17年前の明日、僕は空の青さを知る。

 半分まどろみの中でケータイが受信を告げた。眠気はあっというまに吹っ飛び、僕は震える手で阿良々木愛からの返信を確認する。

『ありがとうございます。めちゃくちゃ早いですね(笑)』

 やはりリレー小説についての返信だ。めちゃくちゃ早いですね(笑)って……前のめりすぎと思われただろうか。

『すみません。それで、もう読まれましたか?』
『なんで謝るんですか(笑)はい、読みました。とても詩的で素敵だと思いましたけど……これは愛知先輩の体験談ですか?』

 体験談、というと語弊があるけど。本心ではあるから。

『はい、概ねそうです』
『そうなんですね……しかと受け止めました』

 あぁ。阿良々木愛の言葉がゆっくりと胸に染み込んでゆく。気を遣われているだけかもしれないけれど、ありのままの自分を受け止めてもらえるってこんなに嬉しいんだ。
 そして気付く。袴田先輩のアドバイスがどうだとか言い訳していたけど、本当は最初から、誰かに心の声を聞いてほしかっただけなのかもしれないと。

『ありがとうございます』
『いえいえ。というか、後輩なんで敬語はやめてくださいよ(笑)』

 後輩命令で敬語を禁止された。追い詰められた僕は、少ない手札の中から相応しい返事を探す。

『おう』
『おうってwww愛知先輩、面白いですね』
『そんなことないぜ』
『ちょっwww先輩、ふざけてるだら?』
『ふざけてないぜ』
『もうw普段もそうやって話しんよ。絶対人気出るのに』

 阿良々木愛は文面だと、対面よりおどおどした感じがない。サラッとタメ語に移行してるし。
 だけどどちらの彼女も温かくて、芯の強さを感じて。なので、総合するとやっぱり阿良々木愛だなという感想になる。どういうこっちゃ。

『とにかく、先輩がそうくるなら私もそういうつもりで書くんで、覚悟してくださいね』
『そういうつもり?』
『お疲れ様です! また明日の部活で!』

 おやすみなさいのスタンプとともに唐突に終わったトーク。これはスタンプを返したほうがいいのだろうか?
 なんてことを小一時間考えているうちに、僕もいつのまにか眠りの中に落ちていた。