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併設カフェで飲み物を頼んだ僕たちは二人用の席に向かい合って座り、購入前の本をじっくりと堪能する。
ちなみに僕は「キャラメルマキアート」なる定番と思しき商品の一番小さいサイズにしたのだが、愛は謎の呪文を唱えることで、より巨大で豪華なドリンクをゲットしていた。
「あのさ、さっきの『ベンティアイス抹茶クリームフラペチーノオーツミルク変更エクストラ抹茶パウダーバニラシロップ追加シロップ多めチョコレートチップ追加チョコレートソ―ス追加キャラメルソース追加エクストラホイップ氷少なめ』ってなに?」
「私の好きなカスタム。覚えてくれて嬉しい」
よくわからないが覚えるのは得意分野だ。ドリンクを一口すすり、僕は参考書コーナーから持ってきた本の山の中から小説の基礎に関する書物をパラパラとめくる。
「そんなスピードでめくってもなにも頭に入らんだら」
「冒頭から暗唱しようか?」
「ううん、大丈夫。ドリンクのカスタムもだけど、そういえば愛知先輩は『そう』だったね。たまに忘れちゃうや」
あははと朗らかに笑う愛からは、他の人のように自分と違う存在を気味悪がる素振りを感じない。だから僕も、愛の前では常に気を張らずいられるのだと思う。今日は張っているけど。
でもそれは「カッコつけたい」とか「よく見られたい」とか、そういう誰でも経験するだろう類のもので、彼女といるときの僕はきっと、どこにでもいる普通の男子高校生だ。
それが心地よくて、温かくて、どうしようもないほど胸がいっぱいになる。
「愛、さんはなにを読んでるの?」
「なんかよさげな恋愛小説を適当に選んでみた」
「へぇ」と応えた後、僕はタイミング的に不自然じゃないことを内心で確認し、尋ねてみることにした。
「どうして愛さんは、恋愛感情がわからないのに恋愛小説を書きたいと思ったの?」
これは純粋にかねてからの疑問でもあるし、今は軽いジャブの意味合いも含む。愛はうーんと可愛らしく唇に指を当てながら答える。
「わからなかったからこそ、書いてみたかったんだと思う。皆と違って恋愛を知らない自分が、なんだか欠陥品みたいに思えちゃって。だから書いてみたら少しはわかるんじゃないかなって」
「……そっか」
想像していたより反応しづらい話で、次の言葉に詰まってしまった。僕にはその気持ちが痛いほどわかる。人と違う自分を出来損ないのように思ってしまう感覚。
彼女が「同じ匂い」と言った理由が、今頃になって少し理解できた。
「でもね、」と愛は続ける。
「最近は自分も普通の女の子だったんだなって思うようになったじゃんね。……っていう言葉を引き出したかったんだら?」
顔が火のように熱を帯びる。愛は僕の姑息な作戦など全てお見通しだったようだ。
誤魔化すように、キャラメルマキアートをまた一口飲む。なんだよこれ。甘ったるくてしかたがない。
「逆に聞きたいんだけど、愛知先輩は書きたいジャンル見つかった?」
「いや、特に。でも次の品評会ではSFでも書いてみようかなとは思ってる」
「テーマが花火のSF? すごく面白そう! たとえば……花火は宇宙に向けての光信号で、宇宙人と交友してるとか!」
「いいね。あとはー、そうだな、実は世界中の花火大会は全て意思を獲得したAIが取り仕切っていて、花火が放つ催眠光線で人類を支配しようとしていると、か……」
出かかった言葉に急ブレーキがかかる。愛が冗談でも笑えないと言いたげに眉間に皺を寄せていたからだ。
確かに、宇宙人との交友と比べて設定がダークすぎたかもしれない。侵略とか征服で心躍るのは男だけのようだ。
「ねぇ先輩、」
話を変えるように、愛が口を開く。
併設カフェで飲み物を頼んだ僕たちは二人用の席に向かい合って座り、購入前の本をじっくりと堪能する。
ちなみに僕は「キャラメルマキアート」なる定番と思しき商品の一番小さいサイズにしたのだが、愛は謎の呪文を唱えることで、より巨大で豪華なドリンクをゲットしていた。
「あのさ、さっきの『ベンティアイス抹茶クリームフラペチーノオーツミルク変更エクストラ抹茶パウダーバニラシロップ追加シロップ多めチョコレートチップ追加チョコレートソ―ス追加キャラメルソース追加エクストラホイップ氷少なめ』ってなに?」
「私の好きなカスタム。覚えてくれて嬉しい」
よくわからないが覚えるのは得意分野だ。ドリンクを一口すすり、僕は参考書コーナーから持ってきた本の山の中から小説の基礎に関する書物をパラパラとめくる。
「そんなスピードでめくってもなにも頭に入らんだら」
「冒頭から暗唱しようか?」
「ううん、大丈夫。ドリンクのカスタムもだけど、そういえば愛知先輩は『そう』だったね。たまに忘れちゃうや」
あははと朗らかに笑う愛からは、他の人のように自分と違う存在を気味悪がる素振りを感じない。だから僕も、愛の前では常に気を張らずいられるのだと思う。今日は張っているけど。
でもそれは「カッコつけたい」とか「よく見られたい」とか、そういう誰でも経験するだろう類のもので、彼女といるときの僕はきっと、どこにでもいる普通の男子高校生だ。
それが心地よくて、温かくて、どうしようもないほど胸がいっぱいになる。
「愛、さんはなにを読んでるの?」
「なんかよさげな恋愛小説を適当に選んでみた」
「へぇ」と応えた後、僕はタイミング的に不自然じゃないことを内心で確認し、尋ねてみることにした。
「どうして愛さんは、恋愛感情がわからないのに恋愛小説を書きたいと思ったの?」
これは純粋にかねてからの疑問でもあるし、今は軽いジャブの意味合いも含む。愛はうーんと可愛らしく唇に指を当てながら答える。
「わからなかったからこそ、書いてみたかったんだと思う。皆と違って恋愛を知らない自分が、なんだか欠陥品みたいに思えちゃって。だから書いてみたら少しはわかるんじゃないかなって」
「……そっか」
想像していたより反応しづらい話で、次の言葉に詰まってしまった。僕にはその気持ちが痛いほどわかる。人と違う自分を出来損ないのように思ってしまう感覚。
彼女が「同じ匂い」と言った理由が、今頃になって少し理解できた。
「でもね、」と愛は続ける。
「最近は自分も普通の女の子だったんだなって思うようになったじゃんね。……っていう言葉を引き出したかったんだら?」
顔が火のように熱を帯びる。愛は僕の姑息な作戦など全てお見通しだったようだ。
誤魔化すように、キャラメルマキアートをまた一口飲む。なんだよこれ。甘ったるくてしかたがない。
「逆に聞きたいんだけど、愛知先輩は書きたいジャンル見つかった?」
「いや、特に。でも次の品評会ではSFでも書いてみようかなとは思ってる」
「テーマが花火のSF? すごく面白そう! たとえば……花火は宇宙に向けての光信号で、宇宙人と交友してるとか!」
「いいね。あとはー、そうだな、実は世界中の花火大会は全て意思を獲得したAIが取り仕切っていて、花火が放つ催眠光線で人類を支配しようとしていると、か……」
出かかった言葉に急ブレーキがかかる。愛が冗談でも笑えないと言いたげに眉間に皺を寄せていたからだ。
確かに、宇宙人との交友と比べて設定がダークすぎたかもしれない。侵略とか征服で心躍るのは男だけのようだ。
「ねぇ先輩、」
話を変えるように、愛が口を開く。
