17年前の明日、僕は空の青さを知る。



 そしてきたる七月初週の金曜日。

「……」

 今、僕は部室で死体になっている。
 日下部を除く部員の恋愛小説品評会。ワクワクで臨んだその場で、僕の長編は宣言どおりケッチョンケチョンにされた。

「俺は上手いと思ったぜ?」

 品評会前、一番僕の作品を批評したがっていた日下部が今や唯一の味方だ。

「いや、上手いは上手いんだよ。けど……」

 歯切れ悪く、袴田先輩。

「日下部くんのほうが、まだマシ」

 もののついでに日下部も狙撃しつつ、橘。

「アレはないだら、愛知先輩」

 ゾクッとするほど冷たい視線で、阿良々木愛。
 ドMなら大歓喜しているところだろうが、あいにく僕は違ったらしい。ひたすらに傷付き、自らの愚行を恥じていた。


 本作のあらすじはこうである。
 平凡な男子高校生である主人公は、失恋して傷心中のいわゆる「負けヒロイン」たちを絆して統率し、学内ハーレムを築いていた。
 そんなある日、負けヒロインのうち一人が膵臓の病気で倒れ、余命を宣告されてしまう。
 流れで彼女の「死ぬ前にやりたいこと」(金閣寺を焼くこと)に付き合わされる形で実際に金閣寺に火を放つという犯罪に及んでしまった主人公は最後、「神様に見て見ぬふりをしてもらおう」とラジカセをコインロッカーの中に隠す……


 そう。皆と仲良くなりたいがために調子に乗って、どっかの某小説たちの内容をツギハギしたパク……もとい、オマージュ作品を書いてしまったのである。

「皆の好きな小説を覚えて読んでくれたのは嬉しいけど、これはさすがに……」
「ていうか、俺と同じタイミングで完成してたってことは、テスト期間に全部読んだうえで10万字書き上げたんだよな。愛知、お前テスト何点だっけ?」
「498点」
「ほぼ満点じゃん。ダルッ」
「でも、小説は0点。パクリは、ダメ」
「そもそもこれは恋愛小説じゃないだら。規約違反で審査対象外じゃんね」

 死体蹴りが激しい文藝部面々。いよいよ泣きそうになったとき、袴田先輩が僕の肩を叩いた。

「ま、皆と打ち解けたいっていうメッセージは伝わったよ。でもこれは愛知くんの小説じゃない。愛知くん、君自身が書きたい物語はなんだ? 俺たちは本当はそれが知りたかったんだ」
「僕自身が書きたい物語、ですか?」
「あぁ。次はそれを読ませてくれ。以上だ」

 袴田先輩が皆の意見をまとめて締めくくる。
 愛知賢太の小説。どうやらそれが僕に課せられた宿題のようだ。