17年前の明日、僕は空の青さを知る。

「この後まだ時間ある? 観たい映画があるじゃんね」

 そういえば、このモールは別棟に映画館もあったんだっけ。うんと応えると、愛はケータイをちょちょいと操作して、画面をこちらに向けてくる。

「この映画なんだけど、ね?」

 反射でブッと息を拭き出す。タイトルが甘い、甘すぎる! キャラメルマキアートよりも! 観なくても、めちゃくちゃ恥ずかしい映画であることが容易に想像できる。

「えっと、その」
「観よ?」
「は、はい」

 観念した僕は、顔の熱を冷ますように残ったドリンクを一気に飲み干した。女神に小首を傾げられて、断れる人類などこの世にいないのだ。
 愛は「まだ時間あるんだから、ゆっくりしりんよ」とけたけた笑っていた。

 さらに一時間ほど時間を潰した後、映画館に移動するため愛は読みかけの本を購入し、僕は10冊全て覚えてから購入せず元の位置に返却した。

「本屋の敵」

 愛が僕の脇腹を肘で小突く。面白い返し一つ思い浮かばず、苦し紛れに「いつもごめんなさい」と謝ると、「私は本屋じゃありません」と言われた。
 はぁ? 可愛いんだが。好き。

 映画館に着いたら思いのほか時間がギリギリで、僕がフード担当、愛がチケット担当で分担することにした。
「なにかしょっぱいもの!」という橘風要望に応え、ポップコーンの塩味と適当なドリンクを購入して愛を待つ。

「お待たせ!」
「待ってないよ。僕も今着いたとこ」
「だろうね」

 どうでもいいことで笑い合って、カップル席のチケットを係員に……へ? カップル席??

「ここしかいい席空いてなかったの!!」

 言い訳するように愛は言う。確かに、館内の真ん中あたりの席はだいたい埋まっているようだけど……いいのだろうか? カップルでもないのにカップル席を利用して、なにかの法律に抵触したりしないのかな?

「いいじゃん、だって……」

 その先の言葉はもごもごと濁されてしまった。だって、なんだろう。もうそういう関係みたいなもんだし……なんて自惚れきるにはまだ「資料」が足りない。