平凡な俺を、学校一の無気力イケメンが溺愛してきます

桜散った四月の終わり。
深谷日向冬は、後ろから向けられる強烈な視線に、思わず振り向いてしまいそうなのを必死で堪えていた。

じいぃーーっ

(……ええと)

僕、何かした??



◆◆◆

ー話は十分前に遡る。
日向冬は、西浅草高校二年A組の教室に登校したばかりだった。
いつもかなり早くに家を出るため、大体教室には一番乗りで着く。
ところが、今日は先客がいたのだ。
空閑凪。顔面も身長も、その他のスペックにおいても全て最上級なのに、いつも気だるそうに座っている人。
それが、日向冬が斜め後ろの席に座る彼に対して持った印象だった。
彼は、程よく筋肉の着いた大きな身体を縮めるようにしてすうすうと眠っていた。
(どうしようこれ……そっとしといた方がいいよね……)
だが、もうすぐ他のクラスメイト達も登校してくる。
凪に憧れる女子達はみんな、冷たくされても逆にそれがいい、と諦めないので、迷惑そうにしているのを見たことがあったのだ。
寝ている凪を見つけでもした女子達がどう動くか分からない。
ううん、と唸った日向冬は、結局何もしないことに決めた。
(何事も平和が一番、イケメンなんて、俺とは生きてる世界線が違うんだから)