腹黒な後輩に秘密を握られました~姫化するしか、なさそうです

 葉桜が目に眩しい四月中旬のとある日の朝。
 都立(せい)(らん)高校の正門の前にいる俺、(ゆき)(むら)()(もん)、高校三年。
 身長は百七十八センチ、やせ型。少し長めのサラふわ黒髪。

 昔から何かと頼られることが多くて、気づけば生徒会長になっていた。
 挨拶をすれば返してくれる人が増え、困っている生徒を助ければ「王子」なんて呼ばれるようになったけれど――別に特別なことをしているつもりはない。
 ただ、自分が理想だと思う〝生徒会長の姿〟を続けているだけだ。

「おはようございます」
「王子~、おはよう」

 登校してくる生徒に率先して挨拶をする。
 今どき高校でオアシス運動なんて珍しいかもしれないが、これは〝俺がやりたいからやっているだけ〟の習慣だ。
 早朝から付き合ってくれている副会長の()(たけ)(こう)()には、正直ちょっと申し訳ないと思っている。

「佐竹、今日もありがとうな」
「はいはい。俺はもう、こういうものだと思ってるからいいけどさ。次の生徒会長が可哀想な気がしなくもないな」
「ははっ、確かに」

 このオアシス運動が、青蘭高校の伝統というわけではない。
 俺が生徒会長になって取り組み出したことで、最初は佐竹も嫌々参加していた。
 それが、いつからだったか……『内申書によさそうだな』と言い出して、今では青蘭高校の名物みたいな感じになりつつある。

 今年は高校最後の年。
 生徒会の任期も残りわずかになってきて、少しずつ、受験の気配が近づいてきた。



 放課後。帰宅した俺は、私服に着替えた。
 
「ペンタブは持ったし、手帳も持ったし、スマホも財布も持ったよな……?」

 鞄の中の持ち物をチェックし終えると、キャップを目深に被り、念のためにとマスクをする。
 壁掛け時計で時間を確認して、カフェで打ち合わせのため、俺は自宅を後にした。