『結婚してください』
『はい』
――まあゲームの中の話やけどな!
その後速攻で帰った俺と黒川くんは、無事にゲームの中で再婚した。
レンとモモの名前の横にハートマークがついたことを確認し、俺はしばらく床に転がって脱力した。
「それで、俺への詫びがこのパフェってことか」
「竹田への詫びっていうよりは、漢字テストで散々な点取らせた詫びかな」
俺は不本意だけど、と付け加える黒川くんの横腹を俺は肘で軽くつつく。
言い過ぎやで、と嗜める俺を気にせず、竹田くんはパフェを食べ進めていく。
「それで、結局どうなったんだよ」
「別に水野と再婚しただけ」
「それめっちゃ語弊あるからな!?モモとレンがゲーム内で再婚したってだけ!」
「つかモモさんって年上ネカマ子持ちの既婚者じゃなかったんだな」
「竹田くんの中でどんな印象になってたん?!」
むしろ何をどうやったらそう解釈できたん!?
叫ぶ俺に二人は興味なさそうな顔で顔を見合わせる。
「ログイン時間とか」
「子持ちの会話に巻き込まれてたりとか」
「交流とクエストで口調違ったり」
「明らかに衣装の趣味違ってたから」
あれもこれもと指摘される点の多さに、俺は気づいてなかった自分に頭を抱える。
きのこさんとか、モモの中の人のことどう思っとったんやろ。
理由があったとはいえ、ほとんど交流できなかったことが悔やまれる。
「それはともかく、会えてよかったな」
「……おう」
「格好良いとは言ってもらったのか?」
「…………っぶっ!?は、げぼっ、ぐっ、はっ」
「ちょお、黒川くん大丈夫なん!?」
竹田くんの一言に、隣でコーラを飲んでいた黒川くんが盛大にむせる。
それを見て竹田くんは可笑しそうに、にやにやと笑う。
「………………それ言うなよ?」
「いやいやこれは水野には伝えとくべきだろ」
「俺?」
なに、と首を傾げる俺に、黒川くんは全力で首を振る。
竹田くんも見てみるが、こちらもにやにやと笑い続けるだけだ。
「っ、とにかく、詫びはしたからな!俺たちはこれからゲームしに帰るから!」
残っていたコーラを一気飲みし、黒川くんが立ち上がり竹田くんに宣言する。それに竹田くんは手を振って応える。
「俺はのんびり食べて帰るわ」
「じゃあ帰ろう水野。イベント始まるし」
スマホで時間を確認する黒川くんに、俺も頷いて立ち上がる。 じゃあ、と竹田君に言ったところで、竹田くんが俺の顔を見て真剣な顔をする。
「あのさ、水野。そいつ脳内小学生でさ、攻略するって決めたら全力一直線なわけ。そのくせ攻略からもしつこくて、飽きるってことがこいつの辞書にはねーの」
「うん?」
「そんなレン、黒川なわけだけど、そいつ面倒だからって恋愛ゲームってしたことないんだよね」
「へえ?」
「……それで、もし今の黒川が、恋愛ゲーム始めたらどうなると思う?」
竹田くんからの質問に、俺は首をひねりつつも真剣に考えてみる。
黒川くんは格好ええし、その一途さも彼の魅力の一つだ。
「すぐに両思いになって、エンディングって感じかなあ」
俺の答えを聞いて、竹田くんは嫌そうな顔をする。
「あれ、俺の答えだめやった?」
「……いや、時間の問題だと思ってさ」
何故か黒川くんが得意そうな顔をする。
確かに黒川くんなら、攻略するのも時間の問題かもしれない。
「黒川くんは格好良いからなあ」
「はいはい、早く帰らなきゃいけないんだろ」
さっさと帰れ、と追い払う仕草をされる。
竹田くんに改めて別れを告げると、俺達は並んで駅まで歩き出す。
「水野はクエストどこまで進める予定?」
「とりあえずプロローグ見てから様子見やな。そっちは?」
「俺もプロローグ見てから決めるかな。必要ならモモさんと一緒に南達のクエスト手伝わないと」
モモさん、と当たり前に呼ばれたことに一瞬反応が遅れてしまう。
確かに今日操作するのは俺やけど、あくまでモモは姉ちゃんと二人のものだ。
「黒川くん、あんまモモって呼ばんでほしい」
「なんで?」
「一応姉ちゃんのものでもあるし」
「確かに。なら今度から湊って呼ぶわ」
「なんで!?」
「俺が湊のこと名前で呼びたいから」
そんなことを言われ、俺の頬が熱くなる。
それを見て黒川くんがうれしそうに笑う。
そんな二人を店内から見て、俺は詫びパフェをつつく。
黒川から、レンとモモのツーショットが届く。
「エンディング後も、二人は末永く幸せに暮らしました、ってな」
