綺麗に空となったパック類を前に、袴田先輩が頭を掻く。
「あのー、あれだな。五人で食べるにはちょっと足りなかったな」
潔く自主しよう。大半を食い散らした犯人は、口数が激減した僕だ。
「つーかしょっぱいものばかりじゃないっすか。甘いもんも食いたいっすよ」
「文句言うなら、日下部くん、買ってきて」
「……じゃあ今度は、僕と日下部くんで買い出し行ってきます」
「そうか? 悪いな。じゃあ俺はベビーカステラ一つ」
「私、唐揚げ。できるだけ、辛いやつ」
「知らねぇよ。愛は? なにか食いたいもんある?」
「……」
「あ、阿良々木愛さん?」
「へっ!? な、なんですか?」
「いや、その、阿良々木愛さんもなにか食べる、かな? チョコバナナとか」
「!? ば、バナナはちょっとまだ早いと思いますっ……!!」
「? そ、そう……」
それから追加で買ってきたご飯を五人で食べながらぎこちない会話をしているうちに、ようやく花火大会開催の時間がやってきた。
これからは花火を見ているだけでいい。変な気疲れから解放される。
僕はすっかり後悔していた。浮かれて勘違いして調子に乗って、痛々しいポエムを送り付けた末路がこれだ。
こんな気持ちになるぐらいなら最初から恋なんてしなければ……って、それは違うよな。
短い間だったけれど、恋はとても素敵な夢を僕に見せてくれた。
感情なんてなければ確かに楽かもしれない。でも、苦しさと引き換えにそれ以上のなにかを手に入れられることもある。もちろん、ただ失うだけということも。
そしてその繰り返しが「生きる」ということなんだと、僕は今回学んだ気がする。
無駄なんかじゃなかったはずだ。たぶん、きっと。そういうことにしておこう。
「わー! ハート型の花火!」
どっかの誰かの声につられて上を見ると、確かにピンクのハートがたくさん浮かんでいる。煽ってんのか? こんちくしょう。
だけどよく見れば、他にもいろんな色形の花火が上がり、暗い夜空を彩っている。
失恋の痛みはあるけれど、人生で初めて人と見る花火。一人で部屋から見るそれよりずっと綺麗なのは夢のときと同じだ。
そう、僕はまだ夢の中にいる。この二ヶ月で、僕は四人も大切な友人を手に入れた。春までの僕だったら考えられない成長だ。
それでいいじゃないか。今、頬を伝うこの涙だって、嬉し涙だ。少しも悲しくなんて……
ポケットでケータイが震えた。誰だろう。僕に連絡をしてくる人なんて限られている。それこそ、ここにいる誰かぐらいしか。
『更新しました』
心臓が止まりそうになった。チラと横を見ると、阿良々木愛が体育座りの体勢で顔を膝にうずめている。こころなしか耳が赤い気がするが、花火の色のせいかもしれないしよくわからない。
あぁ、これから僕は正式にフラれるのか。ため息を吐き、おぼつかない指先でファイルを開く。
そこにはたった一文だけ、このように追加されていた。
***
私は目の前の王子様にキスをした。
***
阿良々木愛がゆっくりと顔を上げる。その目は寝起きのようにウルウルと潤んでいて。
そういえば、お姫様は王子様のキスで目覚めるのが定石だったなと、くだらないことを思った。
「あのー、あれだな。五人で食べるにはちょっと足りなかったな」
潔く自主しよう。大半を食い散らした犯人は、口数が激減した僕だ。
「つーかしょっぱいものばかりじゃないっすか。甘いもんも食いたいっすよ」
「文句言うなら、日下部くん、買ってきて」
「……じゃあ今度は、僕と日下部くんで買い出し行ってきます」
「そうか? 悪いな。じゃあ俺はベビーカステラ一つ」
「私、唐揚げ。できるだけ、辛いやつ」
「知らねぇよ。愛は? なにか食いたいもんある?」
「……」
「あ、阿良々木愛さん?」
「へっ!? な、なんですか?」
「いや、その、阿良々木愛さんもなにか食べる、かな? チョコバナナとか」
「!? ば、バナナはちょっとまだ早いと思いますっ……!!」
「? そ、そう……」
それから追加で買ってきたご飯を五人で食べながらぎこちない会話をしているうちに、ようやく花火大会開催の時間がやってきた。
これからは花火を見ているだけでいい。変な気疲れから解放される。
僕はすっかり後悔していた。浮かれて勘違いして調子に乗って、痛々しいポエムを送り付けた末路がこれだ。
こんな気持ちになるぐらいなら最初から恋なんてしなければ……って、それは違うよな。
短い間だったけれど、恋はとても素敵な夢を僕に見せてくれた。
感情なんてなければ確かに楽かもしれない。でも、苦しさと引き換えにそれ以上のなにかを手に入れられることもある。もちろん、ただ失うだけということも。
そしてその繰り返しが「生きる」ということなんだと、僕は今回学んだ気がする。
無駄なんかじゃなかったはずだ。たぶん、きっと。そういうことにしておこう。
「わー! ハート型の花火!」
どっかの誰かの声につられて上を見ると、確かにピンクのハートがたくさん浮かんでいる。煽ってんのか? こんちくしょう。
だけどよく見れば、他にもいろんな色形の花火が上がり、暗い夜空を彩っている。
失恋の痛みはあるけれど、人生で初めて人と見る花火。一人で部屋から見るそれよりずっと綺麗なのは夢のときと同じだ。
そう、僕はまだ夢の中にいる。この二ヶ月で、僕は四人も大切な友人を手に入れた。春までの僕だったら考えられない成長だ。
それでいいじゃないか。今、頬を伝うこの涙だって、嬉し涙だ。少しも悲しくなんて……
ポケットでケータイが震えた。誰だろう。僕に連絡をしてくる人なんて限られている。それこそ、ここにいる誰かぐらいしか。
『更新しました』
心臓が止まりそうになった。チラと横を見ると、阿良々木愛が体育座りの体勢で顔を膝にうずめている。こころなしか耳が赤い気がするが、花火の色のせいかもしれないしよくわからない。
あぁ、これから僕は正式にフラれるのか。ため息を吐き、おぼつかない指先でファイルを開く。
そこにはたった一文だけ、このように追加されていた。
***
私は目の前の王子様にキスをした。
***
阿良々木愛がゆっくりと顔を上げる。その目は寝起きのようにウルウルと潤んでいて。
そういえば、お姫様は王子様のキスで目覚めるのが定石だったなと、くだらないことを思った。
