【Cafe:iRiS 】〜乙女ゲームのヒロインや攻略対象と仲良くなる世界線はありですか?〜



「へー。そんな面白い子だったんだ?」

 大学の食堂で向かい合い、それぞれ目の前の昼食を食べながら語り合う。四ノ宮(しのみや)海深(うみ)は中学からの親友で、朱莉(あかり)の数少ない理解者でもある。

 彼女自身、朱莉と同じように心と身体の違和感で悩んでいた過去があり、今は自分が好きなように、自分らしく生きることを決めたようだ。

 海深は金髪のショートボブで、瞳は碧色。シックな服装を好む美男子系女子である。朱莉とは好きなものの趣味も正反対だが、昔から気兼ねなく話せる仲で、大学も学科は違うが時間が合えばこうやって近況を報告し合うようにしていた。

「私の恋を応援してくれるんだって」
「朱莉、恋してたんだ」
「そだよ〜。でも片思いなんだ」
「ふーん。いいじゃん、私も気になる子はいるんだけどね。告って引かれるくらいなら、ずっとこのまま傍にいられたらって、思っちゃうんだよな」
「わかる! 私も同じ!」

 どうやら海深も好きな人がいるらしい。どんな子? と訊いてみたかったが、止める。話したくなったら彼女の方から話してくれるだろう。

 それに、いつか友だちとして紹介してくれるかもしれない。好奇心はもちろんあったが、その時まで待とうと心に決める。

「私もね、そう思っちゃったんだ……全然気付いてもらえないし、自分は絶対に恋愛対象にもならないって思い込んじゃってて。でも、諦めないって決めたんだ。いつかふり向いてもらえるように、さりげなくアピールし続けてみる!」
「朱莉の恋が成就するよう、私も願ってるよ」

 ありがと、と朱莉は明るい笑顔で頷いた。目の前のオムライスを口に運びながら、その後も楽しく会話を交わした。今日も夕方からバイトが入っている。一度マンションに帰ってからお店に向かうので、タイミングが合えばましろと次のデート(下見)について話し合いたいと思った。

(私にとっては、誰がなんと言おうとちゃんとデートなんだもん)

 ましろは今日はバイトが休みなので、葵の部屋にいるはずだ。メッセージを確認したが、葵との生活は今のところ特に問題はないらしい。

 授業を聞きながら、朱莉は小さく嘆息。葵との期間限定のルームシェアが終わったら、今度は誰の部屋で共同生活をするつもりなのだろう。

(あの後も何回か提案してみたけど、断固拒否します!って断られちゃったし……)

 ましろは時々、朱莉のことを"ヒロイン"と例えることがある。それは朱莉には嬉しい気持ちしかなく、そんなふうに思ってくれるくらいには、意識してくれているのだろうか。

(ヒロイン……か。私はましろくんの中ではそういう設定? なのかな?)

 ルートやら好感度やら、よくわからないワードが出てくるのは、そういう理由からなのだろう。

(だったら、ましろくんにヒロインとして認めてもらえるように、もっと私らしく頑張ろう!)

 そしていつか、ましろだけのヒロインになれたならいい。そう思ってもらえるように積極的に気持ちを伝え続けよう。まずは友だちから、というのも本人の発言からすでに"それ以上の絆"と認定されているので、あとはましろ次第と言えよう。

 大学が終わりマンションに帰った後、朱莉は丁寧にメイクを直したその足で葵の部屋の扉の前に立っていた。そして、「よし!」と心の中で気合を入れ深呼吸をしていつもの笑顔を作ると、扉の横にあるインターホンを強く押した。


□STAGE:2 朱莉ルート 〜NORMAL END〜□