七月下旬の金曜日。夏休みに突入していて、数日ぶりに入江に会う。
待ち合わせの駅前のロータリーに着くと、すでに待ち合わせ場所にいる入江の姿に、トクンと胸が高鳴った。
……え?
は? な、何で??
どうして入江を見たくらいで、動悸みたいに心臓が鳴るんだ……?
暑さのせいで、脳も心臓もどうかしたんだろうか?
大学生風の綺麗な女性二人組が入江に話しかけていて、声をかけるタイミングを失っていると、顔を持ち上げた入江と視線が交わる。入江は女性二人組に会釈して、俺の元に駆け寄ってきた。
その姿ですらホント、無駄にカッコよすぎるんだよな、こいつ。マジで絵映えするイケメンそのものじゃないか。
ついついイラストを描く癖で、手足の長さや服のお洒落さ、ヘアスタイルのアレンジだとかをチェックしてしまう。
「先輩来るのが遅いから、逆ナンされたじゃないですか」
「は? ……べ、別に、俺と出かけずに、さっきの女の子たちと遊べばいいじゃん」
つい膨れっ面で視線を逸らしてしまった。
これではまるで、俺が嫉妬してるみたい。
……え? 俺、今……嫉妬したのか? 女子相手に……?
「天気、晴てよかったですよね」
「あ、……ん、そうだな」
ここ数日、台風の影響で天気が悪かったから、思わず青空を見上げてしまう。
夏の強い陽射しのはずなのに、入江といると、爽快感すら覚えるほどだ。
「テスト、めちゃくちゃ頑張ったんですから、先輩の今日一日は、俺だけのものですからね!」
「おいおい、周りの人が聞いたら、変に誤解されんだろ。それに、お前は頑張らなくても、勉強ができるだろ! 俺を騙しやがって……!」
「体調万全で期末試験に挑みましたよ! 休んだら、例え満点でも二割減になるじゃないですか。そしたら、デートがなくなっちゃうんだから、俺にとっては死活問題ですよ」
な、なんなんだ、こいつは……! 本当に俺と出かけたいだけなのか……?
それにしても、いつになくご機嫌だな。さっきからずっとにこにこしてやがる。
ったく、なぜだかわからないが、気になって目が離せない。
いや、そうじゃない。
今までのことを思い返せば、入江への感情がなんのか、自然と胸に落ちた。
俺らが通う高校は、試験日に欠席すると、後日振替試験が行われ、例え全問正解でも八十点になってしまうという決まりがある。
入江は有言実行し、期末試験で〝八十点以上の教科を五科目以上取る〟という俺との約束をきっちりとクリアした。
いや、正確には、元々入江は頭脳明晰で勉強ができるやつだったのだ。
期末試験が終わって数日が経った、とある日。
生徒会室で入江と同じクラスの、生徒会書記の女子――水野由愛が、『今回も入江君、一番だったね』と同じ二年の会計監査の女子――夏川凜々と会話していた。
〝入江〟なんて苗字が結構珍しい地域というのもあって、俺は水野さんに詳しく教えてもらったのだ。
すると、クラス順位は常に一番で、学年でも三本指に入るのだとか。
まんまと騙された俺は、入江に抗議したが、『約束は約束だ』と言われ、仕方なくこうして入江と出かける羽目になったのだ。
駅の改札をくぐり、ホームで電車を待つ。
隣に立つ入江をチラ見して、気づいてしまった自分の気持ちを整理する。
急に距離を詰められたり、揶揄われたりしても嫌悪感は抱かなかったし、抱き留められたり、耳元に囁かれたりしてドキドキしたのも、こいつを〝男〟として意識したからだ。
それに、あんなにも嫌だった耳のほくろを知られても、今もこうしてこいつと会っているのは、確実に俺の黒歴史が、なんてことない過去の一部だと思わせてくれる……そんな存在だからだ。
俺、……入江が好きなのかもしれない。
いや、もう〝好き〟だと認めざるを得ないだろ。
だって、ホームに吹き抜ける風に乗って香る、こいつの香水の香りに……ときめいてしまっているのだから。
男相手に、しかも後輩相手に、恋愛感情を抱くなんて……。
俺はこの気持ちをどう処理したらいいんだ……?
待ち合わせの駅前のロータリーに着くと、すでに待ち合わせ場所にいる入江の姿に、トクンと胸が高鳴った。
……え?
は? な、何で??
どうして入江を見たくらいで、動悸みたいに心臓が鳴るんだ……?
暑さのせいで、脳も心臓もどうかしたんだろうか?
大学生風の綺麗な女性二人組が入江に話しかけていて、声をかけるタイミングを失っていると、顔を持ち上げた入江と視線が交わる。入江は女性二人組に会釈して、俺の元に駆け寄ってきた。
その姿ですらホント、無駄にカッコよすぎるんだよな、こいつ。マジで絵映えするイケメンそのものじゃないか。
ついついイラストを描く癖で、手足の長さや服のお洒落さ、ヘアスタイルのアレンジだとかをチェックしてしまう。
「先輩来るのが遅いから、逆ナンされたじゃないですか」
「は? ……べ、別に、俺と出かけずに、さっきの女の子たちと遊べばいいじゃん」
つい膨れっ面で視線を逸らしてしまった。
これではまるで、俺が嫉妬してるみたい。
……え? 俺、今……嫉妬したのか? 女子相手に……?
「天気、晴てよかったですよね」
「あ、……ん、そうだな」
ここ数日、台風の影響で天気が悪かったから、思わず青空を見上げてしまう。
夏の強い陽射しのはずなのに、入江といると、爽快感すら覚えるほどだ。
「テスト、めちゃくちゃ頑張ったんですから、先輩の今日一日は、俺だけのものですからね!」
「おいおい、周りの人が聞いたら、変に誤解されんだろ。それに、お前は頑張らなくても、勉強ができるだろ! 俺を騙しやがって……!」
「体調万全で期末試験に挑みましたよ! 休んだら、例え満点でも二割減になるじゃないですか。そしたら、デートがなくなっちゃうんだから、俺にとっては死活問題ですよ」
な、なんなんだ、こいつは……! 本当に俺と出かけたいだけなのか……?
それにしても、いつになくご機嫌だな。さっきからずっとにこにこしてやがる。
ったく、なぜだかわからないが、気になって目が離せない。
いや、そうじゃない。
今までのことを思い返せば、入江への感情がなんのか、自然と胸に落ちた。
俺らが通う高校は、試験日に欠席すると、後日振替試験が行われ、例え全問正解でも八十点になってしまうという決まりがある。
入江は有言実行し、期末試験で〝八十点以上の教科を五科目以上取る〟という俺との約束をきっちりとクリアした。
いや、正確には、元々入江は頭脳明晰で勉強ができるやつだったのだ。
期末試験が終わって数日が経った、とある日。
生徒会室で入江と同じクラスの、生徒会書記の女子――水野由愛が、『今回も入江君、一番だったね』と同じ二年の会計監査の女子――夏川凜々と会話していた。
〝入江〟なんて苗字が結構珍しい地域というのもあって、俺は水野さんに詳しく教えてもらったのだ。
すると、クラス順位は常に一番で、学年でも三本指に入るのだとか。
まんまと騙された俺は、入江に抗議したが、『約束は約束だ』と言われ、仕方なくこうして入江と出かける羽目になったのだ。
駅の改札をくぐり、ホームで電車を待つ。
隣に立つ入江をチラ見して、気づいてしまった自分の気持ちを整理する。
急に距離を詰められたり、揶揄われたりしても嫌悪感は抱かなかったし、抱き留められたり、耳元に囁かれたりしてドキドキしたのも、こいつを〝男〟として意識したからだ。
それに、あんなにも嫌だった耳のほくろを知られても、今もこうしてこいつと会っているのは、確実に俺の黒歴史が、なんてことない過去の一部だと思わせてくれる……そんな存在だからだ。
俺、……入江が好きなのかもしれない。
いや、もう〝好き〟だと認めざるを得ないだろ。
だって、ホームに吹き抜ける風に乗って香る、こいつの香水の香りに……ときめいてしまっているのだから。
男相手に、しかも後輩相手に、恋愛感情を抱くなんて……。
俺はこの気持ちをどう処理したらいいんだ……?
