「確かに日下部くん、今年からよく本を読んでる。愛ちゃんが来るときは、特に」
「そうだな。去年までは部室に来てもケータイばかりいじってたのに、不思議だな」
悪い顔の袴田先輩が加勢すると、日下部の顔がみるみるうちに真っ赤に染まっていく。さすがの僕でも今ので状況はなんとなく理解した。なんと邪な部員だろう。
ただ、渦中の人物だけは相も変わらず話についていけてない様子で、まっすぐな瞳で言った。
「ミッくんの書いた小説、早く読んでみたいな」
そしていよいよ僕のターン。自己紹介はコミュ障の戦場。ゆっくりと深呼吸をし、事前に言葉を選び抜き、意を決して口を開く。
「2―1。愛知賢太です。1月1日生まれ。好きな本は、すみません。あまり小説を読んだことがなくて。なのでジャンルとかも特に」
……終了。袴田先輩の全力拍手と、阿良々木愛の「お正月生まれの人とか初めて見ました!」というフォローが逆に痛い。すみません。
「ま、愛知くんの得意ジャンルはおいおい見つけてもらうとして。とりあえずは阿良々木ちゃんに合わせてテーマは『恋愛』でいこうか」
「? なんの話ですか?」
「今年度第一回目の品評会! を、一か月後に開催します!」
品評会。さっき聞いた話によると、一つのテーマに沿ってそれぞれが作品を執筆して持ち寄り、部内で読み合うというイベント。
え。たった一ヶ月で処女作を? しかも恋愛がテーマ!?
「参加は強制じゃありません。それに今月は実力テストもあると思うから、もちろんそちらを優先で。短くても全然いいし特に順位をつけたりもしないから、気軽に書いておいでよ」
それならまぁと納得した僕の右の視界に、顔面蒼白の阿良々木愛の姿が映る。なにか声をかけるべきかと逡巡する間に、彼女の隣の橘が先に「愛ちゃん、どうかした」と尋ねる。
「いえ、その、急だったので。いきなり書けるのかなぁと」
「大丈夫。初めては、皆下手。それに今回は、仲間が二人」
「二人?」
橘は僕を指差して「一人」と言った後、そのまま指を日下部に向ける。「二人」。
「はぁ!? お、俺は参加しねぇぞ! 恋愛なんてチャラついた……」
「お願いミッくん、一緒に書いて? ミッくんほど上手くは書けないだろうけど、ミッくんもいてくれたら心強いから」
「……チッ。わかったよ」
即陥落。しかし阿良々木愛はなぜ、日下部の気持ちに気付かないのだろう。僕ですらわかるのだから、もはや「あんパンは甘い」並に自明の理だと思うのだけど。
「あぁそれと、」
袴田先輩が思い出したように付け加える。
「今日から阿良々木ちゃんと愛知くん、二人でリレー小説書いてもらえる?」
「そうだな。去年までは部室に来てもケータイばかりいじってたのに、不思議だな」
悪い顔の袴田先輩が加勢すると、日下部の顔がみるみるうちに真っ赤に染まっていく。さすがの僕でも今ので状況はなんとなく理解した。なんと邪な部員だろう。
ただ、渦中の人物だけは相も変わらず話についていけてない様子で、まっすぐな瞳で言った。
「ミッくんの書いた小説、早く読んでみたいな」
そしていよいよ僕のターン。自己紹介はコミュ障の戦場。ゆっくりと深呼吸をし、事前に言葉を選び抜き、意を決して口を開く。
「2―1。愛知賢太です。1月1日生まれ。好きな本は、すみません。あまり小説を読んだことがなくて。なのでジャンルとかも特に」
……終了。袴田先輩の全力拍手と、阿良々木愛の「お正月生まれの人とか初めて見ました!」というフォローが逆に痛い。すみません。
「ま、愛知くんの得意ジャンルはおいおい見つけてもらうとして。とりあえずは阿良々木ちゃんに合わせてテーマは『恋愛』でいこうか」
「? なんの話ですか?」
「今年度第一回目の品評会! を、一か月後に開催します!」
品評会。さっき聞いた話によると、一つのテーマに沿ってそれぞれが作品を執筆して持ち寄り、部内で読み合うというイベント。
え。たった一ヶ月で処女作を? しかも恋愛がテーマ!?
「参加は強制じゃありません。それに今月は実力テストもあると思うから、もちろんそちらを優先で。短くても全然いいし特に順位をつけたりもしないから、気軽に書いておいでよ」
それならまぁと納得した僕の右の視界に、顔面蒼白の阿良々木愛の姿が映る。なにか声をかけるべきかと逡巡する間に、彼女の隣の橘が先に「愛ちゃん、どうかした」と尋ねる。
「いえ、その、急だったので。いきなり書けるのかなぁと」
「大丈夫。初めては、皆下手。それに今回は、仲間が二人」
「二人?」
橘は僕を指差して「一人」と言った後、そのまま指を日下部に向ける。「二人」。
「はぁ!? お、俺は参加しねぇぞ! 恋愛なんてチャラついた……」
「お願いミッくん、一緒に書いて? ミッくんほど上手くは書けないだろうけど、ミッくんもいてくれたら心強いから」
「……チッ。わかったよ」
即陥落。しかし阿良々木愛はなぜ、日下部の気持ちに気付かないのだろう。僕ですらわかるのだから、もはや「あんパンは甘い」並に自明の理だと思うのだけど。
「あぁそれと、」
袴田先輩が思い出したように付け加える。
「今日から阿良々木ちゃんと愛知くん、二人でリレー小説書いてもらえる?」
