハァと息を吐く。
 そして僕らは、ただただ顔を赤らめて小さくなるほかなかった。