銀杏並木の毒舌な隣人たち

「なっ……なんて失礼な鳥なの」

「私を憐れむ暇があるなら、自分の心配をしたらどう? 私は守られているけれど、あんたは外で独りぼっちじゃない。自由なんて、ただの『放り出された寂しさ』の言い換えでしょ?」

 自身の拳に、ぎりりと力だけが入った。

 言い返そうとしたが、言葉が詰まる。小鳥の言う通り、今の自分は「自由」という名の孤独の中に放り出されただけのように感じたからだ。

 言いようのない苛立ちと虚しさを抱えたまま、麻美子は小鳥に視線を向けることができず、その場を離れた。

 小鳥の鋭い言葉が耳の奥で繰り返され、胸がズキズキと痛む。

 いつの間にか西日に染まった住宅街を、子供たちが歓声を上げて足早に麻美子の前を通り過ぎていった。

 その賑やかな足音が遠ざかると、まるで潮が引くように、あたりに妙な静寂が広まった。

 すると今度は、一人の老人とリードに繋がれた、毛並みの薄い老犬が、こちらをじっと見つめていた。

 ピクリと動くこともせず。世界の時間が止まったかのように動かず、ただ麻美子のことを見ている。

 麻美子は老人の白くまん丸な目を見つめた後、(どうせ、用件があるのは貴方のほうなんでしょ?)と心の中で毒づき、視線を下げて、足元の老犬に問いかけた。

「あなたは何。私に何か言いたいことがあるんでしょ」

 老犬は真っ直ぐに麻美子を見つめると、かすれた声で言い放った。

「何もないよ」

「……え?」