17年前の明日、僕は空の青さを知る。




 休み明け最初の活動、今日は今年度第二回目の品評会。
 テーマは「花火」。すでに皆の作品は共同フォルダのほうに入っていたので拝読済みである。

 袴田先輩の「花火師になるため田舎の家を継ぐ主人公とシンガーを目指して上京する彼女が、それぞれの夢のために別れを決断するヒューマンドラマ」は普通にエモかったし、橘の「たこ焼き屋台の店主が大量のたこ焼きのうち一個だけに毒を忍ばせ、狙った人物をピンポイントで殺す本格ミステリ」も得意ジャンルだけあってさすがの出来だった。
 日下部の、「線香花火をお尻に挟みながら火をつけて、落とした人から順に殺されるデスゲーム」もどうしたお前って感じだが、まぁ面白かった。

 問題は愛の小説だ。もう、思い出すだけで顔から火を吹いて爆発しそうである。僕自身が花火になってしまう。

 いつもの倍ほどもゆっくりした足取りで部室のドアの前に辿り着くと、すでに中ではどんちゃん騒ぎが始まっている気配がした。

「お疲れ様で「おっ! 王子様が来たぞー!」すって、袴田先輩!?」
「愛知くん、意外と、やり手」
「な、なんの話ですか?」
「ほう。しらを切るっていうのかい。よし! 橘、音読攻撃だ!」
「協力してほしい。できれば、これからもずっと……ちょっと、読んでるこっちが、照れる」

 騒ぎの最中、愛は机に突っ伏していた。二の腕と顔の隙間から、赤く染まった耳だけがぴょこんと飛び出している。
 可愛い……とか言ってる場合じゃない。

 そうなのである。愛が書いてきた花火小説はまさかの「ノンフィクション」。花火大会の日から後日のデートに至るまで、それはもう克明に記されていた。
 愛がゆっくり顔を上げると僕と目が合う。ボンッと音がしたと錯覚するほど真っ赤になる愛。

「違うんです先輩! まさかバレるなんて……」

 いやバレるだろ。愛沙と賢哉なんて名前にしたら。賢人しかり、彼女には名付けのセンスはないようだ。

「敬語はダメだよ阿良々木ちゃん…………愛知くん、寂しくなっちゃうから」
「……っ! もう、皆して意地悪しないでください!」

 ジタバタと悶える愛。可愛い。もういいや、今はこの癒し空間に思いっきり浸ろう。
 と、そのとき彼がいないことに気付く。

「日下部くんは?」