花が咲くならそれでいい

新学期男女グループでよく笑い声が聞こえてくるものが一つあった。


俺はその笑い声に釣られるようにその笑い声の先を目で辿ると、いかにも作った笑顔です。みたいな顔なやつがいた。

 俺はそいつの顔を見るや否やどうにもこうにも背中がうずうずとこそばゆい感じがして止まなかった。




どうして作り笑顔なんだ。

どうして皆あれで笑えてるんだ。







あいつは今どんな気持ちなんだ。





そう思えば思うほど作り笑顔をしている橘葵とやつがどうしてあそこまでするのか、とイライラとするものが募った、、











自然体でいれないならやめれば良いのに。



葵を追っているのが気付かれたのか友達に言われた。



「玲〜あっこのグループ入りたくなっちゃった?笑」



「俺らを置いていくのか玲は…泣」



「違げーわ、なんか笑うの下手なやついるな〜って思ってただけ」



「どいつだ?わかんなくね」



「それなそれな、てかそんな人の顔って見るものなのか?知らねーけどさ」



「女の子か野郎かは知らないけど女の子なら変な距離の詰め方すんなよ笑笑」



「しねーわ」



候補に男子も入っていたことにこいつらの性格の良さが表れるなと少し感心した。



「でも珍しいよね玲が人に興味示してるの」



「確かに、恋なんじゃね?」



「ばか言うな」



「ほんとか〜?」とからかってくるがこんなにも人に関心を持ったのは始めてだった。





気になる。恋。




そう言われると人というものは気にするものでその日から葵から目が離せなかった。


これが恋では無いという理由を探すかのように。




図書室で足りない身長を補うように背伸びをする葵。


小説を読みながら口角が少し上がっている葵。


体育の着替えで少し色っぽく脱ぐ葵。多分この場合俺の下心8割。


くしゃみをする時両手で抑える葵。


あんなふうに見えて耳朶にピアス穴が一つもない耳を持つ葵。


 

「美味しそう…」



「なになになに玲どうした?!」



声が漏れてたらしい。



「最近誰かをずっと目で追ってるくない?」



しかもバレてる、こういう時だけ勘が鋭いのやめて欲しい。



「しかも美味しそうって、、食べようと…」



「玲のえっち〜」と声を揃えて言う二人。あながち間違った事を言っていないから少しイラッとくる。



「別に食べようとなんてしてねーよ、勘違いすんな!」



嘘だ。大嘘だ。食べれるものなら今すぐにでも食べたいのに。

 


「玲くんの健闘を祈って〜〜フレーフレーれ!い!く!ん!」



「まじで黙れ」



「まあやっぱり友達だし応援って大事じゃん?進展あれば待ってる」



冷やかしてる様に見えるが優しさが見える。やっぱり持つべきものは友達なんだよなぁ…


「ありがとな…」




と言ったのは良いもののこのままでは葵にいい影響を与えないと思った。













だから俺はあの日けじめを付けるように葵に言った。





「お前、マジおもんねーよ」




物凄く傷ついた顔をしていた。が負けず嫌いなのだろうか、物怖じせず言い換えしてきた。

かと思えば弱々パンチを食らわせてきた





くっそ可愛いじゃねーかよ…は、?



その時自覚してしまった、これは恋と言うことに。



俺は動揺したのを取り繕う様に



「何してんの?」


「威嚇可愛いっすね(笑)」



と言うと。



「俺はぁ!話すのも上手だし!笑わすのも上手なんだよ!!」



そう返ってきた。なんとも葵らしい、、声裏返ってるし可愛い。


俺はそんな愛でいっぱいな気持ちだった。










✿





愛がいっぱいな気持ちだったのは本当に俺だけのようだった。

次の日葵を見つけてふと顔を見るとマスクを付けていた。しかも目元だけ笑ってるようななんというか張り付けたような顔。


自分のせいだというのは言わずもがなだった。話しかけようと思ったが俺にはそんな立場など与えられていない。申し訳なさが募るばっかりだった



顔が見れない…多分というかもう俺は亡くなったほうが良さそうなぐらいの重罪を、、


そんな張り裂けそうな気持ちを抱えたまま教室に入ることになった。











✿






「なんか玲今日元気無くね?」




「振られたとか…?分からんが…」




「どっちにしろやばくね…?」



コソコソと話しているのが聞こえてくる。ごめんな表情にも雰囲気にも出てて。でも振られて無いから、!でもそれ以前に嫌われたと思う。



まじ終わった、、どうしたらいい?


終わった終わった言っているが目で追うのはタダなので今日も目で追っていると葵が手に持っている本がふと目に入った。


公園寝泊が著者っぽい小説を読んでいた。野宿じゃんという感想よりもどこかで見たことがあるという既視感が先にやってきた、

まてよ、どこだ、、


俺は頭の中の記憶を漁るかのように脳の引き出しを全て開けた。




あ、あれだ



思い出した、席替えをしたとき空席なににも関わらず本が入っていた。その著者が公園寝泊だった気がする
あれほどユニークな名前を見ると忘れていても同じ感想がやってくるもので俺は自分のロッカーのもとに行き中を漁った。


置いてて良かったぁ…


奇跡と呼んでもいいだろう、、あの時見つけた本を俺は取っておいたのだ。


これほど嬉しいことはもうこの人生で無いだろうと思うぐらい嬉しかった。

なぜかって?










葵と話す機会を手に入れたからだ。







なるべく怖がらせない様に、、待ってなんて言おう。




その時にはもう声をかけていて早く言葉を発しないといけない空気だった俺は



「昼休み屋上来て」



としか言えなかった。情報量の少なさにも程があるだろ、とキレかけたが何にしろ昼に会えるのが嬉しかった。








✿








俺はるんるんとした気分で本を持ち屋上に上がった。




少し意地悪してやろうと思い、俺はドアの後ろに座っていた。

2分ぐらい経った頃だろうかドアを押す力が加わったのが分かった。



流石に退くか




俺が退くとドアがゆっくりと開いていき重かったのか険しい顔をしながら葵が顔を出した。


力いっぱい込めた葵は少し汗をかいていてなんとも色っぽく見えた。


これを野放しにする奴はどこにいるんだ…!!!


出来るものなら俺の近くにずっといて欲しいのに…というかなんなら俺が守る。



気色の悪い事を考えていると葵が口を開いた



ボロカス言うために呼んだのかだって、あー、やっぱり気にしてたか……


案の定葵には深く傷が付いたのだと思う。謝っても許されるかは分からない…



でも…!!!俺はこんな事を言うために呼んだのではない。



この本を渡して少しでも好感度を上げるために呼んだのだ!



早速俺は本を葵に見せた。








すると今までに見たことのないとびきりの笑顔で喜んでいた。



マスクの下が見たい…



魔が差した俺は考えるよりも先に行動しており
引っ張られたのかのように迷いなく進む俺の手は葵のマスクを下げていた。




太陽にも比にならないぐらい眩しくて今にも消えそうなその光に直視を憚った俺は再び葵の顔を見た。



すると次はいつ変わったのか分からないスピードで表情が変わっていた。
少し紅くなった恥じらいを孕んだ頬にぎろっと可愛く睨む葵。ぷいっとそっぽを向かれた。
多分こういうのは相手からすると本気だったりするのだろう。






あいにく俺には誘ってる様にしか見えなかった






衝動論、いや精神論?取り敢えず本能に支配された俺は気づけば葵の耳を食べていた。






「あ、いや、違う、ん?違うくはないか、」






やらかした、と思ったが待ってくれ。



こんな顔を見て待てる男がいるはずがない。待てたらそいつはノーベル賞でも何でも授与されるべきだと俺は思う。
でも俺はノーベル賞なんていらない橘葵が欲しい。


恋と変が似ているのはそう言うことだろう。今の俺は最高に変人だ。



耳を抑えながら俺に訴えかけたと思えば光の速度で屋上から消えていった。




キュートアグレッションがどうのこうの言って誤魔化したが流石に無理があったか…



屋上に取り残された俺はそんなバカげた事を考えることしか出来なかった。



耳って今までに感じたことのない食感で沼かも…



反省するどころかいつ食べようかと狙っていた。






最高に最低だ。










✿










その日以来葵は俺から距離を取っている。物凄く。


俺が悪いか悪くないかで言われたらそりゃ声を大に出来るぐらい俺が悪いよ?
でもさあんな露骨に避けられたら傷つくって。好きだって。






いや知らんて。



もう一人の自分にツッコまれた様な気分だった。




俺は葵に合法的に近づく方法を考えた。










家庭科…!家庭科だ!!!!!



流石に天才にも程があるだろと自画自賛をしていたら。




「いや何ニヤニヤしてんの?流石に…」



「ねー…」



顔を合わせて頷く朝野と八雲。


紹介が遅れてそうだから一応
朝野世那(あさのせな)と八雲泊(やぐもとまり)八雲は地方から引っ越して来たらしく珍しい名前なんだとか?世那は世那だ。二人は中学からの友達でノリがとても合う。



「まじで玲が良くないこと考えてるって!!!!」




「八雲警察の出動ですかー?」



「とまりんやっちゃって〜」




「まじ大丈夫だから、、ねぇ、こっち来んな笑笑」



「はい!はい!玲の脳内を支配してる子当てます!!!」


「お、いいね」


「この話やめ!もう俺行くから」



「どこにだよ」と言われたがほんとにその通りだ、逃げるように廊下に出たが行く場所が無さすぎた。



暇だ、と思いながら窓をふと見るとサウナでも行ったのかというぐらい汗を流している葵を発見した。

服で拭うため腹筋が見える。

なんというか見てはいけないものを見ているような?


でも目を離さないのは本能ってやつ?



いいもの見たわ〜と思い教室に帰り反芻するかのように机に突っ伏した。


明日も良いことがありますよーに




そう願う事しか出来ないがその願う行為さえも恋になると全てが楽しい。